脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態で、放置すると肝硬変や肝臓がんのリスクを高める可能性があります。
脂肪肝とは
肝臓は、体内で最も大きな臓器であり、栄養素の代謝や解毒、エネルギーの貯蔵、胆汁の生成など、多岐にわたる重要な役割を担っています。
この肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を「脂肪肝」といいます。
肝臓は、本来、体内のエネルギー源として中性脂肪を蓄えます。しかし、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーが中性脂肪として肝臓に蓄積されてしまいます。これが脂肪肝の状態です。脂肪肝は、大きく分けて「アルコール性脂肪肝(alcoholic fatty liver:AFLD)」と「非アルコール性脂肪肝(non alcoholic fatty liver disease:NAFLD)」の2つに分類されます。
- アルコール性脂肪肝:過度なアルコール摂取(1日60g以上)が原因で起こる脂肪肝です。毎日多量にアルコールを摂取することで、肝臓での脂肪の分解が追いつかなくなり、脂肪が蓄積されます。
- 非アルコール性脂肪肝(NAFLD): アルコールをほとんど飲まない、または全く飲まない人に起こる脂肪肝です。肥満、2型糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病が原因となることが多いです。近年、食生活の欧米化や運動不足に伴い、増加傾向にあります。
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、放置すると、肝臓の細胞が炎症を起こし破壊される「脂肪肝炎」、肝臓が硬くなる「肝硬変」、そして「肝臓がん」へと進行する可能性もあるため、早期の発見と適切な治療が重要です。
脂肪肝の原因
脂肪肝は、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。主な原因は以下の通りです。
- 過度なアルコール摂取: アルコールは肝臓で分解されますが、過剰に摂取すると肝臓への負担が大きくなり、脂肪肝を引き起こします。
- 肥満: 摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーが脂肪として体内に蓄積され、脂肪肝の原因となります。特に内臓脂肪が多い場合は、脂肪肝のリスクが高まります。
- 糖尿病: 糖尿病は、インスリンの働きや効果が低下することで、血糖値が高くなる病気です。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む働きをするホルモンですが、この働きが低下すると、脂肪酸の合成を過剰に行うことで脂肪として肝臓に蓄積されやすくなります。
- 高脂血症: 血液中のコレステロールや中性脂肪が多い状態です。高脂血症は、動脈硬化のリスクを高めるだけでなく、脂肪肝の原因にもなります。
- 薬剤性: 一部の薬剤の副作用として、脂肪肝が起こることがあります。ステロイド薬や抗がん剤などがその例です。
- その他: 遺伝的な要因、急速な体重減少、栄養不良なども脂肪肝の原因となることがあります。
脂肪肝の症状
- 疲労感: 慢性的な疲労感や倦怠感を感じる。
- 食欲不振: 食欲が低下し、食事量が減る。
- 腹部膨満感: お腹が張ったような感じがする。
- 黄疸: 白目や皮膚が黄色くなる。胆汁の流れが悪くなり、血液中のビリルビンという色素が増加することで起こります。
- むくみ: 足や顔などがむくむ。肝臓の機能が低下することで、血液中のアルブミンというタンパク質が減少し、水分が血管外に漏れ出てしまうことで起こります。
- 疲労感: 慢性的な疲労感や倦怠感を感じる。
これらの症状が現れた場合は、医療機関を受診し、検査を受けるようにしましょう。
脂肪肝の検査
脂肪肝の検査には、様々な方法がありますが、主な検査は以下の通りです。
- 血液検査: 肝機能検査を行い、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値を測定することで、肝臓の炎症の程度を調べます。これらの数値が高い場合は、肝臓に炎症が起こっている可能性があります。また、血小板の低下がみられる場合は、肝臓の線維化が進行している可能性があります。
- 腹部超音波検査: 超音波を用いて肝臓の状態を画像で確認します。脂肪肝の場合は、肝臓が白く映ります。簡便で痛みもなく、広く行われている検査です。
- CT検査: X線を用いて肝臓の断層画像を撮影し、脂肪肝の程度や脂肪肝以外にも肝障害を引き起こす病気がないかを調べます。
- 肝生検: 肝臓の一部を採取し、顕微鏡で観察することで、脂肪肝の程度や炎症の有無、線維化の程度などを詳しく調べます。最も確実な診断方法ですが、侵襲的な検査であるため、他の検査で診断がつかない場合に行われます。
脂肪肝の治療
脂肪肝の治療は、原因や病状に合わせて行われます。
- アルコール性脂肪肝: アルコールの摂取を制限することが最も重要です。禁酒することで、脂肪肝は改善する可能性があります。アルコール依存症の場合は、専門医療機関への受診も検討しましょう。
- 非アルコール性脂肪肝(NAFLD): 生活習慣の改善が中心となります。食事療法、運動療法などによる体重減少は病態を改善させます。
食事療法:
摂取カロリーを減らし、バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、糖質や脂質の摂取を控え、タンパク質、ビタミン、ミネラルを十分に摂取することが重要です。目安となる栄養素摂取比率は、タンパク質(魚、大豆、脂質の少ない肉)15~20%、脂質(青魚や植物性油脂)20~25%、糖質50~60%とするのが一般的です。
食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取するようにしましょう。食物繊維は、食後の血糖値の上昇を抑え、脂肪の吸収を抑制する効果があります。野菜、果物、海藻、きのこなどを積極的に食べましょう。
1日3食規則正しく食べましょう。朝食を抜くと、昼食や夕食で食べ過ぎてしまい、脂肪肝のリスクを高める可能性があります。
運動療法:
適度な運動を継続することで、体重を減らし、内臓脂肪を減らしましょう。1日30分程度の有酸素運動を目標に、ウォーキングやジョギング、水泳などを行いましょう。
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが有効です。筋力トレーニングは、基礎代謝を上げ、脂肪を燃焼しやすい体を作る効果があります。
脂肪肝は、放置すると肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性もあるため、早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。
脂肪肝の生活チェックリスト
以下のチェックリストで、ご自身の生活習慣を見直してみましょう。
- 毎日、お酒を飲んでいますか?
- 甘いものが好きで、よく食べますか?
- 揚げ物や脂っこいものが好きですか?
- 野菜や果物をあまり食べませんか?
- 運動不足ですか?
- ストレスをため込みやすいですか?
- 睡眠不足ですか?
- 肥満気味ですか?
- 糖尿病、高脂血症、高血圧などの病気がありますか?
チェック項目が多い方は、脂肪肝のリスクが高い可能性があります。生活習慣を見直し、改善していくようにしましょう。
脂肪肝のセルフケア
脂肪肝の予防・改善には、日常生活におけるセルフケアが重要です。
- 食事: バランスの取れた食事を心がけ、特に野菜、果物、海藻、きのこなどを積極的に摂取しましょう。
- 運動: 毎日30分程度の有酸素運動を目標に、ウォーキングやジョギング、水泳などを行いましょう。運動は、ストレス解消にも効果的です。
- 休養: 十分な睡眠をとり、ストレスをためないようにしましょう。
- 禁煙: 喫煙は、脂肪肝だけでなく、様々な病気のリスクを高めます。禁煙しましょう。
- 定期的な健康診断: 定期的に健康診断を受け、肝機能検査などを行いましょう。
尾張旭市にお住まいの方で、脂肪肝が気になる、あるいは既に脂肪肝と診断された方は、お気軽に当院までご相談ください。