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家庭血圧の正しい測り方

第1章 毎日の測定が高血圧管理のカギ

健診で「血圧が少し高めですね」と言われた経験はありませんか?
高血圧は日本人の3人に1人が抱える病気ですが、多くの方が自覚症状のないまま進行しています。
そのため、放置しているうちに動脈硬化が進み、脳卒中・心臓病・腎臓病などの重い合併症を引き起こすことがあります。

血圧はその時々の状態で変化するため、病院で測る「診察室血圧」だけでは不十分です。
最新の日本高血圧学会ガイドライン(JSH2024)では、家庭血圧(自宅で測る血圧)を重視することが推奨されています。

この記事では、家庭血圧の正しい測り方と、測定結果を治療や生活改善に活かすコツを、医師の立場からわかりやすく解説します。

第2章 家庭血圧を測る意味 ― “本当の血圧”を知るために

血圧は、病院で測ると緊張して高く出る「白衣高血圧(White coat hypertension)」や、逆に家庭では高い「仮面高血圧(Masked hypertension)」など、環境によって変化します。
このため、診察室の1回の測定だけでは本当の状態がわかりません。

家庭で毎日一定の条件で測ることで、次のような利点があります。

  • 安静時の“真の血圧”を知ることができる
  • 日々の変動や季節の影響を把握できる
  • 薬の効果を客観的に確認できる
  • 早朝高血圧や夜間高血圧を発見できる

家庭血圧を測ることは、早期発見・予防の第一歩です。

血圧のタイプ特徴主なリスク
白衣高血圧病院では高いが家庭では正常将来的に本格的な高血圧に進む可能性
仮面高血圧家庭では高いが病院では正常脳・心臓・腎臓の病気リスクが高い

🩺正しい家庭血圧の測り方(JSH2024準拠)

測定の基本 ― 朝と夜の2回が原則

時間帯タイミング目的
起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前早朝高血圧や薬の効果確認
就寝前(入浴・食後30分以上あける)夜間高血圧の有無を確認

📎 各回2回測定して平均値を記録するのが理想的です。
たとえば朝2回・夜2回の計4回/日を1週間続けると、より正確な傾向が見えてきます。

正しい姿勢と環境の整え方

ポイント内容
姿勢背もたれに寄りかかり、足を組まず、腕は心臓の高さで安静に保つ
カフの位置上腕の素肌にしっかり巻く(衣服の上から測らない)
測定環境静かな室内で、会話や動作を避ける
測定前の準備1〜2分間の安静をとり、喫煙・運動・コーヒー直後は避ける

💡 ポイント:測定の条件を「毎日同じ」にすることが最も重要です。
条件が変わると、10〜20mmHg程度の誤差が出ることがあります。

記録方法と活用

血圧は1回の数字ではなく、「1週間の平均」で評価します。
手帳やスマートフォンアプリを利用して、以下のように記録しましょう。

日付朝(mmHg)夜(mmHg)コメント
10/8134 / 82126 / 76良好
10/9139 / 84130 / 78少し高め
10/10132 / 80124 / 74安定

異常な値が出たときは焦らず、「その日の体調・睡眠・食事」などをメモしておくと、医師が原因を分析しやすくなります。

🩺測らない・誤って測ることのリスク

家庭血圧を測らない、または測り方を誤ると、次のようなリスクが生じます。

  • 実際より高く(または低く)測れてしまい、治療方針がずれる
  • 早朝高血圧や仮面高血圧を見逃す
  • 臓器障害(腎臓・心臓・脳)の進行に気づけない

特に腎臓は細い血管の集合体であり、高血圧の影響を強く受けます。
血圧が高い状態が続くと、腎臓が傷つき、老廃物をうまく排出できなくなり、
さらに血圧が上がるという悪循環に陥ります。

『血圧上昇 ↔ 腎機能低下』の連鎖を断ち切るには、早期から家庭血圧を測る習慣をつけることが、合併症予防に最も効果的です。

🩺測定データを“生きた情報”に変える方法

家庭血圧の記録は、医師にとっても貴重な診療情報です。
「いつ・どのくらい上がるのか」「薬の効果がどれほど持続しているか」を判断する基準になります。

医師に伝えるときのポイント

  • 朝と夜の平均値(例:朝135/80、夜125/75)
  • 高かった日とその要因(睡眠不足・外食・飲酒など)
  • 薬の服用時間との関係

これらを共有することで、降圧薬の種類・服薬タイミング・生活指導の精度が格段に上がります。

第3章 継続のコツ ― “無理なく測る習慣づくり”

血圧測定は「短距離走」ではなく「日々の積み重ね」です。
次のような工夫を取り入れてみましょう。

  • 血圧計を寝室やリビングなど“毎日目に入る場所”に置く
  • 「朝の歯磨き」「就寝前のストレッチ」とセットにする
  • 家族と一緒に測って“健康チェックタイム”にする
  • Bluetooth対応の血圧計を使って自動記録する

測ることを“義務”ではなく、“安心を得る時間”に変えていくことが大切です。

🩺季節・年齢・体調による変動にも注意

血圧は一年を通じて変化します。

  • 冬:寒さで血管が収縮し、血圧が上がりやすい
  • 夏:発汗や脱水で血圧が下がることがある
  • 薬の影響:風邪薬・花粉症薬(交感神経刺激薬)で一時的に上がる場合も

高齢者では、立ち上がったときに急に下がる「起立性低血圧」も起こりやすいため、
ふらつきや立ちくらみがある場合は医師に相談しましょう。

第4章 家庭血圧に関するよくある質問(FAQ)

Q1. どんな血圧計を使えばいいですか?

→ 上腕にカフを巻くタイプ(自動電子血圧計)をおすすめします。
手首式や指先式は測定誤差が大きくなりやすいため、日本高血圧学会(JSH2024)認定機種を選ぶと安心です。

Q2. 朝と夜、どの時間に測るのが正しいですか?

→ 基本は「朝」と「夜」の2回です。
朝は 起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前、夜は 就寝前(入浴・食後30分以上あける) に測定します。
この条件で測ると、体調や薬の効果を正確に反映できます。

Q3. 1回だけ測れば十分ですか? 何回測るのが理想ですか?

→ 1回だけでは誤差が出やすいため、1回につき2回測定して平均をとるのが理想です。
さらに、1週間分の平均値をもとに評価すると、より信頼性が高まります。

Q4. 高い値が続いたらすぐ受診したほうがいいですか?

→ 平均して 135/85mmHg以上 が続く場合は、早めに医療機関を受診してください。
急に頭痛や動悸、むくみが出るときは、ためらわずに受診を。
高血圧は自覚症状が乏しいため、「続く高値」が特に重要です。

Q5. 降圧薬を飲んでいる場合や、食後・入浴後でも測ってよいですか?

→ 食後や入浴直後は血圧が一時的に下がるため、30分ほどあけてから測定しましょう。
降圧薬を服用している方は、服薬前の朝と、就寝前の測定が推奨されています。
このタイミングを守ると、薬の効果を正確に確認できます。

Q6. 測ると緊張して血圧が上がります。どうしたらいいですか?

→ 多くの方が感じる自然な反応です。
測定前に1〜2分、深呼吸をしてから測りましょう。
回数を重ねるうちに慣れてきて、安定した値が得られるようになります。
それでも高い場合は、白衣高血圧の可能性もあるため、家庭血圧の記録を医師に見せてください。

第5章 まとめ ― “測る”ことが最大の予防になる

家庭血圧の測定は、高血圧管理の第一歩です。
正しい方法で毎日測ることで、血圧の変動を知り、早期に異常を発見できます。
家庭血圧を継続的に記録することが、合併症を防ぎ、腎臓・心臓・脳を守る最大の予防となります。
ぜひ今日から、家庭血圧測定を“習慣”にしましょう。

家庭血圧に関するご相談は当院へ

当院では、血圧の測定方法や生活改善についても丁寧にサポートいたします。

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🩺参考・出典

  • 日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2024(JSH2024)
  • KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Blood Pressure in CKD
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「家庭血圧の測り方」

🩺免責事項

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を代替するものではありません。
血圧や体調に不安がある場合は、必ず医師にご相談ください。