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タンパク尿

「たんぱく尿」は腎臓からの大切なサインです〜健康診断で指摘された方へ〜

健康診断で「たんぱく尿があります」と言われて、心配になったことはありませんか?
実は、これは腎臓が何らかの異常を知らせている重要なサインかもしれません。
たんぱく尿は、多くの場合自覚症状がなく、自分では気づきにくいものです。しかし、放置すると慢性腎臓病(CKD)や腎不全など、将来大きな病気に進行することがあります。
ここでは、「たんぱく尿とは何か」「どのような原因があるのか」「どのような検査や治療が必要か」について、わかりやすくご説明します。

たんぱく尿とは?

私たちの腎臓は、血液中の老廃物をこし取って尿として体の外に出す、大切な「ろ過装置」のような働きをしています。通常、体に必要なタンパク質は尿に出ませんが、腎臓のフィルター(糸球体)に異常があると、本来尿に出てはいけないタンパク質が漏れ出すことがあります。これが「たんぱく尿」です。
特に以下のような方は注意が必要です:

• 糖尿病や高血圧がある方
• ご家族に腎臓病の方がいる方
• 健康診断で再検査を勧められた方

たんぱく尿の原因

腎臓の病気が原因の場合

病名説明
慢性腎臓病(CKD)腎機能が健康な人の60%未満、またはたんぱく尿が3か月以上続くと診断されます。日本では約1330万人が該当するとされ、成人の8人に1人がCKDといわれています【日本腎臓学会 2019】。
糖尿病性腎症糖尿病により腎臓の血管が障害され、たんぱく尿が出ます。透析導入の原因の第1位です。
ネフローゼ症候群大量のたんぱく尿が出て、全身がむくんだり、血中タンパクが低下する病気です。
腎硬化症長年の高血圧で腎臓の血管が硬くなり、機能が低下します。
糸球体腎炎・間質性腎炎・血管炎腎臓に炎症が起こり、たんぱく尿の原因になります。

病気以外の一時的な原因

  • 発熱・激しい運動・脱水・ストレスなどによって、一時的にたんぱく尿が出ることがあります。
  • 起立性たんぱく尿:長時間立っていることで出ることがあり、特に若年者に多いですが中高年ではまれです。

放置するとどうなる?

たんぱく尿が出ているということは、腎臓に負担がかかっているサインです。

これをそのままにしておくと、以下のような状態を引き起こす可能性があります:

  • むくみ(余分な水分が排出できない)
  • 貧血(赤血球を作るホルモンが不足)
  • 高血圧(塩分・水分の調整ができなくなる)
  • 骨の異常(カルシウムの代謝異常)
  • 最終的には透析が必要になることも

腎臓は一度悪くなると元の状態に戻すことが難しい臓器です。だからこそ、早期発見・早期対応がとても重要です。

どのような検査をするの?

基本的な検尿(試験紙法)

  • 健康診断でよく使われる方法。尿にたんぱく・糖・血液などが出ていないか確認します。
  • ただし、水分摂取や体調の影響を受けやすいため、1回の結果だけでは判断できません。

正確な検査法

検査名内容・ポイント
早朝尿朝起きてすぐの尿を使うことで、体への影響が少ない状態で調べられます。
尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)採尿1回でたんぱく量を評価できます。0.15g/gCr以上であれば、腎臓の精密検査が必要です【KDIGO 2021】。
24時間尿蛋白定量1日分の尿を集めて、正確にたんぱくの排出量を測定します。主に病院で行われます。

たんぱく尿の治療と生活改善

原因となる病気の治療

• 血圧のコントロール(降圧薬)
特にRAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB)は、たんぱく尿を減らし、腎保護効果があります【KDIGO 2021】。
• 糖尿病の管理
HbA1cを目標範囲(一般的には7.0%未満)に保つことが、腎機能の低下を防ぎます。

生活習慣の見直し

• 塩分制限(1日6g未満が目標)
• たんぱく制限(医師の指導のもとに行います)
• 軽い運動(ウォーキングなど)
• 禁煙・節酒
• 脱水を避けるための適度な水分補給

まとめ 〜健診でたんぱく尿を指摘されたら〜

たんぱく尿は、体が出す大切な「腎臓のSOSサイン」です。
たとえ自覚症状がなくても、放置すると将来の健康に大きな影響を与えることがあります。
健康診断でたんぱく尿を指摘された方は、まずは腎臓専門医の診察を受けることをおすすめします。早く見つけて早く対応することで、腎臓の健康を長く守ることができます。
当院では腎臓内科専門医による診察・検査・治療を行っています。お気軽にご相談ください。