• HOME
  • おいしく減塩! 1日6g未満で血圧と腎臓を守る実践ガイド
おいしく減塩! 1日6g未満で血圧と腎臓を守る実践ガイド

日本人の平均塩分摂取量と現状

「塩分を控えましょう」と健診で言われたけれど、どこまで減らせば良いのか、何をどう工夫すればいいのか分からない――そんな声を多く耳にします。

尾張旭市・瀬戸市で高血圧や腎臓病の診療を行う当院にも、同じような相談が多く寄せられます。

日本人の平均塩分摂取量は1日約10gとされ、高血圧や腎臓病、心臓病の原因の一つです。日本高血圧学会(JSH2024)では、1日6g未満の摂取を目標に掲げていますが、日常の食事では思いのほか難しいもの。

本記事では、減塩を「我慢」ではなく「習慣」として続けるための実践ポイントを、医師の立場から分かりやすく解説します。

原因とメカニズム ― なぜ塩分をとりすぎると体に悪いのか

塩分は、体の水分バランスや神経・筋肉の働きに欠かせない成分ですが、摂りすぎると血圧上昇や腎臓への負担を招きます。

体内のナトリウムが増えると、血液中の浸透圧を保つために水分を引き込む作用が働き、血液量が増えて血圧が上がるのです。これが「食塩感受性高血圧」と呼ばれる状態で、特に日本人や高齢者、腎機能が低下している方に多く見られます(JSH2024)。

腎臓は、余分な塩分を尿として排出する重要な臓器ですが、塩分の多い食事が続くと、腎臓の細い血管に負担がかかり、動脈硬化が進行して血流が悪くなることがあります。その結果、腎臓のろ過を担う「糸球体」の働きが徐々に低下し、老廃物や水分をうまく排出できなくなっていくのです。

KDIGO2021(国際腎臓ガイドライン)では、慢性腎臓病(CKD)の進行抑制のために、ナトリウム2.0g未満/日(食塩換算で約5g未満)を推奨しています。また、日本高血圧学会(JSH2024)でも6g未満/日を目標に掲げており、両者とも「控えめな塩分摂取」が血圧と腎臓を守る鍵としています。

さらに、塩分摂取が多いと、薬による血圧コントロールが難しくなり、降圧薬や利尿薬の効果を弱めることもあります。つまり、塩分を減らすことは「血圧を下げる」だけでなく、「腎臓を守り、動脈硬化を防ぐ」ためにも欠かせない取り組みなのです。また、それは心臓や脳の血管を守ることにもつながります。

毎日の食卓での小さな工夫が、将来の心臓・腎臓の健康を大きく左右します。

塩分のとりすぎが招く健康リスク ― 高血圧から心臓・脳・腎臓まで、全身に広がる影響

「少しぐらいなら大丈夫」と思って塩分を多くとり続けていると、高血圧・心臓病・脳卒中・腎臓病など、命に関わる病気へとつながることがあります。

まず、塩分過多によって血圧が上昇すると、血管の内側(内皮細胞)が傷つき、動脈硬化が進行します。

長い年月をかけて血管が硬く狭くなることで、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患のリスクが高まります。

特に脳は細い血管が多く、血圧変動の影響を受けやすいため、塩分摂取が多い食習慣は脳出血や脳梗塞の発症率を上げることが報告されています。

一方、腎臓では塩分過多による高血圧が続くと、腎臓の血管が徐々に傷つき、慢性腎臓病(CKD)が進行していきます。

初期には自覚症状が少なくても、次第に「むくみ」「だるさ」「夜間の尿回数増加」などが現れ、放置すると透析が必要な末期腎不全に至ることもあります。

さらに、血圧が高いほど腎機能(eGFR)の低下が速く進むことも分かっており、血圧と塩分の管理はCKD進行抑制の鍵です。

厚生労働省の調査でも、「高血圧」と「塩分摂取量」は腎機能低下の主要因として挙げられています。

また、塩分過多は血圧や腎臓だけでなく、胃や骨の健康にも影響する可能性があると示されています。

つまり、「味の濃さ」は単なる好みの問題ではなく、全身の健康寿命を左右する要因なのです。

塩分を控えることは、血圧・腎臓・血管を同時に守る最も基本的で確実な予防法。

日々の食事を見直すことが、将来の健康を守る第一歩となります。

おいしく続ける減塩 ― 今日からできる第一歩

塩分を減らすことは大切と分かっていても、「薄味では物足りない」「外食が多くて難しい」という声は多く聞かれます。
しかし、いくつかの工夫で“おいしく続ける減塩”は十分可能です。

塩分を減らすのは健康の第一歩。
高血圧や腎臓病を防ぐために、今日からできる「おいしく続ける減塩のコツ」を医師が紹介します。

🌿 1. 味付けを「足す」より「引き立てる」

塩の代わりに、レモン汁・酢・ゆず・しょうが・にんにく・ハーブなどの香味や酸味を活かすと、塩分が少なくても満足感が得られます。
出汁(だし)をしっかり取る、昆布やかつお節のうま味を使うのも効果的です。
また、「かける」より「つける」「後がけ」にすることで、使う量を自然に減らせます。

🍱 2. 外食・加工食品に注意する

外食や弁当、ラーメン、漬物、ハム・ソーセージ、インスタント食品などは1食で5〜7gの塩分を含むことがあります。
スープは全部飲まずに残す、ソースやドレッシングは半分にするなど、小さな工夫でも大きな違いが生まれます。
コンビニやスーパーでは、「減塩」「うす味」と表示のある商品を選ぶのもおすすめです。

🍚 3. 家庭でできる簡単な工夫

  • しょうゆは減塩タイプを使用し、食卓では「小皿」で管理
  • 味噌汁は「具だくさん」にして、汁の量を減らす
  • 「漬物」は毎食ではなく、1日1回・少量にする
  • 塩分量の目安を知る(例:小さじ1杯=約6g)

家庭内で使う塩分量を“見える化”することも継続のカギです。
アプリや塩分計を活用して、「1日6g未満」を意識すると習慣化しやすくなります。

🩺 4. 医師・管理栄養士との連携

腎臓病や高血圧がある方では、体調や検査値に応じて個別の減塩目標を立てることが重要です。
医師や管理栄養士に相談しながら、「無理なく・確実に」取り組むことが、長続きの秘訣です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 減塩すると食事が味気なくなりませんか?

A. 「味付けを薄くする」よりも、「うま味や香りを増やす」ことがポイントです。

レモンや酢、しょうが、ハーブ、出汁(だし)などを活かすと、自然な風味で満足感が得られます。慣れるまで2〜3週間かかりますが、舌は徐々に薄味に順応します。

Q2. 外食やお惣菜をよく利用しますが、どうすればいいですか?

A. スープやソースは残す、ドレッシングは半分にする、など「減らす工夫」が効果的です。

また、「和食=健康」と思われがちですが、味噌汁や漬物に塩分が多く含まれます。メニュー選びも意識しましょう。

Q3. 減塩は高血圧でない人にも必要ですか?

A. はい。血圧が正常でも、塩分を多くとる生活を続けると将来的に高血圧や腎機能低下のリスクが高まります。

健康なうちから減塩を心がけることで、病気の予防につながります。

Q4. ミネラル塩や岩塩は体に良いですか?

A. これらも基本は「塩」であり、ナトリウム量は変わりません。

種類に関わらず、“量を減らす”ことが最も大切です。

まとめ・受診案内

塩分を控えることは、高血圧や腎臓病の治療・予防の基本です。
「1日6g未満」を意識し、出汁や香味、食材の工夫で“おいしく減塩”を続けましょう。
当院でも、塩分摂取を見直すことで血圧や腎機能が安定する方を多く経験しています。
無理なく続けるためには、医師・管理栄養士と一緒に取り組むことが大切です。
尾張旭市・瀬戸市で減塩や血圧管理にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
日々の食事を少しずつ見直すことが、未来の健康を守る第一歩になります。

免責事項
本記事は、一般的な健康情報および学会ガイドライン(JSH2024、KDIGO2021等)に基づき作成したものであり、特定の治療法や食事法を強制・推奨するものではありません。
個々の病状や合併症により最適な対応は異なりますので、実際の治療・食事管理については必ず医師・管理栄養士など専門職にご相談ください。
当院は、読者が本記事の情報をもとに行った行動により生じた損害等について一切の責任を負いかねます。