健診で数値が高めと言われたときに気をつけたいこと
健康診断で「血圧や体重、検査値が少し高め」と言われて、どうすればよいか迷ったことはありませんか。
多くの方が「自覚症状もないし、まだ大丈夫」と感じがちですが、実はその小さな変化こそが生活習慣病のサインです。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病(CKD)は、どれも静かに進行する病気です。放っておくと、血管や腎臓にダメージが蓄積し、ある日突然の脳卒中や心臓病を招くこともあります。
しかし、早い段階で「血圧・体重・検査値の変化」に気づけば、生活習慣の見直しや治療によって進行を防ぐことができます。
毎日のセルフチェック――血圧を測る、体重を記録する、健診結果を見返す――は、自分の体を守るための最も確実な方法です。
当院では、「腎臓×生活習慣病」を診療の柱とし、患者さんが自分の健康を“見える化”できるようサポートしています。
今日の小さな一歩が、未来の健康を守る第一歩です。
血圧・体重・検査値の変化と生活習慣病・CKDの関係
血圧・体重・検査値(血糖・脂質・腎機能など)は、日々の生活習慣を映す“健康のバロメーター”です。これらは互いに影響し合い、バランスを崩すと生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)のサインになります。
🩸 血圧 ― 動脈硬化と腎臓のバロメーター
塩分の摂りすぎ、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが重なると血圧が上がり、血管が傷ついて動脈硬化が進みます。この状態が続くと、心臓や腎臓に負担がかかり、「高血圧⇔腎機能低下」の悪循環を生みます。
特に腎臓は血圧を調節する臓器でもあり、CKDの原因・結果の両面に関わります(JSH2024・KDIGO2021)。
⚖️ 体重 ― 肥満と腎臓の負担
体重の増加は脂肪組織からの炎症物質を増やし、インスリン抵抗性を高めます。その結果、糖尿病や脂質異常症が起こりやすくなり、腎臓にも過剰な負荷をかけます。
一方で、急な体重減少は筋肉量の低下や栄養不足を意味する場合もあり、健康リスクにつながります。
💉 検査値 ― 内臓の変化を知るサイン
血糖(HbA1c)、LDLコレステロール、eGFR、尿たんぱくなどの検査値は、体内の異変を早期に示します。どれか1つでも異常が続く場合、体の中ではすでに代謝異常や腎障害が始まっている可能性があります。
「少し高い」「要再検査」と言われた段階で生活を見直すことが、CKDや動脈硬化を防ぐ第一歩です。
放置によるリスクと関連疾患 ― 早めの気づきが腎臓と血管を守る
血圧や体重、検査値のわずかな異常でも、放置すると数年後には高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病(CKD)などへ進行することがあります。これらは自覚症状がほとんどなく、“静かに進行する病気”です。
🫀 血圧が高い状態を放置すると
血管の内側が傷つき、動脈硬化が進みます。その結果、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)を引き起こすリスクが高まります。
腎臓が悪くなるとさらに血圧が上がるという悪循環が生じるため、早期の管理が重要です。
🍬 血糖・脂質の異常が続くと
高血糖や脂質異常は血管を老化させ、糖尿病性腎症や脂質異常症による動脈硬化を進めます。
肥満・高血圧・高血糖が重なるメタボリックシンドロームでは、心臓・脳・腎臓の病気が同時に進行することもあります。
💡 小さな変化を見逃さない
「血圧が少し高い」「HbA1cが6.0を超えた」「eGFRが60を下回った」――そんな小さな変化こそが体からの警告サインです。
毎日のセルフチェックで変化を“見える化”し、早めに生活を整えることが、病気を防ぐ第一歩です。
血圧・体重・検査値を「見える化」するセルフチェックのコツ
日々のセルフチェックは、特別な機器や知識がなくても始められます。大切なのは「続けること」と「自分の変化に気づくこと」。ここでは、家庭でできる具体的な記録方法と、生活習慣の改善ポイントを紹介します。
🩸 血圧の測り方と記録のポイント(JSH2024準拠)
血圧は、1回だけでなく「朝・晩の2回」を継続して測ることが大切です。家庭血圧は診察室よりも正確に、体の状態を反映します(JSH2024)。
測定の基本ルール:
- 朝:起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前に座位で測定
- 夜:就寝前、入浴・飲酒の後は30分以上空けて測定
- 1回につき2回測り、平均値を記録する
📘 記録例:
| 日付 | 朝の血圧(mmHg) | 夜の血圧(mmHg) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 10/9 | 132/78 | 126/74 | 良好、少し寒い朝 |
| 10/10 | 140/84 | 134/80 | 仕事でストレス多め |
血圧の数値は日々変動します。1回の数値に一喜一憂せず、“傾向を見る”ことがポイントです。高めの日が続く場合は、早めに医師へ相談しましょう。
⚖️ 体重・体脂肪のセルフチェック
体重は「毎日、同じ時間・同じ条件」で測ることが大切です。最も推奨されるのは「朝起きてトイレの後、食事前に測る」タイミング。夜との変化を見る場合は、朝・夜の2回記録も有効です。
おすすめの習慣:
- 1kg以上の増減が数日続くときは、食事や水分、運動量の変化を確認する
- グラフ化アプリやノートを使って「体重の流れ」を見える化する
- BMI(体格指数)や筋肉量も目安にし、単なる「体重減少」を目的にしない
📈 体重の安定は、血圧・血糖・脂質の安定にもつながります。特に腎臓病や高血圧の方は、急な体重増加(むくみ・塩分過多)に注意が必要です。
💉 検査値をチェックする習慣をつくる
健診や採血の結果を「見たまま」にせず、前回との比較をすることが大切です。
確認すべき主要項目と目安:
| 検査項目 | 目安値(一般成人) | 要注意ライン |
|---|---|---|
| 血圧 | <135/85(家庭血圧) | ≥135/85 |
| HbA1c | <5.6% | ≥6.0%で糖尿病疑い |
| LDLコレステロール | <120 mg/dL | ≥140 mg/dL |
| eGFR | ≥60 mL/min/1.73㎡ | <60で腎機能低下 |
| 尿たんぱく | (−) | +で再検査必要 |
検査値の推移をメモするだけでも、「悪化傾向の早期発見」が可能になります。
※血圧の目安は一般成人を対象としています。糖尿病・腎臓病・心血管疾患のある方は、より厳格な管理(家庭血圧 <125/75 など)が推奨されます(JSH2024)。
🥗 生活習慣の整え方 ― 「少しずつ、長く続ける」
- 減塩(1日6g未満):味付けは「一品しっかり・他は控えめ」に。
- 野菜・たんぱく質をバランスよく:食物繊維と魚中心の食事が血圧・脂質を安定させます。
- 運動習慣(週150分以上):ウォーキングや体操で血流改善。
- 睡眠・ストレスケア:睡眠不足や緊張は血圧上昇の原因に。
- 定期受診と相談:自己判断ではなく、医師と一緒に記録を確認する習慣を。
これらを継続することで、「測る → 知る → 変える」という健康管理のサイクルが確立します。セルフチェックは、単なる記録ではなく未来の健康を守る“自己診療の第一歩”です。
💬 よくある質問(FAQ)― 数値の見方と受診の目安
Q1. 家で測る血圧が少し高いのですが、受診した方がいいですか?
ご自宅での血圧が135/85mmHg以上の日が続く場合は、一度ご相談ください(JSH2024基準)。
1日だけ高いことはよくありますが、何日か連続するようなら要注意です。「朝だけ高い」「寒い日に上がりやすい」なども大切な情報ですので、記録をつけて持ってきていただくと診察がスムーズです。
Q2. 毎日測るのが続きません…。三日坊主になってしまいます。
誰でも最初は続きません。おすすめは、「朝の歯みがきのあと」「寝る前のテレビ前」など、生活の流れに組み込むことです。
ノートやアプリに書いてグラフで見ると、変化が目に見えて励みになります。「完璧に続けよう」と思わず、まずは1週間だけ続けてみましょう。
Q3. 検査値が少し高いと言われました。様子を見ても大丈夫ですか?
「少し高いだけ」と思っていても、同じ数値が続くと要注意です。
HbA1cが6.0%以上、LDLが140mg/dL以上、eGFRが60を下回るようなら、体の中で変化が始まっている可能性があります。早めに生活を見直すことで、薬に頼らず改善できる場合も多いです。迷ったら、一度相談して一緒に確認しましょう。
Q4. 健診結果の見方がわかりません。どこを見ればいいですか?
まずは血圧・血糖・脂質・腎機能(eGFR・尿たんぱく)の欄を見てみましょう。赤字や「要再検査」と書かれている項目がある場合は、そのままにせずご相談ください。
当院では結果票を一緒に見ながら、「今どの段階にあるのか」や「次に何をすれば良いか」をわかりやすく説明しています。
🩺まとめ・受診案内・免責
血圧・体重・検査値のセルフチェックは、生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を防ぐ“最初の一歩”です。毎日の小さな記録が、将来の大きな病気を防ぐ力になります。
血圧は朝晩2回、同じ条件で測る
体重は毎日、同じ時間にチェック
検査値は前回との比較を意識する
これらを続けるだけで、体の変化に早く気づくことができます。
もし「最近数値が高め」「健診結果が気になる」と感じたら、一人で抱え込まず早めに相談してください。生活習慣の見直しや再検査のタイミングを、一緒に考えることが大切です。
📞 ご相談・受診のご案内
健診結果票(血液・尿・血圧など)をご持参ください
現在の内服薬・お薬手帳をご確認ください
家庭血圧や体重記録があれば診察がスムーズです
尾張旭市・瀬戸市で高血圧・糖尿病・脂質異常症・腎臓病に関するご相談は、
きたはらやまクリニック内科・腎臓内科までお気軽にご相談ください。
🩺 免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個々の診断・治療を代替するものではありません。実際の症状や検査値に応じた判断は、必ず医師の診察を受けて行ってください。
📚 参考文献・出典
日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2024(JSH2024)』
日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2023』
KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of CKD
日本動脈硬化学会『脂質異常症診療ガイド2022(JAS2022)』
