腎臓病の検査:何がわかる? 検査の種類と目的~「沈黙の臓器」を守るために、いま私たちができること~
「健康診断で『腎臓の数値が少し悪い』と言われたけれど、症状もないし、しばらく様子を見ようかな……」
そうお考えの方も多いのではないでしょうか?
しかし、ちょっと待ってください。
腎臓の病気は、初期にはほとんど症状が現れないことが特徴です。気づかないうちに進行し、ある日突然「透析が必要です」と診断されることもあります。
だからこそ、定期的な検査による早期発見・早期対応が非常に重要なのです。
腎臓ってどんな働きをしているの?
腎臓は、血液をろ過して体に不要な老廃物や水分を尿として排出する“ろ過装置”のような臓器です。1日に約150リットルもの血液をろ過しています。
さらに、
- 血圧の調整
- 骨の健康維持(カルシウム代謝)
- 赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)の分泌
など、全身の健康維持に欠かせない重要な働きを担っています。
腎臓病の早期発見に役立つ主な検査
腎臓病の進行を防ぐには、できるだけ早く異常を見つけて、適切な対策をとることがカギです。代表的な検査をご紹介します。
① 血液検査
● クレアチニン
筋肉から生じる老廃物で、腎臓から尿中に排出されます。腎機能が低下すると血中に蓄積し、数値が上昇します。
- 目安:男性 0.6~1.1 mg/dL、女性 0.4~0.8 mg/dL
● シスタチンC
全身の細胞でつくられるたんぱく質の一種で、腎臓の糸球体からろ過されて排出されます。筋肉量や食事の影響をほとんど受けず、より正確に腎機能を反映する指標です。
- 参考値:約 0.6~1.0 mg/L(※施設・測定法により異なります)
クレアチニンとシスタチンCの違い(比較表)
項目 | クレアチニン | シスタチンC |
由来 | 筋肉由来の老廃物 | 全身の細胞で常に産生 |
影響因子 | 筋肉量・食事・年齢・性別 | ほとんど影響を受けない(特に高齢者に有利) |
特徴 | 健診で広く使用される | 早期の腎機能低下を見つけやすい |
用途 | eGFR(クレアチニン式)算出 | eGFR(シスタチンC式)算出や補助診断 |
精度 | 筋肉量が少ない方では過小評価の可能性 | 真の腎機能を反映しやすい |
医師からのひとこと:
「高齢の方」「筋肉量が少ない方」「早期発見を重視したい方」には、シスタチンCの活用を強くおすすめします。
● eGFR(推算糸球体濾過量)
腎臓がどのくらい血液をろ過できているかを示す指標です。クレアチニン値と年齢・性別から自動的に計算されます。
- eGFR 60未満 → 慢性腎臓病(CKD)の可能性あり
eGFRが60未満の状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中などの心血管リスクが高まることが報告されています(Matsushita et al., Lancet, 2010)。
② 尿検査
● 尿タンパク
腎臓の“フィルター機能”が壊れると、尿にたんぱく質が漏れ出します。糖尿病性腎症などの早期発見に有用です。
- 正常値:尿タンパク/クレアチニン比 0.15 g/gCr 未満
● 尿アルブミン
アルブミンはたんぱく質の一種で、糖尿病腎症の初期変化を捉えるために重要です。
- 正常値:30 mg/gCr 未満
UKPDS研究では、早期のアルブミン増加に気づき治療することで、腎症の進行を抑制できると示されています(UKPDS 64, Kidney Int, 2003)。
● 尿潜血
尿中に血液が混じっていないかを調べます。陽性の場合、結石・腫瘍・腎炎などの可能性もあります。
③ 腎エコー(超音波検査)
腎臓の形や大きさ、結石、のう胞、腫瘍の有無などを確認します。体への負担が少なく、外来で安全に実施できる検査です。
④ 必要に応じた追加検査:腎生検
腎臓の形や大きさ、結石、のう胞、腫瘍の有無などを確認します。体への負担が少なく、外来で安全に実施できる検査です。
腎臓の組織を採取し、顕微鏡で詳細に観察します。原因不明の腎機能低下や、診断が難しいケースで実施されます。
検査をおすすめしたい方
以下に該当する方は、ぜひ腎臓の検査をご検討ください。
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症などの持病がある方
- 健診で「クレアチニンが高い」「eGFRが低い」と言われた方
- 尿にたんぱくが出ている方
- 足のむくみ、夜間の頻尿、疲れやすさが気になる方
- ご家族に腎臓病・透析をされている方がいる場合
当院の特徴:腎臓専門医による安心の診療体制
当院には腎臓専門医が常勤しており、生活習慣病と腎臓病の両面から総合的に診療を行っています。
- 「今すぐ治療は必要ないが、将来が不安」
- 「生活習慣のアドバイスを受けたい」
- 「家族が透析を受けていて、自分も気になる」
そんなお悩みにも、丁寧に対応いたします。
まとめ:いまの検査が、未来を守る第一歩
腎臓病は、一度進行すると元の状態に戻すことは困難です。
しかし、早期発見と正しい対策をとれば、透析を避けて健康的な生活を維持することができます。
「今は大丈夫」ではなく、「今の状態を知ること」が、これからの人生を守る第一歩です。
気になる症状がある方や健診で異常を指摘された方は、ぜひお気軽にご相談ください。
地域の“かかりつけ腎臓専門医”として、皆さまの健康をしっかりとサポートします。