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「脂質異常症と慢性腎臓病(CKD)|腎臓と血管を同時に守るために

第1章|なぜ「脂質異常症」は腎臓にも悪影響を与えるのか?

健診で「LDLコレステロールが高い」「中性脂肪が多い」と指摘される方は少なくありません。脂質異常症というと“動脈硬化の病気”というイメージが強いですが、実は腎臓とも深く関わっています。

腎臓の血管は非常に細く、コレステロールの蓄積によって傷つきやすいため、脂質異常症は慢性腎臓病(CKD)の進行を早める大きな要因の一つです。特に糖尿病や高血圧を合併すると、腎臓の血管障害は加速し、心臓・脳の病気のリスクも同時に高まります。

本記事では、脂質異常症が腎臓に与える影響と、腎機能を守るために必要な対策をわかりやすく解説します。

第2章|脂質異常症が腎臓の血管を傷つけるメカニズム

脂質異常症は、心臓や脳だけでなく「腎臓の細い血管」にも大きな負担をかけます。

腎臓の糸球体は非常に繊細な血管でできており、LDLコレステロールの影響を受けやすいのが特徴です。

LDLコレステロールが高い状態では、酸化ストレスの影響を受けて酸化LDLが増加しやすくなります。

この酸化LDLが糸球体の血管壁に沈着すると、次のような変化が起こります。

  • 微小動脈硬化が進行
  • 血流が悪くなり、糸球体内圧が上昇
  • アルブミン尿が出やすい状態になる

さらに酸化LDLは、免疫細胞(マクロファージ)を刺激し、
炎症性サイトカインの増加 → メサンギウム細胞の増殖 という反応を引き起こします。

これは「脂質誘導性腎障害(lipid nephrotoxicity)」と呼ばれる病態概念で、
糖尿病や高血圧がなくても腎機能が下がっていく要因になります。

また、中性脂肪(TG)が高い状態も腎臓に不利です。

高TG血症ではレムナントリポ蛋白が増え、血管内皮機能が低下するため、

  • 血流調整が乱れやすい
  • アルブミン尿が増えやすい
  • CKD進行リスクが上がる

といった悪影響が重なります。

脂質異常症による腎障害はゆっくり進むため自覚症状が出にくいのが特徴です。

そのため、「数値が少し高いだけ」と油断せず、早期から対策することが重要です。

第3章|脂質異常症を放置するとどうなる? ― CKDと動脈硬化が“同時に”進むリスク

脂質異常症を放置すると、腎臓の細い血管はゆっくり傷み続け、
アルブミン尿の増加・eGFRの低下といった変化が進行していきます。

特にLDLコレステロールが高い状態が続くと、
糸球体の血管が硬くなりやすく、
「気付かないうちに腎機能が落ちている」という状況に陥りがちです。

また、脂質異常症はCKD・糖尿病・高血圧と並ぶ「主要な腎機能悪化要因」とされ、
複数のリスクが重なると、腎機能低下のスピードが一気に速まります。

さらに重要なのは、腎臓だけでなく心臓・脳など全身の血管に負担が広がることです。

CKDが進むと体内の炎症や酸化ストレスが増え、
脂質代謝が乱れやすくなるため、

  • LDLが下がりにくい
  • 中性脂肪が上がりやすい
  • HDLが減少しやすい

といった状態が起こり、動脈硬化が加速します。

その結果、心筋梗塞・脳梗塞・心不全などの
重大な心血管イベントの発症リスクが急上昇します。

特にCKDステージG3以上では、そのリスクが一般の数倍になることが知られています。

このように、脂質異常症は「腎臓の悪化」と「動脈硬化」を同時に進めるため、
早めの治療と生活改善が極めて重要です。

健診異常を指摘された段階で介入することが、腎臓と血管を守る最も確実な方法です。

第4章|今日からできる対策 ― CKDと脂質異常症の進行を抑えるには?

CKD(慢性腎臓病)と脂質異常症は、どちらも生活習慣と深く関わる病気ですが、適切な対策を行うことで進行のスピードを大きく抑えることができます。特に「腎臓の保護」と「動脈硬化の抑制」を同時に行うことが大切です。

① 食事療法 ― 腎臓と血管に優しい食べ方へ

脂質異常症では、LDLコレステロールを増やす飽和脂肪酸(揚げ物・バター・肉の脂身)を控え、魚(EPA/DHA)やオリーブオイルを活用することが基本です。

塩分は1日6g未満(JSH2024準拠)が理想で、外食・加工食品は塩分とリンが多いため控えめが安心です。腎臓病食と脂質管理は相性が良く、同時に実践しやすいのが特徴です。

② 運動療法 ― 中性脂肪を減らし、血管・代謝を改善

ウォーキングやサイクリングなど、息が軽く弾む程度の有酸素運動を週150分程度行うと、中性脂肪が減り、HDL(善玉)コレステロールの増加、血圧・血糖の安定が期待できます。CKDの方でも、過度でなければ安全に取り組めます。

③ 水分管理 ― 脱水は腎機能悪化の一因

脱水状態では血液が濃くなり、腎血流が低下し、脂質異常症では血液粘度が上昇しやすく注意が必要です。心・腎機能に問題なければ、こまめな水分補給を心がけましょう。

④ 薬物療法 ― 腎臓と血管を守る“予防薬”として重要

  • スタチン:LDL低下と心血管リスク減少に有効。CKDでも推奨。
  • エゼチミブ:スタチンで不十分な場合に併用しやすい薬。
  • SGLT2阻害薬:糖尿病の有無に関わらず、腎保護・心不全予防に有用。
  • フィネレノン(非ステロイド性MRA):アルブミン尿減少と心血管イベント抑制が確認されています。

⑤ 定期検査の継続 ― 最も大切な進行抑制策

CKDと脂質異常症は自覚症状が乏しいため、

  • 血液検査(脂質・腎機能)
  • 尿検査
  • 血圧・体重

を定期的にチェックし、主治医とともに早めに微調整することが進行抑制の要になります。

第5章|よくある質問(FAQ)― CKDと脂質異常症で特に多い疑問

CKDと脂質異常症はどちらも自覚症状が少ないため、患者さんから共通した質問が寄せられます。ここでは診察室で特に多い質問をまとめました。

Q1. LDLコレステロールが高いと腎臓に悪いのですか?

はい。LDLは血管内皮を傷つけ動脈硬化を進めます。糸球体の血管も例外ではなく、CKDの方は同じLDL値でもダメージが大きくなりやすいため、より厳密な管理が推奨されます。

Q2. 腎機能が悪くても脂質の薬は飲めますか?

多くの薬は腎機能に応じて安全に使用できます。スタチン・エゼチミブはCKDでも使いやすく、フィブラート系は減量や変更が必要です。自己判断で中止せず、必ず主治医と相談してください。

Q3. 食事だけで改善できますか?

軽度の脂質異常症では改善が期待できますが、CKDが重なる場合は生活改善“だけ”では不十分なことが多く、薬物療法との併用が動脈硬化抑制に最も効果的です。

健診で境界値でも、腎臓と血管を守るためには早めの確認が重要です。不安があれば遠慮なくご相談ください。

第6章|まとめ ― 脂質管理は“腎臓と血管を守る最も効果的な投資”

CKD(慢性腎臓病)と脂質異常症は、互いに影響し合いながら進行し、動脈硬化や心血管病のリスクを高める病気です。そのため、両方を同時に管理する「総合的な診療」がとても重要です。当院では、総合内科専門医・腎臓内科専門医が、腎臓と血管の双方を見ながら治療方針を調整しています。

診療では、腎機能(eGFR)、たんぱく尿、LDL・中性脂肪などの脂質プロファイル、血圧・体重の変化を総合的にチェックし、必要に応じて薬物治療(スタチン、エゼチミブ、SGLT2阻害薬、フィネレノンなど)の調整を行います。

CKDも脂質異常症も、早い段階での介入ほど効果が高く、進行抑制につながります。健診で異常を指摘された方や、数値が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

【ご相談・受診案内】

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【免責事項】

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個々の診断や治療方針を保証するものではありません。
実際の検査内容や受診の必要性は、年齢・症状・既往歴などによって異なります。
健診異常や体調の変化がある場合は、必ず医師の診察を受け、個別にご相談ください。