• HOME
  • 腎臓病と脂質異常症
腎臓病と脂質異常症

当クリニックでは、腎臓病と生活習慣病に対する専門的な診療を行っております。今回は、患者さんからのご相談も多い「脂質異常症」と「腎臓病」の関係について、やさしく解説いたします。

脂質異常症と腎臓病は深く関係しています

脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)のバランスが崩れた状態を指します。

具体的には、

  • LDL(悪玉)コレステロールが高い
  • HDL(善玉)コレステロールが低い
  • 中性脂肪が高い

このような状態が続くと、動脈硬化が進み、心臓や脳だけでなく、実は腎臓にも大きなダメージを与えることがわかっています。
特に慢性腎臓病(CKD)の患者さんでは、脂質代謝異常が高頻度に見られ、病気の進行リスクとも関連していると報告されています。

腎臓はなぜダメージを受けるのか?

私たちの腎臓は、血液をろ過して体の中の不要なものを尿として排出する「ろ過装置」の役割を果たしています。その中でも特に重要なのが「糸球体(しきゅうたい)」という部分です。糸球体は非常に細かい血管のかたまりで、ここに障害が起きると、腎臓全体の機能が低下してしまいます。

腎臓がダメージを受ける主な原因のひとつが、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)です。

〇高LDLコレステロールや酸化LDLによるダメージ

血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が多すぎると、血管の内側(血管内皮)を傷つけてしまいます。さらに、酸化されたLDL(酸化LDL)は、より強く血管を傷め、炎症や細胞の老化を引き起こすことがわかっています。

このような血管の傷みが糸球体にも影響し、次のような変化を引き起こします。

  • 糸球体の血管が壊れ、糸球体硬化(ろ過装置が硬くなって機能しなくなる)
  • 腎臓の周囲の組織にも炎症が起きて、間質線維化(腎臓の組織が固くなってしまう)

この結果、腎臓の機能が徐々に低下していくのです。

〇動脈硬化による血流の悪化

さらに、脂質異常症が進むと、動脈硬化(血管が厚く硬くなる病気)を引き起こします。
動脈硬化が腎臓の血管にも起こると、血液がうまく流れなくなり、腎臓の細胞が酸素や栄養を十分に受け取れなくなってしまいます。

これによって、

  • 細胞が弱り、死んでしまう(壊死)
  • 修復が間に合わずにさらに組織が固くなる(線維化)

といった悪循環が起こり、腎臓全体の働きがどんどん悪くなってしまいます。

 腎臓を守るための「脂質コントロール」

脂質のバランスを整えることは、腎機能を守るうえでも非常に重要です。慢性腎臓病患者さんでは、脂質異常が心血管病や腎不全へのリスクを高めることが知られており、積極的な管理が推奨されています。

 推奨される脂質目標値(CKD患者・ガイドラインに準拠)

指標目標値
LDLコレステロール120mg/dL未満
100mg/dL未満(糖尿病合併時)
HDLコレステロール40mg/dL以上
中性脂肪(TG)150mg/dL未満
non-HDLコレステロール150mg/dL未満

生活習慣の見直しがカギです

腎臓と脂質の健康を守るには、日々の生活習慣の見直しがとても重要です。

1. 食事療法

  • 飽和脂肪酸(肉の脂、バター)やトランス脂肪酸(マーガリン、加工食品)の摂取制限
  • 魚(特に青魚)やナッツ類、オリーブオイルなど不飽和脂肪酸の積極的摂取
  • 食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、全粒穀物)の摂取
  • 過剰な糖質やアルコール摂取の制限

2. 運動療法

  • 有酸素運動(例:ウォーキング)を週に150分以上
  • 筋トレを週2回程度取り入れる
  • 体重管理による内臓脂肪の減少は脂質バランスの改善に効果的です

3. 薬物療法

  • LDLが高い場合はスタチンが第一選択
  • 中性脂肪が高い場合はフィブラート系やEPA製剤なども検討
  • 腎機能に応じた薬剤選択と投与量調整が必要です

当院の強み:腎臓内科専門医による包括的アプローチ

当院では、脂質異常症を単なる「コレステロールの病気」と捉えず、「腎臓と心血管の健康」を守るための全身管理として位置づけています。

  • 腎臓病と脂質異常症を総合的に診る専門医が対応
  • 血圧、糖尿病、脂質異常を同時に管理し、相乗的な改善を目指す
  • 食事や運動、生活改善をサポートする保健指導も充実
  • 検査数値だけでなく、「生活の質」や「予防」に重点を置いた診療

このような方はご相談ください

腎臓のダメージは、目に見えないうちに静かに進行します。
だからこそ、LDLコレステロールを適正にコントロールし、動脈硬化を防ぐことが腎臓を守る第一歩になります。
また、食事や運動、場合によっては薬による治療も大切です。

  • 健診で「コレステロールが高い」と言われた
  • LDLや中性脂肪の値が高くて心配
  • 腎臓の機能が悪くなってきたといわれた
  • 脂質の薬を飲んでいるが、数値がなかなか改善しない
  • 食事や生活をどう変えたらいいかわからない

脂質異常症と腎臓病は「沈黙の疾患」であり、知らないうちに進行していくことがあります。ぜひ一度、専門医の診察を受けてみませんか?
腎臓の健康を守るために、生活習慣の改善と脂質異常症の治療を意識しましょう。