腎臓内科

腎臓病の治療は早期発見・早期治療が大切です

血尿・蛋白病は「腎臓」が原因かもしれません。

健康診断で「血尿」や「蛋白(たんぱく)尿」が出ていると言われたことはありませんか?
その症状、腎臓が原因かもしれません。
腎臓の病気は経過が非常に長く、自覚症状が出にくいことが多いため、症状(だるさ・むくみ・吐き気・食欲低下・息切れなど)が出たときには、透析を受けざるを得ない状態になっていることがあります。 腎臓は一度機能が低下してしまうと元に戻すことが難しい臓器です。
すなわち、腎臓病の治療は早期発見・早期治療が非常に重要であると言えます。

腎臓とは?

構造

腎臓は背中側、腰のやや上あたりに左右ひとつずつある、そら豆に似た形の臓器です。
腎臓には太い2本の血管がつながっていて、心臓から送られる血液の4分の1が流れ込み、生命維持や健康維持に大切な役割を果たしています。

役割

腎臓の役割は「尿をつくること」だけではありません。
血液や水分、ホルモンなどを通して、体内環境を全体にわたって調整する重要な役割をしています。

  1. 血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄
  2. 体内の水分と電解質(ナトリウムなど)の調節
  3. 血液の酸性・アルカリ性の調節
  4. 血圧を調節するホルモン、赤血球をつくるホルモンの分泌

だるさ・むくみ・吐き気・食欲低下・息切れなどの症状が出た時には腎臓が悪くなっている可能性があります。

慢性腎臓病(CKD)にご注意!

新たな国民病「慢性腎臓病」

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、メタボリックシンドローム、慢性糸球体腎炎などに続いて発症することが多い病気です。
一定の症状が3ヶ月以上持続した場合に診断されます。
CKDになると、心臓病や脳卒中など心血管病発症のリスクが高まると言われています。日本人の成人の8人に1人、約1,330万人がCKD患者である(※)と推定されており、新たな国民病ともいわれています。

(※)一般社団法人 日本腎臓学会
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」より

CKDの定義

  1. 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。
    特に 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
  2. GFR<60 mL/分/1.73 m2

①・②のいずれか、または両方が 3 カ月以上持続する状態

CKDを放置すると心臓病や脳卒中のリスクが高まる上、人工透析が必要になってしまうことがあります。

2018年時点での統計では、透析患者の原因疾患は糖尿病(糖尿病性腎症)が42.3%、高血圧(腎硬化症)が15.6%、慢性糸球体腎炎が15.6%と、CKDの原因疾患が70%以上を占めています。

透析の原因疾患

腎臓が悪くなると、厳しい食事制限、水分制限が必要になります。
さらに透析療法を始めると、時間的拘束(週3回、4~5時間)を避けられないためQOL(Qualitiy of life = 生活の質)の低下に繋がります。

透析の原因疾患は、糖尿病・高血圧・慢性糸球体腎炎だけで全体の70%以上!

糖尿病(糖尿病性腎症)

血液中の血糖値が高くなることで、尿に糖が混じります。通常自覚症状はないことが多いですが、血糖値がかなり高くなると口渇・多飲・多尿といった典型的な症状が出てきます。血糖値が高い状況では糖化というメカニズムにより動脈硬化や微小血管障害が少しずつ進行します。
糖尿病は“糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症”の三大合併症のほか、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞などの大血管障害のリスクの上昇、創傷治癒能力の低下、易感染性など生命活動に影響がある疾患に罹患しやすくなります。食事療法と運動療法が基本になりますが、血糖値のコントロールが不十分であれば経口血糖降下薬やインスリン自己注射なども併用して治療します。

高血圧(腎硬化症)

高血圧症により腎臓の糸球体というざるの目のようなろ過装置が硬くなります。
腎臓は血圧調整に深く関わっており、腎機能が悪化すると血圧が高くなり、さらに腎機能が悪くなるという悪循環に陥ります。食事療法・運動療法を土台とし、適切な薬物選択による血圧コントロールで腎機能の悪化を防ぐ必要があります。糖尿病・脂質異常症・加齢などの要因もあり、高血圧が原因の新規透析導入は近年増加傾向です。

慢性糸球体腎炎

腎臓の糸球体に慢性的な炎症が起こることで、血尿・蛋白尿を持続的に認める疾患です。微熱・倦怠感・むくみなどの症状を認めることもありますが、ほとんどが無症状で健康診断などを契機に発見されることが多いです。
慢性糸球体腎炎の代表的なものとしてIgA腎症があります。日本国内ではIgA腎症の約70%が健康診断を契機に発見されており、また10歳代と40歳代前半の2つのピークがあり、比較的若い方の病気です。
放置していると、腎代替療法(透析療法/腎移植)が必要な末期腎不全になるリスクが上昇します。
健康診断などで血尿・蛋白尿を指摘された際には、早めの受診をおすすめします。

腎機能のチェック

慢性腎臓病(CKD)は他人事ではありません。
まずは腎機能をチェックしましょう。

腎臓の働きを調べる「eGFR」を測定しましょう

慢性腎臓病の診断に使われる推算糸球体濾過量(すいさんしきゅうたいろかりょう:eGFR)を測定することで慢性腎臓病の重症度を調べることができます。
慢性腎臓病は重症度に応じてステージ1(G1)からステージ5(G5)の段階に分けられ、eGFRの値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。

クレアチニン値・年齢・性別の3項目で測定

クレアチニン値は健康診断でも測定することがあるので、健診結果を確認してみましょう。
健康診断によっては血清クレアチニン値を測定していない場合がありますので、その場合は医療機関で調べてもらいましょう。

チェック結果の確認

慢性腎臓病で腎機能が低下すると、その先に待っているのは人工透析です。

週3回、一回4~5時間の透析療法をする生活を一生続けなければなりません。
早めに受診して適切な検査・治療を行うことで末期腎不全への進行を遅らせ、心臓病や脳卒中になるリスクを下げられると考えられます。

慢性腎臓病の治療

治療の目的は進行の抑制です。

CKDの治療の目的は、腎機能の悪化を予防し、末期腎不全(腎臓がほとんど働かない状態)に進行することを阻止または遅らせることにあります。
治療介入が遅れるほど末期腎不全に至るケースが多くなり、透析療法が必要になります。
早期発見・早期治療介入を心がけましょう!

血圧コントロール

血圧管理は年齢や病態にもよりますが一般的には130/80 mmHg未満を目標とします。生活習慣の改善指導が基本になりますが、コントロールが不十分であれば薬物療法を併用します。

血糖コントロール

合併症予防のための目標値はHbA1c7.0%未満です。
生活習慣の改善指導が基本になりますが、コントロールが不十分であれば経口血糖降下薬やインスリン自己注射なども併用します。

食事療法

まずは減塩を心がけましょう。症状によって食塩摂取量の目標は異なります。重症の場合は塩分のほか、たんぱく質の摂取制限も行います。ご希望の場合は提携病院にて管理栄養士の指導を受けることも可能です。

運動療法

定期的に適度な有酸素運動を続けることが大切です。症状によっては過度の運動が逆効果になってしまいますので医師と相談しながら、自分に適した運動を行うようにしましょう。