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腎臓と血圧の関係

健診で「腎機能が低い」「血圧が高め」と指摘される方は少なくありません。腎臓と高血圧は、どちらか一方が原因でもう一方が結果という単純な関係ではなく、互いに相手を悪くする双方向の関係にあります。どちらも自覚症状が出にくいため、気づいたときには両方が進んでいた、ということも起こります。

このページでは、腎臓と血圧がなぜ結びつくのかを、腎臓専門医の視点からできるだけわかりやすく解説します。

腎臓と血圧の関係|なぜ腎臓が悪いと血圧が上がるのか

まず「腎臓が悪いと血圧が上がる」という方向から見ていきます。

腎臓は血圧を調整している臓器です

腎臓は老廃物を尿として捨てるだけの臓器ではありません。血圧を一定に保つ司令塔としての役割も担っています。主な働きは3つです。

  • 塩分と水分の量を調節する:体内の塩分・水分が多ければ尿として捨て、少なければ体に留めます。血液の量が変われば血管にかかる圧力も変わるため、これが最も基本的な血圧調整のしくみです。
  • 血圧を上げるホルモンを出す:腎臓に流れる血液が減ると、腎臓は「血圧が足りない」と判断してレニンというホルモンを分泌します。レニンはアンジオテンシンIIという物質を作り出し、血管を縮めて血圧を上げます。
  • 血管を広げる物質を作る:プロスタグランジンなど、血管を広げて血圧を下げる方向に働く物質も腎臓で作られています。

腎機能が低下すると血圧が上がるしくみ

塩分と水分が体に溜まります。腎臓のろ過機能が落ちると、余分な塩分と水分を尿として捨てきれなくなります。体内をめぐる血液の量が増え、血管の壁にかかる圧力が高まります。腎臓が悪い方が「塩分を控えてください」と繰り返し言われるのは、このためです。

レニンが過剰に分泌されます。腎臓の細い血管が傷むと、腎臓そのものへの血流が減ります。すると腎臓は全身の血圧が下がっていると誤って判断し、レニンを出し続けます。実際には全身の血圧は高いにもかかわらず、さらに血圧を上げる指令が出続けている状態です。

この2つが重なるため、腎機能が低下した方の血圧は下がりにくく、薬も複数必要になりやすいという特徴があります。

血圧が高いと腎臓はどうなるか

今度は逆の方向、「血圧が高いと腎臓が悪くなる」しくみです。

腎臓は、細い血管が密集してできている臓器です。片方の腎臓におよそ100万個、左右で約200万個の糸球体(毛細血管が毛糸玉のように集まったろ過装置)があり、ここで血液をこしています。細い血管の集合体であるがゆえに、腎臓は高血圧に対してとりわけ弱い臓器です。

血圧の高い状態が続くと、糸球体に血液を送り込む細動脈の壁が厚く硬くなります。血管の内側が狭くなり、糸球体に十分な血液が届かなくなる。血液が届かなくなった糸球体は次第に硬くなり、機能を失っていきます。この変化が進んだ状態を腎硬化症と呼びます。

さらに、失われた糸球体の分を残った糸球体が補おうとします。1個あたりの負担が増え、無理をした糸球体もまた傷んでいく。この連鎖が、腎機能がゆるやかに、しかし確実に低下していく理由です。

自覚症状はほとんど出ません

腎臓は予備能力の大きい臓器で、機能がかなり低下するまで症状が出ないことがほとんどです。むくみや疲労感を自覚する頃には、相当に進行している場合が少なくありません。

だからこそ、血圧が高いと言われた方には、血圧の数値だけでなく血液検査のクレアチニン(eGFR)尿検査の蛋白尿を定期的に確認していただきたいのです。この2つは、自覚症状のない時期の腎障害を捉える代表的な指標です。

糸球体内圧とは|腎臓を傷める「内側の血圧」

ここからは少し専門的な話になりますが、腎臓を守るうえで最も重要な考え方です。

腕で測る血圧とは別に、糸球体の内側にも圧力があります。これを糸球体内圧(糸球体高血圧)といいます。腎臓の障害が進むかどうかは、腕で測る血圧よりも、この糸球体内圧に強く左右されます。

内圧は「入口」と「出口」で決まります

糸球体には、血液が入ってくる輸入細動脈と、出ていく輸出細動脈があります。

ホースに水を流す場面を思い浮かべてください。蛇口を大きく開けて水量を増やすか、ホースの先を指でつまむかすれば、ホースの中の圧力は上がります。糸球体もこれと同じで、入口が広がるか、出口が狭まると、内側の圧力が高くなります。

糸球体内圧のしくみ 上段は入口の輸入細動脈と出口の輸出細動脈のバランスが取れた正常な糸球体。下段は入口が広がり出口が狭まることで糸球体の内圧が上がり、たんぱくが尿に漏れ出す状態を比較した図。糸球体は毛細血管のループが絡み合った房として描かれている。 正常な状態 入口(輸入細動脈) 出口(輸出細動脈) 糸球体(毛細血管の塊) 入口と出口のバランスが取れ、内圧は適正です。 内圧が上がった状態 内側の圧力が上昇 入口が広がる 出口が狭まる 蛋白尿 フィルターが傷み、たんぱくが漏れます。
糸球体内圧は、入口(輸入細動脈)と出口(輸出細動脈)のバランスで決まります。

糸球体内圧が上がる原因

糸球体の数が減ったとき。腎機能が低下して働ける糸球体が減ると、残された糸球体は入口を広げて血液を多く受け入れ、失われた分のろ過量を補おうとします。短期的には帳尻が合いますが、内圧の高い状態が続くために糸球体はさらに傷んでいきます。過剰ろ過と呼ばれる状態です。

レニン・アンジオテンシン系が働きすぎたとき。アンジオテンシンIIには、輸入細動脈よりも輸出細動脈を強く収縮させる性質があります。出口が締まることで、糸球体の内圧が上がります。

このほか、糖尿病、肥満、塩分の摂りすぎも糸球体内圧を高める要因になります。

蛋白尿は「糸球体への負担や傷害」のサインです

糸球体はろ過フィルターです。内圧の高い状態が続くとフィルターの目が傷み、本来は通らないはずのタンパク質が尿に漏れ出します。これが蛋白尿です。

糸球体内圧の上昇は、蛋白尿が生じる重要な原因のひとつです。ただし、蛋白尿は糸球体の炎症やフィルター機能の障害などでも生じます。

蛋白尿の量が多いほど腎機能低下のリスクが高いことが知られており、腎臓への負担を知る重要な指標になります。健診で尿蛋白を指摘された場合に、腎臓専門医が重く受け止めるのはこうした理由からです。

腎臓を守る薬は、糸球体内圧を下げることを狙っています

腎臓を保護する薬は、全身の血圧を下げるだけでなく、糸球体内圧そのものを下げる作用を持っています。

  • ARB・ACE阻害薬:アンジオテンシンIIの働きを抑え、締まっていた輸出細動脈をゆるめます。出口が広がることで内圧が下がります。
  • SGLT2阻害薬:尿細管から糸球体への信号を介して、輸入細動脈を適度に締めます。入口が細くなることで内圧が下がります。

これらの薬を開始した直後に、血液検査のクレアチニンがわずかに上昇することがあります。多くは糸球体内圧が下がったことによる想定内の変化で、長期的には腎機能を守る方向に働きます。数値が上がったからといって自己判断で中止せず、必ず主治医にご相談ください。

腎臓病と高血圧の悪循環はなぜ起きるのか

ここまで「腎臓が悪いと血圧が上がる」「血圧が高いと腎臓が悪くなる」という2つの方向を別々に見てきました。実際の体の中では、この2つが同時に進み、互いを加速させる輪になっています。

腎臓病と高血圧の悪循環 腎機能の低下、塩分と水分の貯留および血圧を上げるホルモンの増加、血圧の上昇、糸球体と細い血管の障害という4つの段階が順につながり、最後にふたたび腎機能の低下へ戻る輪になっていることを示した図。 腎機能が低下する 塩分と水分がたまる 血圧を上げるホルモンが増える 血圧が上がる 糸球体と細い血管が傷む
腎臓と血圧はひとつづきの輪になっています。治療はこの輪のどこかを断ち切ることを目指します。

この輪を回し続ける要因は、これまでに述べた塩分と水分の貯留レニン・アンジオテンシン系の活性化糸球体内圧の上昇のほかに、あと2つあります。

交感神経の緊張

腎機能が低下すると、体を緊張状態に導く交感神経が過剰に働きやすくなります。血管が収縮し、心拍数が上がるため、慢性的な血圧上昇につながります。腎臓病の方に夜間の血圧が下がりにくいという特徴がみられるのも、この影響が関係しています。

血管の石灰化と動脈硬化

腎臓はカルシウムとリンのバランスを調整する臓器でもあります。腎機能が低下するとリンが体に溜まりやすくなり、血管の壁にカルシウムが沈着して硬くなっていきます。血管が硬いとクッションの働きが失われ、上の血圧(収縮期血圧)が上がりやすくなります。硬くなった血管は腎臓への血流も妨げるため、腎機能の低下をさらに促します。

これらのしくみは独立して働くのではなく、互いを補強し合います。だからこそ治療では、どこか一箇所ではなく複数の点から輪を断ち切るという考え方をとります。

腎不全になると血圧はどうなるか

「慢性腎臓病」と「腎不全」の違い

まず言葉の整理をしておきます。慢性腎臓病(CKD)は、eGFRの低下、蛋白尿・血尿、画像検査の異常など、腎臓の機能低下または腎障害を示す所見が3か月以上続く状態です。そのうち、慢性的に腎機能が高度に低下した状態を慢性腎不全、透析や腎移植が必要になる段階を末期腎不全と呼びます。

つまり腎不全は、慢性腎臓病が進行した状態を指す言葉です。健診で軽度の腎機能低下を指摘された段階は、腎不全ではありません。

なお、腎機能が急に悪化する急性腎障害(AKI)は、これらとは別の病態です。

腎不全が進むと血圧は上がりやすくなります

腎機能の低下が進むほど、血圧のコントロールは難しくなります。理由は主に3つです。

  • 体液が過剰になる:尿として捨てられる水分と塩分の量が減り、体に水が溜まります。むくみ、体重増加、息切れをともなうこともあります。この状態では、降圧薬を増やすよりも水分と塩分の管理や利尿薬のほうが有効なことがあります。
  • 夜間の血圧が下がらない:健康な方の血圧は睡眠中に10〜20%ほど下がりますが、腎機能が低下すると夜間も血圧が高いままになりやすくなります。日中の血圧が良好でも、24時間の負担は大きいままです。
  • 血管が硬くなる:石灰化により血管の弾力が失われ、上の血圧が高く、下の血圧が低いという開きの大きい血圧になりやすくなります。

逆に血圧が下がってくることもあります

「腎臓が悪いと血圧が上がる」と説明されてきた方が、あるとき血圧が下がりはじめて戸惑うことがあります。これにはいくつかの背景があります。

  • 心臓の働きが低下している:長年の高血圧や腎不全により心機能が落ちると、血液を押し出す力そのものが弱まります。
  • 食事量が減っている:食欲が落ちて塩分・水分の摂取が減ると、血圧は下がります。栄養状態の悪化を反映していることもあります。
  • 自律神経の障害:糖尿病を長く合併している方では、立ち上がったときに血圧が下がる起立性低血圧が起こりやすくなります。
  • 降圧薬が効きすぎている:腎機能の変化により、これまでと同じ量の薬が効きすぎることがあります。

血圧が下がってきたことは、必ずしも「良くなった」とは限りません。今まで高かった方の血圧が自然に下がってきた場合は、一度ご相談ください。薬の調整が必要なこともあれば、心臓や栄養状態の評価が必要なこともあります。

腎臓を守るための血圧目標|JSH2025

腎臓を守るうえで、どこまで血圧を下げればよいのか。日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、慢性腎臓病のある方の降圧目標が次のように示されています。

測定の場面降圧目標
診察室血圧130/80 mmHg 未満
家庭血圧125/75 mmHg 未満
慢性腎臓病を合併する高血圧の降圧目標(JSH2025)

蛋白尿の有無で目標値が分かれなくなりました

これは改訂の大きなポイントです。以前のガイドライン(JSH2019)では、蛋白尿が陰性の方の目標は140/90 mmHg未満とされ、蛋白尿の有無によって目標値が二分されていました。

JSH2025では、糖尿病や蛋白尿の有無にかかわらず、原則として130/80 mmHg未満に統一されています。新たな臨床試験のメタ解析を踏まえ、CKD患者全体として共通の降圧目標に整理されたかたちです。

ただし「慎重に下げる」という条件がつきます

目標値が統一された一方で、下げ方については配慮が求められています。とくに糖尿病を合併していない、蛋白尿が陰性の方では直接的なエビデンスが限られるため、次のような進め方が示されています。

  • 最終的には130/80 mmHg未満を目指す
  • 必要に応じて140/90 mmHg未満を中間目標とし、段階的に下げる
  • 腎機能の悪化、急性腎障害、電解質の異常、めまい・ふらつきなどに注意しながら進める

血圧を下げること自体が目的ではなく、腎臓と全身を守るために下げるのですから、急な降圧でかえって腎機能が悪化しては本末転倒です。日本腎臓学会も2026年6月にこの方針に沿ったステートメントを公表しており、学会間で考え方が揃っています。

蛋白尿による違いは、現在は数値目標の二分ではなく、「下げる慎重さ」と「どの薬から始めるか」に残っているとご理解ください。蛋白尿のある方では、ARB・ACE阻害薬が第一選択となります。

なお、年齢・体調・併存疾患によって適切な目標は変わります。とくにご高齢の方や、ふらつきのある方では別途の配慮が必要ですので、実際の目標値は主治医の判断を優先してください。

血圧が下がらないとき|腎臓が原因のこともあります

「薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」というご相談は少なくありません。降圧薬を3種類(うち1つは利尿薬)きちんと使っても目標に届かない状態を治療抵抗性高血圧といい、腎臓病の方では珍しくありません。

下がらないときには、必ず理由があります。順に確認していきます。

① まず本当に高いのかを確かめます

診察室でだけ血圧が高くなる白衣高血圧は珍しくありません。逆に、診察室では正常なのに家庭や職場で高い仮面高血圧もあります。どちらなのかは、家庭血圧の記録がなければ判断できません。治療方針を決めるうえで、家庭血圧は診察室の血圧よりも重要な情報です。

② 塩分の摂りすぎがないかを確かめます

腎機能が低下している方では、塩分の影響が健康な方よりも強く出ます。捨てられる塩分の量が減っているためです。塩分が多い状態では、降圧薬そのものが効きにくくなります。薬を増やす前に、まず減塩を見直す価値があります。当院では尿検査から推定塩分摂取量を評価することもできます。

③ 血圧を上げる薬を飲んでいないかを確かめます

市販の鎮痛薬(NSAIDs)、一部の漢方薬(甘草を含むもの)、ステロイド、市販のかぜ薬などは、血圧を上げたり腎機能に影響したりすることがあります。とくに鎮痛薬を常用している方では、これが原因のことがあります。市販薬やサプリメントも含めて、服用中のものをすべてお伝えください。

④ 二次性高血圧の可能性を検討します

高血圧の多くは原因を特定できない本態性高血圧ですが、一部にははっきりした原因のある高血圧があります。これを二次性高血圧といい、原因を治療すれば血圧が改善する可能性があります。

  • 原発性アルドステロン症:副腎からアルドステロンが過剰に分泌される状態です。従来考えられていたより頻度が高く、血液検査でスクリーニングできます。低カリウム血症をともなうことがあります。
  • 腎血管性高血圧:腎臓に血液を送る動脈が狭くなり、レニンが過剰に分泌されます。腎機能の低下をともなうことがあります。
  • 睡眠時無呼吸症候群:夜間の低酸素が交感神経を緊張させ、血圧を上げます。いびき、日中の眠気があれば検査の対象です。当院では睡眠時無呼吸の検査・治療にも対応しています。
  • 腎実質性高血圧:腎臓そのものの病気による高血圧です。慢性腎臓病にともなう高血圧はここに含まれます。

とくに、若くして高血圧になった急に血圧が上がった薬を3種類使っても下がらない血液検査でカリウムが低いといった場合は、二次性高血圧を疑って調べる価値があります。

血圧が下がらない状態を「体質だから」と受け入れてしまう前に、一度きちんと原因を探すことをおすすめします。原因が見つかれば、治療の見通しは大きく変わります。

腎臓と血圧を守る治療

治療の目標は3つです。血圧を下げること蛋白尿を減らすこと腎臓に負担をかけない生活を続けること。このうち蛋白尿を減らすという視点は、血圧の治療だけを考えていると抜け落ちやすい部分です。

薬による治療

腎臓病を合併した高血圧では、単に血圧が下がればどの薬でもよい、というわけではありません。腎臓を守る作用を併せ持つ薬から選んでいきます。

  • ARB・ACE阻害薬:蛋白尿のある方の第一選択です。血圧を下げると同時に糸球体内圧を下げ、蛋白尿を減らします。腎機能や血清カリウムを確認しながら量を調整します。
  • SGLT2阻害薬:もとは糖尿病の薬ですが、糖尿病がない方の慢性腎臓病にも効果が確認されています。腎機能低下の進行と心不全の両方を抑えます。適応はeGFR、蛋白尿、心不全の有無、腎臓病の原因などを踏まえて判断します。
  • フィネレノン2型糖尿病を合併した慢性腎臓病で、標準治療を行ってもアルブミン尿が残る場合に、腎機能と血清カリウムを確認したうえで追加を検討します。
  • 利尿薬:体に水分が溜まっているタイプの高血圧に有効です。腎機能の程度によって使い分けます。
  • カルシウム拮抗薬:確実に血圧を下げる薬で、腎機能が低下していても使いやすく、併用薬としてよく用います。

これらは組み合わせて使うのが一般的です。薬の数が増えることを不安に感じる方もいらっしゃいますが、それぞれ役割が違うため、1剤を大量に使うより安全で効果的なことが少なくありません。

生活の中でできること

減塩が最も効果の大きい対策のひとつです。目標は1日6g未満。加工食品、麺類の汁、漬物、外食に多く含まれます。ただし、低栄養、食欲低下、低血圧などがある方では個別の調整が必要なため、主治医や管理栄養士と相談しながら進めてください。詳しくは減塩の実践ガイドをご覧ください。

運動については、かつて腎臓病では安静が勧められていましたが、現在は考え方が変わりました。適度な運動はむしろ腎臓にも心臓にもよいとされています。ウォーキングなど、息が弾む程度の運動を無理のない範囲で続けてください。

体重管理と禁煙も血圧と腎臓の両方に効きます。喫煙は蛋白尿を増やし、腎機能低下を早めることが知られています。

市販薬にはご注意ください。とくに鎮痛薬(NSAIDs)は腎臓の血流を減らし、腎機能を悪化させることがあります。かぜ薬や漢方薬、サプリメントにも影響するものがありますので、服用前にご相談いただくのが安全です。

腎臓病の方に家庭血圧が特に重要な理由

家庭で測る血圧は、どなたにとっても大切な情報です。ただし腎臓病のある方には、それ以上の意味があります。

診察室の血圧だけでは判断を誤ります

腎機能が低下している方では、診察室での血圧と普段の血圧が食い違いやすくなります。診察室では正常なのに家庭や職場で高い仮面高血圧は、腎臓病の方に多いことが知られています。診察室の数値だけを見ていると、治療が足りていないことに気づけません。

家庭血圧が正常家庭血圧が高い
診察室で正常正常血圧仮面高血圧
(腎臓病の方に多い)
診察室で高い白衣高血圧持続性高血圧
診察室血圧と家庭血圧の組み合わせによる4分類

このうち仮面高血圧は、診察室では見つけられません。家庭で測っていなければ、治療が足りていないことに気づかないまま経過してしまいます。腎臓病の方に多いタイプであるため、当院では家庭血圧の記録をお願いしています。

夜間の血圧が下がりにくい

健康な方では、睡眠中の血圧は日中より10〜20%ほど下がります(dipper型)。一方、腎臓病では夜間に十分下がらないnon-dipper型や、夜間のほうが高くなるriser型がみられることがあります。こうした夜間血圧の異常は、心臓や腎臓への負担が大きいことと関連します。

日中の血圧が良好でも、夜間に下がっていなければ、24時間を通した負担は続いていることになります。

1日の血圧の動き(模式図) 日中の血圧がほぼ同じでも、正常な夜間低下があるdipper型では睡眠中に血圧が10〜20%低下するのに対し、CKDで多いnon-dipper型では夜間もほとんど下がらないことを示した24時間の推移の模式図。 110 120 130 140 mmHg 朝6時 12時 18時 24時 翌6時 夜間(睡眠中) ほとんど下がらない 10〜20%下がる 日中の血圧がほぼ同じでも… dipper型(正常な夜間低下) CKDで多いnon-dipper型
1日の血圧の動き(模式図・実測値ではありません)。日中の血圧が同じでも、夜間に下がるかどうかで24時間の負担は大きく変わります。こうした推移は24時間血圧計で確認します。

夜間に下がりにくくなる理由

一因として、腎臓の塩分を尿へ出す力が低下すると、日中だけでは塩分を排泄しきれず、夜間も血圧を保つことで排泄を補おうとすることが考えられています。そのため減塩は、日中だけでなく夜間の血圧を整えるうえでも大切です。

ただし、夜間に血圧が下がりにくくなる原因はこれだけではありません。睡眠時無呼吸、糖尿病による自律神経の障害、体内の水分量、薬の効果が切れるタイミングなども関係します。原因によって対応が変わるため、心当たりのある方はご相談ください。

夜間の血圧は24時間血圧計で確認します

一般的な家庭血圧計では睡眠中の血圧は測定できませんが、夜間自動測定に対応した家庭血圧計もあります。dipper型・non-dipper型・riser型の評価には、原則として24時間血圧計(ABPM)または夜間測定に対応した機器を用います。ABPMは腕に装着したまま生活し、睡眠中も自動で測定する検査です。

当院では24時間血圧計による検査は行っておりませんが、夜間高血圧が強く疑われる場合には、連携する医療機関にご紹介して検査を受けていただくことがあります。

朝と就寝前の家庭血圧は日常の血圧管理に欠かせませんが、この2つだけで夜間高血圧の有無を判定することはできません。それでも、就寝前の血圧が高い状態が続く場合などは、詳しい検査を検討する手がかりになります。

測定のタイミングや姿勢など、具体的な測り方は家庭血圧の正しい測り方で詳しく解説しています。記録を持参いただければ、薬の調整がぐんと正確になります。

よくあるご質問

腎臓が悪いと血圧が上がるのはなぜですか?

主な理由は2つです。ひとつは、余分な塩分と水分を尿として捨てきれず、体をめぐる血液の量が増えるため。もうひとつは、腎臓への血流が減ることで、血圧を上げるホルモン(レニン)が過剰に分泌されるためです。この2つが重なるため、腎臓病の方の血圧は下がりにくくなります。

血圧が高いと腎臓は必ず悪くなりますか?

必ずではありませんが、高い状態が長く続くほどリスクは高まります。腎臓は細い血管の集まりであるため、高血圧の影響を受けやすい臓器です。ただし血圧を適切に管理すれば、腎機能の低下速度を大きく緩やかにできます。早く始めるほど効果があります。

薬を飲んでも血圧が下がらないのは腎臓のせいですか?

腎機能の低下が関係していることは多いですが、それだけとは限りません。塩分の摂りすぎ、鎮痛薬などの併用、睡眠時無呼吸、原発性アルドステロン症などの二次性高血圧が隠れていることもあります。原因によって対応が変わりますので、下がらない状態が続く場合は一度詳しく調べることをおすすめします。

腎臓が悪いと血圧の目標は違いますか?

はい。JSH2025では、慢性腎臓病のある方の降圧目標は診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満とされています。以前は蛋白尿の有無で目標が分かれていましたが、現在は原則として統一されました。ただし糖尿病がなく蛋白尿も陰性の方では、段階的に慎重に下げていきます。

血圧の薬を始めたらクレアチニンが上がりました。中止したほうがよいですか?

自己判断での中止は避けてください。ARB・ACE阻害薬やSGLT2阻害薬を始めた直後にクレアチニンがわずかに上がるのは、糸球体内の圧力が下がったことによる想定内の変化であることが多く、長期的には腎機能を守る方向に働きます。ただし上昇の程度によっては調整が必要ですので、必ず主治医にご相談ください。

血圧の薬は一生飲み続けるのですか?

腎臓病を合併した高血圧では、薬は「血圧を下げるため」だけでなく「臓器を守るため」に続けるものとお考えください。自己判断で中止すると血圧や蛋白尿が再び上がり、長期的な腎機能低下のリスクが高まることがあります。減量できるかどうかは、家庭血圧の記録と検査結果を見ながら判断します。

まとめ

腎臓と血圧は、互いを悪くする輪でつながっています。放置すれば腎臓だけでなく、心臓や脳にも影響が広がります。

一方で、この輪はどこかで断ち切ることができます。血圧を適切に下げること蛋白尿を減らすこと家庭血圧を記録すること。この3つが、腎臓を守るうえで最も確かな方法です。

健診で「腎機能が低い」「尿蛋白が出ている」「血圧が高い」と指摘されたときが、始めどきです。自覚症状がない時期にどう手を打つかで、10年後、20年後が変わります。

腎臓と血圧のご相談は当院へ

健診で腎機能・尿蛋白・血圧の異常を指摘された方、血圧が思うように下がらない方は、お気軽にご相談ください。総合内科専門医・腎臓専門医が、検査から治療、生活習慣の見直しまで丁寧にサポートいたします。尾張旭市・瀬戸市・長久手市周辺からお越しいただいています。

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この記事の執筆者

加藤 彰浩(きたはらやまクリニック 院長)
総合内科専門医・腎臓専門医。生活習慣病と腎臓病を専門とし、透析予防を診療の柱としています。

参考文献

  • 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』
  • 日本腎臓学会「CKD患者の血圧管理に関するステートメント」(2026年)
  • 日本腎臓学会『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』
  • 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』
  • KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease

免責事項

本記事は一般的な医療情報をまとめたものであり、個々の症状や検査結果に基づく診断・治療方針は医師の診察により異なります。気になる症状や数値がある場合は、早めの受診をおすすめします。