第1章 二次検査とは? ― 健診異常をそのままにしないために
健診で「要再検査」「要精密検査」と書かれていると、不安になる方が多いと思います。
しかし、二次検査は「病気がある」という意味ではなく、
- 体の状態をより正確に調べるチャンス
- 早期発見・早期治療につながる大切なステップ
です。
特に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病(CKD)といった生活習慣病は、症状が出る前に静かに進行します。
一次健診では“スクリーニング(ふるい分け)”であり、数値の変動をそのまま放置すると大きな病気につながる可能性があります。
この記事では、健診で異常を指摘された方が、
「自分はどの二次検査を受けるべきか?」
をすぐに理解できるよう、項目別にわかりやすく一覧で整理します。
第2章 なぜ二次検査が必要なのか? ― 生活習慣病の“隠れた病態”を見つける
一次健診では、時間・項目が限られています。
そのため、以下のような理由で精密検査が必要になることがあります。
● 一度の測定では判断できない
血圧・血糖・腎機能・脂質などは「その日の体調」によって揺らぎます。
特に血圧は明確で、診察室では高く出やすいため、家庭血圧の測定(JSH2024推奨)が不可欠です。
● 検査項目が足りない
一次健診では、以下のような点まで知ることはできません。
- どの“種類”のコレステロールが悪いか
- 腎臓のどの部分が悪いか
- 糖尿病のリスクの程度がどれくらいか
● 早期に対応すると予後が改善する
腎臓病(CKD)は早期治療が最も効果的です。
特に「尿蛋白(たんぱく尿)」は重要なサインで、二次検査は絶対に必要です。
では実際に、どの項目でどの二次検査が必要なのかを、次の章で詳しくご説明します。
第3章 二次検査で受けるべき項目一覧(項目別にわかりやすく解説)
以下は、健診異常ごとに「どんな二次検査を受けるべきか」を一覧にまとめたものです。
◆1. 血圧(高血圧)の二次検査
【必要な二次検査】
- 家庭血圧(朝夕・7日間)
- 血液検査(腎機能・電解質)
- 尿検査(尿蛋白・尿アルブミン)
- 心電図
- 心エコー(必要に応じて)
- 腎エコー
【理由】
高血圧は腎臓・心臓・脳に負担をかけます。
家庭血圧は診察室より正確で、診断の基準は135/85mmHg以上(JSH2024)です。
◆2. 血糖(高血糖・境界型)の二次検査
【必要な二次検査】
- 空腹時血糖
- HbA1c
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)(必要に応じて)
- インスリン分泌能(Cペプチド)
- 腎機能・尿蛋白
- 眼科検査(糖尿病網膜症の有無)
【理由】
血糖は少し高いだけでも、将来的に糖尿病に進む可能性があります。
糖尿病の診断には、複数項目の総合評価が必須です。
◆3. 腎機能(eGFR低下・尿蛋白)の二次検査
【必要な二次検査】
- 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)
- 血清クレアチニン(eGFR再確認)
- 血清シスタチンC(精度の高い腎機能評価)
- 腎エコー
- 血圧・血糖・脂質の精密検査
- 電解質(K, Na, Ca, P)
【理由】
尿蛋白は腎臓病の最重要サインであり、放置するとCKD→透析に繋がることがあります。
早期介入ができれば、進行を止めることが可能です。
◆4. 脂質異常症(LDL・TG・HDL異常)の二次検査
【必要な二次検査】
- LDL直接法
- Non-HDLコレステロール
- ApoB(動脈硬化リスクをより精密に評価)
- 血糖・腎機能
- 動脈硬化検査(ABI / CAVI)
【理由】
脂質異常は自覚症状なく進行し、心筋梗塞・脳卒中の主要リスクです。
特にLDL140以上は精密検査が望ましいです。
◆5. 肝機能(ALT・γGTP)の二次検査
【必要な二次検査】
- 肝炎ウイルス(HBs, HCV)
- 腹部エコー(脂肪肝の評価)
- 脂質・血糖検査
- 肝線維化マーカー(必要に応じて)
【理由】
最も多い原因は脂肪肝で、生活習慣病と密接に関係しています。
◆6. 貧血(Hb低下)の二次検査
【必要な二次検査】
- 鉄・フェリチン
- ビタミンB12・葉酸
- 便潜血(消化管出血の除外)
- 腎機能
- 甲状腺機能
【理由】
貧血は「原因を特定する検査」がとても重要です。
腎臓病による貧血も多く見られます。
第4章 二次検査を受けないとどうなる? ― 放置のリスク
二次検査を受けない最大の問題は、
- 本当の病気を見逃す
例)
- 高血圧 → 心肥大・腎障害
- 血糖異常 → 糖尿病 → 網膜症・腎症
- 脂質異常 → 心筋梗塞
- 尿蛋白 → CKD → 透析
- 早期治療のチャンスを失う
早期なら薬を減らせることもありますが、
症状が出る頃には病気が進行していることが多いです。
第5章 実際によくある質問(FAQ)
Q1. 「要再検査」と言われました。全部の項目を受ける必要がありますか?
A. 「異常の出た項目だけ」で大丈夫ですが、腎臓・血圧・血糖は関連性が高く、合わせて調べると安心です。
Q2. どれくらい早く受診すべきですか?
A. できれば1〜2週間以内が理想です。
特に尿蛋白・高血圧・血糖異常は早期受診を推奨します。
Q3. 自覚症状が全くありません。二次検査は必要ですか?
A. 必要です。生活習慣病は自覚症状が出た時には進行していることが多いです。
Q4. 二次検査はどれくらい時間がかかりますか?
A. 当院では、必要な項目をまとめて行うため30〜60分程度で完了します。
第6章 まとめ・受診案内・免責
二次検査は、
「本当に病気なのか」「どの程度進んでいるのか」
を正確に判断するための大切なステップです。
- 健診異常を放置しない
- 病気の早期発見につながる
- 腎臓・心臓・脳を守る第一歩
- 必要な検査は医師が個別にご提案します
早めに検査を受けることで、健康寿命を大きく延ばすことができます。
【ご相談・受診案内】
健診で異常を指摘された方へ
当院では、高血圧・糖尿病・脂質異常症・腎臓病(CKD)などの二次検査をまとめて行えます。
気になる症状や結果があれば、お気軽にご相談ください。お問い合わせ・受診予約はこちら
【免責事項】
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個々の診断や治療方針を保証するものではありません。
実際の検査内容や受診の必要性は、年齢・症状・既往歴などによって異なります。
健診異常や体調の変化がある場合は、必ず医師の診察を受け、個別にご相談ください。
