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脂質異常症と慢性腎臓病(CKD)|LDL目標値と腎機能に応じた治療

健康診断で「LDLコレステロールが高い」「中性脂肪が多い」と指摘されても、痛みや不調がないため、そのままにされている方は少なくありません。しかし脂質異常症で問題になるのは、症状が出ないまま静かに進む血管の変化です。

慢性腎臓病(CKD)がある方では、この意味合いがさらに大きくなります。CKDそのものが動脈硬化性疾患の高リスク病態であり、脂質の管理目標も一段階厳しく設定されるためです。本記事では、脂質異常症とCKDがどう関係するのか、健診結果をどう読めばよいのか、腎機能に配慮した脂質管理とはどのようなものかを、総合内科専門医・腎臓専門医の立場から整理します。

この記事の要点

  • CKDは動脈硬化性疾患の高リスク病態であり、一次予防では原則としてLDL-C 120mg/dL未満が目標です。糖尿病との合併や心血管疾患の既往などによって、100mg/dL未満または70mg/dL未満を目指す場合があります
  • CKDでは脂質異常のあらわれ方に特徴があり、蛋白尿を伴う病態ではLDLが、GFRが低下した病態では中性脂肪が問題になりやすくなります
  • CKDのある方が脂質を管理する最大の目的は、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを防ぐことです
  • 脂質を下げることで腎機能低下そのものを抑えられるかについては、まだ明確でない部分があります
  • 腎機能が低下していても、薬の種類と量を調整すれば脂質管理は行えます

脂質異常症とは — 健診で何を見ているのか

脂質異常症とは、血液中の脂質(あぶら分)のバランスが崩れた状態を指します。健診では主にLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド/TG)が測定されています。

まず前提として、コレステロールは体に必要な成分です。細胞膜の材料になり、ホルモンや胆汁酸のもとにもなります。「コレステロール=すべて悪いもの」ではありません。問題になるのはバランスです。

  • LDLコレステロール(いわゆる悪玉):体のすみずみへコレステロールを運ぶ役割。多すぎると血管壁に蓄積します
  • HDLコレステロール(いわゆる善玉):余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す役割。少なすぎると回収が追いつきません
  • 中性脂肪(TG):エネルギー源となり、余剰分は脂肪組織に蓄えられます。食事内容・飲酒・運動量の影響を受けやすい項目です

日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」における脂質異常症の診断基準は次のとおりです。

項目診断基準分類
LDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール120〜139mg/dL境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール40mg/dL未満低HDLコレステロール血症
中性脂肪(TG)空腹時150mg/dL以上
随時175mg/dL以上
高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール170mg/dL以上高non-HDLコレステロール血症
non-HDLコレステロール150〜169mg/dL境界域高non-HDLコレステロール血症
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」より作成

なお、この基準は「診断のための値」であり、治療を始めるかどうかの基準ではありません。実際にどう対応するかは、年齢・血圧・血糖・喫煙歴、そして腎臓の状態を含めた全体のリスクで判断します。この点は第4章・第5章で詳しく説明します。

腎臓と血管の関係

腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出する臓器です。この働きを担っているのが「糸球体(しきゅうたい)」という、毛細血管が毛糸玉のように密集した構造です。片方の腎臓に約100万個あるとされています。

腎臓には大きな予備能があります。そのため障害が始まっても初期には自覚症状が現れにくく、血液検査の値もすぐには変化しません。健診で指摘されて初めて気づく方が多いのはこのためです。

一方で腎臓は、糸球体や細動脈といった血管を中心とした構造を持つため、高血圧・糖尿病・動脈硬化などの影響を長期にわたって受け続けます。「症状が出にくいこと」と「影響を受けないこと」は別だという点が重要です。

脂質異常症が腎臓に与える影響 — 分かっていることと、まだ明確でないこと

血液中のLDLコレステロールが多い状態が続くと、血管の内側(血管内皮)に入り込んだLDLが酸化ストレスを受けて酸化LDLに変化し、炎症を引き起こします。腎臓においてもこうした脂質による組織障害が起こりうると考えられており、「脂質誘導性腎障害(lipid nephrotoxicity)」という概念が提唱されています。

ただし、この概念は実験研究や観察研究に依拠する部分が大きく、臨床的にどの程度の影響があるかは確定していません。糸球体の毛細血管に、心臓の血管にできるような粥状(じゅくじょう)動脈硬化のプラークがそのまま形成されるわけでもありません。患者さんに正確にお伝えするために、確立していることと、まだ明確でないことを分けて整理します。

確立していること

  • 高LDLコレステロール血症が動脈硬化性心血管疾患(心筋梗塞・脳梗塞)を引き起こすこと
  • CKDのある方は、心血管疾患の発症リスクが高いこと
  • 保存期CKDにおいて、スタチン(またはスタチンとエゼチミブの併用)が心血管イベントを減らすこと

まだ明確でないこと

  • 脂質異常症が、CKDをどの程度直接進行させるのか
  • 脂質を下げることで、腎機能の低下そのものを抑えられるのか
    (SHARP試験の腎アウトカム解析では、末期腎不全への進行やeGFR低下速度の有意な改善は示されませんでした)

つまり、CKDのある方が脂質を管理する最大の目的は、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを防ぐことにあります。「コレステロールを下げれば腎臓が守られる」という単純な話ではありませんが、それでも脂質管理が重要であることに変わりはありません。CKDは心血管疾患の強い危険因子であり、その方々こそイベント予防の恩恵が大きいためです。

CKDでみられる脂質異常のパターン

CKDのある方の脂質異常には特徴があり、病態によってあらわれ方が異なります。「CKDだからコレステロールが高くなる」と一括りにはできません。

  • 蛋白尿を伴う病態:LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールが高くなりやすくなります。特にネフローゼ症候群のように蛋白尿が多い場合に顕著です
  • GFRが低下した病態:中性脂肪やレムナントリポ蛋白が増加し、HDLコレステロールが低下しやすくなります

ご自身がどちらのパターンに当てはまるかによって、注目すべき項目も対策も変わります。だからこそ、脂質の数値は腎臓の検査結果とセットで見る必要があります。

慢性腎臓病と脂質異常症、心血管疾患の関係 CKDでは蛋白尿を伴う病態でLDLが上昇しやすく、GFR低下ではTGやレムナントが上昇しHDLが低下しやすいこと、脂質異常症とCKDのいずれもが動脈硬化性心血管疾患のリスクを高めること、脂質低下療法は心血管イベントの抑制が確立している一方で腎機能低下を抑える効果は明確でないことを示した図 慢性腎臓病(CKD) 蛋白尿を伴う病態 LDL-C・non-HDL-C が 高くなりやすい GFRが低下した病態 TG・レムナントが上昇 HDL-Cが低下しやすい 脂質異常症 動脈硬化性心血管疾患 (心筋梗塞・脳梗塞など)のリスク上昇 脂質低下療法(スタチンなど) CKD自体が独立した危険因子 心血管イベントを抑制(確立) 腎機能低下を抑える効果は明確でない
実線は確立した関係、破線は現時点で明確でない関係を示します。横棒(⊣)は「抑制する」ことを表します

腎臓の血管が動脈硬化によって傷む病態については「腎硬化症」のページで、血圧の影響については「高血圧と慢性腎臓病」のページで詳しく解説しています。

CKDがあるときの脂質管理目標値

ここが、CKDのある方とない方で最も大きく変わる部分です。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞などの動脈硬化性疾患をまだ起こしていない方(一次予防)を低リスク・中リスク・高リスクに分類します。このとき、慢性腎臓病(CKD)は糖尿病・末梢動脈疾患(PAD)と並んで「高リスク」に分類されます。

リスク区分LDL-Cnon-HDL-C
一次予防・低リスク160mg/dL未満190mg/dL未満
一次予防・中リスク140mg/dL未満170mg/dL未満
一次予防・高リスク
(CKD・糖尿病・PADのいずれか)
120mg/dL未満150mg/dL未満
一次予防・高リスクのうち、糖尿病に細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)またはPAD合併、あるいは喫煙あり100mg/dL未満130mg/dL未満
二次予防
(冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞の既往)
100mg/dL未満130mg/dL未満
二次予防のうち、急性冠症候群・家族性高コレステロール血症・糖尿病・冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併70mg/dL未満100mg/dL未満
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」リスク区分別脂質管理目標値より作成。中性脂肪は空腹時150mg/dL未満(随時175mg/dL未満)、HDL-Cは40mg/dL以上が目標です。なお80歳以上の一次予防では、フレイル・低栄養・併存疾患・余命などを含めた個別の判断となります。

CKDと糖尿病を合併している場合

CKD単独の一次予防では、原則としてLDL-C 120mg/dL未満・non-HDL-C 150mg/dL未満が目標です。ただし糖尿病を合併している場合には、LDL-C 100mg/dL未満・non-HDL-C 130mg/dL未満を考慮します。糖尿病とCKDという高リスク病態が重なるためです。なお糖尿病性腎症は、糖尿病の細小血管症にも該当します。

また、すでに冠動脈疾患や、アテローム硬化が関係する脳梗塞を起こされた方では、二次予防としてさらに低い目標が設定されます。「CKDだから一律120」ではない、という点をご理解いただければと思います。

ここが誤解されやすい点

「LDLが135だから正常範囲」と判断されることがあります。しかし診断基準(140mg/dL以上で高LDLコレステロール血症)と、管理目標値は別のものです。CKDがある場合は高リスク区分となり、目標は120mg/dL未満(糖尿病を合併していれば100mg/dL未満)です。ご自身の腎機能を知らないまま脂質の数値だけを見ていると、この差に気づけません。

健診結果の見方と受診の目安

健診結果を受け取ったとき、多くの方がまずLDLコレステロールの数字を見ます。しかし大切なのは「ある数字を超えたらすぐ治療」という単純な読み方ではありません。

たとえば「LDL 150で他に問題のない方」と「LDL 130だが腎機能が低下している方」では、考え方が変わります。前者は生活習慣の見直しから始めることが多い一方、後者は高リスク区分に該当するため、より積極的な管理を検討します。

CKDはどのように診断されるのか

CKDは、次の①または②のいずれかが3か月以上続く場合に診断されます。

  1. eGFR 60mL/分/1.73m²未満
  2. 腎障害を示す所見(蛋白尿・アルブミン尿、持続する血尿、画像検査の異常、病理所見など)

健診の尿蛋白が±または陽性だった場合、それだけでCKDと確定するわけではありません。尿蛋白/クレアチニン比や、必要に応じて尿アルブミン/クレアチニン比などで、あらためて確認します。また血清クレアチニンは、eGFRを算出するためのもとになる値であり、それ自体が独立した診断基準ではありません。

これらの結果からCKDと診断された場合、一次予防では原則として高リスク区分で評価することになります。

受診をおすすめする目安

  • 脂質の異常に加えて、eGFRの低下や尿蛋白を指摘された
  • 脂質の値が以前より明らかに悪化している
  • 高血圧や糖尿病を合併している
  • 中性脂肪の高値が繰り返し指摘される(前日の食事の影響とは限りません)
  • 脂質の薬を飲んでいるが、数値が目標に届かない
  • 治療が必要かどうかを含めて、一度整理したい

生活習慣による改善

脂質異常症の対策は、生活習慣の見直しが基本です。CKDを合併している場合、腎臓に配慮した食事と脂質管理の方向性は多くが重なります。

食事

  • 飽和脂肪酸を控える:肉の脂身、バター・生クリームなどの乳脂肪、洋菓子類。LDLを上げる重要な食事要因です
  • 不飽和脂肪酸を活用する:青魚(EPA・DHA)、オリーブオイル、ナッツ類
  • 食物繊維を増やす:野菜、海藻、きのこ、全粒穀物
  • 糖質・アルコールを控える:中性脂肪が高い方では特に効果が出やすい部分です
  • 減塩:CKDのある方は食塩6g/日未満が基本です(CKD診療ガイドライン2023/CKD診療ガイド2024、高血圧管理・治療ガイドライン2025)

ただし減塩は、厳しくすればよいというものではありません。高齢の方、食事量が少なく低栄養のリスクがある方、塩類喪失性腎症のある方、大量に発汗する状況や脱水・低血圧を起こしやすい方では、個別に調整します。詳しくは「減塩のコツと実践法」でも解説しています。

なお、ナッツ・海藻・全粒穀物・果物などはカリウムを多く含みます。腎機能の低下が進んでいる方や血清カリウムが高めの方では、摂取量の調整が必要になることがありますので、ご相談ください。また一部の加工食品には、保存料や品質改良のためのリン酸塩が添加されており、リンの摂取量が多くなることがあります。原材料表示を確認する習慣があると役立ちます。

運動

ウォーキングなど、息が軽く弾む程度の有酸素運動を週150分程度行うと、中性脂肪の低下やHDLコレステロールの上昇が期待できます。あわせて週2回程度の筋力トレーニングを取り入れると、内臓脂肪の減少を通じて脂質バランスの改善につながります。

CKDのある方でも、運動は原則として制限されません。ただし運動の強度と量は、心血管の状態と身体的な耐容能に合わせて設定することが前提となります。心臓の病気を合併している方、腎機能の低下が進んでいる方、しばらく運動習慣のなかった方は、始める前にご相談ください。

薬物療法 — 腎機能に配慮した選択

「薬は一度始めたらやめられないのでは」「腎臓が悪いと薬は飲めないのでは」というご心配をよく伺います。実際には、腎機能に応じて薬の種類と量を調整することで、多くの方が安全に脂質管理を続けられます。

薬剤主な役割CKDでの考え方
スタチンLDLコレステロールを下げる保存期CKDにおける脂質治療の中心となる薬剤です。透析を開始したあとに新たに導入する利益は確立していません
エゼチミブ小腸でのコレステロール吸収を抑えるスタチン単独で目標に届かない場合の併用に適しています
フィブラート系中性脂肪を下げる薬剤ごとに腎排泄性・禁忌・減量基準が異なります。腎排泄性のものは腎不全では使用できません
ペマフィブラート中性脂肪を下げる腎排泄性フィブラートとは性質が異なり、腎機能が低下した方でも慎重に使用できる場合があります
EPA製剤中性脂肪を下げる腎機能による用量調整は原則不要ですが、出血傾向に注意します
日本動脈硬化学会および日本腎臓学会のガイドライン、各薬剤の電子添文(PMDA)をもとに作成。実際の薬剤選択と用量は、腎機能・併用薬・合併症により個別に判断します。

腎機能が低下している方では、スタチンによる筋肉の副作用(筋痛や、まれに横紋筋融解症)のリスクがやや上がります。特にスタチンとフィブラート系を併用する場合は注意が必要です。血液検査でCK(クレアチンキナーゼ)などを確認することがありますが、これは全員に定期的に行うものではなく、症状の有無、使用している薬剤、腎機能に応じて判断します。強い筋肉痛、著しい脱力感、赤褐色の尿などがみられた場合は、服用を中止し、速やかに処方医へご連絡いただくか医療機関を受診してください。軽い筋肉痛やだるさの場合も、早めにご相談ください。

CKD治療では、脂質管理とは別に腎保護治療も重要です

CKDの治療では、脂質管理と並行して腎保護作用のある薬剤を検討します。ただし、これらはどなたにでも使える薬ではなく、それぞれ適応となる条件があります。

原因疾患、糖尿病の有無、尿蛋白・アルブミン尿の程度、eGFR、血清カリウム値などに応じて、SGLT2阻害薬、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)、フィネレノンなどを検討します。たとえばフィネレノンは、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病が対象であり、血清カリウム値やeGFRによる使用上の制限があります。

脂質低下薬は主に動脈硬化性心血管イベントの予防を目的とし、SGLT2阻害薬、ACE阻害薬・ARB、フィネレノンなどは、適応となる患者さんで腎機能低下や尿蛋白の抑制を目的に用います。それぞれの役割を分けたうえで、総合的に治療を組み立てます。

よくある質問

Q1. LDLコレステロールが高いと、腎臓にも悪いのですか?

高LDLコレステロール血症が動脈硬化性心血管疾患(心筋梗塞・脳梗塞)を引き起こすことは確立しています。一方、脂質異常症がCKDを直接進行させる程度や、脂質を下げることで腎機能の低下を抑えられるかについては、まだ明確でない部分があります。CKDのある方が脂質を管理する最大の目的は、心血管イベントを防ぐことです。またCKDは高リスク区分に分類されるため、同じLDL値でもより厳格な管理が推奨されます。

Q2. 腎機能が悪くても、脂質の薬は飲めますか?

多くの方は、腎機能に応じた調整を行うことで安全に使用できます。保存期CKDではスタチン、あるいはスタチンとエゼチミブの併用が中心となります。一方フィブラート系は薬剤ごとに腎排泄性や禁忌の基準が異なり、腎排泄性のものは腎不全では使用できません。自己判断で中止せず、必ず主治医とご相談ください。

Q3. 食事や運動だけで改善できますか?

軽度の脂質異常症では、生活習慣の改善だけで目標に到達する方もいらっしゃいます。ただしCKDを合併している場合は目標値がより低く設定されるため、生活改善だけでは届かないことも少なくありません。その場合は薬物療法との併用を検討します。

Q4. 薬は一生飲み続けなければなりませんか?

薬によって数値が正常化している場合、中止すると再び上昇することが多く、長期の継続が必要になることは少なくありません。「正常になったからもう不要」とは限らない点にご注意ください。一方で、生活習慣の改善によって数値が安定した場合には、減量や中止を検討できることもあります。CKDのある方では、腎機能や尿蛋白の推移もあわせて見ながら慎重に判断します。

Q5. 数値が正常に戻ったら、通院は不要ですか?

一時的に改善しても、再び悪化することはあります。またCKDのある方では、脂質だけでなくeGFRと尿蛋白の推移を追うことに意味があります。年に数回の確認を続けていただくことをおすすめします。

Q6. 健診で毎年同じことを言われていますが、大丈夫でしょうか?

数値の変化が少なくても、年齢とともに動脈硬化のリスクは積み上がります。特に腎機能は加齢によっても緩やかに低下するため、5年前と同じ脂質の値でも意味合いが変わっていることがあります。「今の自分にとってこの数値はどうなのか」を一度整理する機会をお持ちください。

当院での診療

当院では、脂質異常症を「コレステロールの数値の問題」としてではなく、動脈硬化性心血管疾患を予防しながら、腎機能や尿蛋白も含めて管理する全身管理として位置づけています。

診察では、脂質プロファイル(LDL・HDL・中性脂肪・non-HDL)に加えて、腎機能(eGFR)、尿蛋白・尿アルブミン、血圧、血糖、体重の変化を総合的に確認します。そのうえでリスク区分を判定し、生活習慣の見直しから薬物療法まで、状態に応じた方針をご提案します。

  • 総合内科専門医・腎臓専門医が、脂質と腎臓の双方を見ながら方針を調整します
  • 血圧・血糖・脂質・腎保護を切り分けず、一つの治療計画として組み立てます
  • 腎機能に応じた薬剤選択と用量調整を行います
  • 食事・運動については、無理なく続けられる形を一緒に探します

健診で脂質異常症を指摘された方へ

「まだ症状はないけれど、このままで大丈夫だろうか」
「薬が必要かどうかだけでも知りたい」
そのような段階でのご相談も歓迎しています。まずは現在の状態を整理するところから始めてみませんか。

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関連ページ

参考にした主な資料

  • 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」/「脂質異常症診療のQ&A」
  • 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」/「CKD診療ガイド2024」
  • KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease
  • Baigent C, et al. The effects of lowering LDL cholesterol with simvastatin plus ezetimibe in patients with chronic kidney disease (Study of Heart and Renal Protection): a randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2011;377:2181–2192. doi:10.1016/S0140-6736(11)60739-3
  • Haynes R, et al. Effects of lowering LDL cholesterol on progression of kidney disease. J Am Soc Nephrol. 2014;25:1825–1833. doi:10.1681/ASN.2013090965
  • Moorhead JF, et al. Lipid nephrotoxicity in chronic progressive glomerular and tubulo-interstitial disease. Lancet. 1982;2:1309–1311. doi:10.1016/S0140-6736(82)91513-6
  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
  • 各薬剤の電子添文(医薬品医療機器総合機構/PMDA)

医療免責

本記事は、脂質異常症および慢性腎臓病に関する一般的な医療情報の提供を目的としています。個々の診断や治療方針は、年齢・既往歴・合併症・検査結果などによって異なり、本記事の内容が特定の効果や結果を保証するものではありません。具体的な治療や管理については、必ず医療機関で医師にご相談ください。