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糖尿病と腎臓の深い関係|糖尿病性腎症の原因・症状・予防を腎臓専門医が解説

第1章|なぜ「糖尿病」と「腎臓」は深く結びつくのか?

健診で「血糖が高い」「尿アルブミンが陽性」「腎機能(eGFR)が低下している」と指摘される方は少なくありません。実はこれらはすべて、糖尿病が腎臓へ与える負担のサインであり、放置すると「糖尿病性腎症」へ進行する可能性があります。

糖尿病性腎症は日本の透析導入原因の第1位であり、早期の段階では自覚症状がほとんどないため、健診異常が唯一の“気付きのチャンス”になることも多い疾患です。

また、糖尿病性腎症は慢性腎臓病(CKD)の一つであり、腎臓だけでなく心臓・脳など全身の臓器にも影響する病態です。

本記事では、糖尿病が腎臓に与える影響(糖尿病性腎症)をやさしく解説し、腎機能を守るために今日からできる対策をまとめています。

第2章|糖尿病が腎臓を傷つけるメカニズム

糖尿病はCKD(慢性腎臓病)の最大の原因とされており、高血糖の状態が続くことで腎臓の糸球体が徐々に傷ついていきます。CKDとは、腎機能の低下やアルブミン尿が3か月以上続く状態を指しますが、糖尿病ではこの「アルブミン尿」が最も早期にあらわれる変化です。

高血糖により糸球体の血管が硬くなり、濾過機能が過剰に働くことで「糸球体過剰濾過」が生じ、やがて糸球体内圧の上昇と血管損傷につながります。

同時に、AGEs(終末糖化産物)による血管障害や、RAA系の活性化も加わり、腎臓へのダメージが加速します。これらの変化が積み重なることで糖尿病性腎症が進行し、CKDの主要な原因となります。

第3章|放置すると“静かに進む”糖尿病性腎症のリスク

糖尿病性腎症(DKD)は、自覚症状のないまま進行することが最大の特徴です。高血糖による糸球体の負荷や血管障害が続くと、まずアルブミン尿が出現し、その後ゆっくりとeGFRが低下していきます。

DKDでは、一般的なCKDより進行速度が速いことが多く、蛋白尿が持続する場合は年1mL/年以上eGFRが低下する例も珍しくありません。

影響は腎臓だけにとどまらず、心臓や脳の血管にも広がります。糖尿病に伴う血管内皮障害や動脈硬化は、

  • 心筋梗塞
  • 心不全
  • 脳梗塞

といった疾患の発症リスクを高めます。特にDKDの患者さんは、「心血管イベントの高リスク群」として国際的にも位置付けられています(KDIGO2022)。

さらに、高血糖・高血圧・脂質異常が重なることで「多重リスク状態」となり、腎機能の低下と心血管病リスクが相乗的に高まります

だからこそ、アルブミン尿は早期発見の“サイン”であり、数値の小さな変化でも放置せず、早めの介入が重要です。

第4章|糖尿病性腎症で“実際に起きる症状・合併症” ― 腎臓だけでなく全身へ影響が広がる

糖尿病性腎症(DKD)は、早期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると腎臓の働きが少しずつ低下し、身体のさまざまな部位に影響が現れます。ここでは、「放置するとどんな症状が出るのか」「どんな合併症が起きるのか」に絞って解説します。

1. 腎臓由来の症状:むくみ・疲れやすさ・夜間尿が増える

腎機能が低下してくると、体内の水分や塩分をうまく調整できなくなり、次のような症状が現れます。

  • 足や顔のむくみ
  • 疲れやすい・だるい
  • 夜間の頻尿
  • 貧血(腎臓で作られるホルモン不足)
  • 食欲不振・体重減少

これらは腎機能の低下に伴う典型的な症状ですが、実際には「かなり進行するまで気づかれにくい」のが特徴です。

2. 心臓・血管の合併症:心不全・心筋梗塞・脳梗塞のリスク上昇

糖尿病性腎症は、腎臓だけの病気ではありません。腎機能の悪化とともに全身の血管にも障害が起こりやすく、 心血管病(心筋梗塞・心不全・脳梗塞)の発症リスクが大きく上昇します。

KDIGO(国際腎臓学会)は、糖尿病性腎症を

「心血管イベントの高リスク群」

と明確に位置付けています。

特に以下の場合、リスクはさらに高まります。

  • A3(高度アルブミン尿)
  • eGFRがG3b以下に低下
  • 高血糖・高血圧・脂質異常が重なる状態

血管内皮障害が進むと、心臓や脳の細い血管が詰まりやすくなるため、急性の症状として強く出ることがあります。

3. 末期腎不全:透析が必要になることも

治療や管理が不十分なまま進行すると、最終的には腎臓が老廃物を十分に排泄できなくなり、 腎代替療法(透析・腎移植)が必要になることがあります。

日本では、透析導入の原因の約40%が糖尿病性腎症であり、非常に注意が必要な病態です。

※個々の病態により進行速度や症状は大きく異なります。治療方針・目標値は必ず主治医の判断を優先してください。

第5章|今日からできる予防と対策 ― 3本柱で腎臓を守る

糖尿病性腎症の進行を抑える最大のポイントは、「血糖」「血圧」「尿たんぱく(アルブミン尿)」の3つを同時に管理することです。どれかひとつだけでは不十分であり、3つの柱がそろってはじめて腎臓を守る力が最大になります。

1. 血糖管理:HbA1cの安定が最重要

血糖が高い状態が続くと、糸球体を傷つける「糖化ストレス」が強まり、アルブミン尿が悪化します。

HbA1cは7.0%未満(高齢者では目標調整あり)を目安に、低血糖を避けながら安定させることが重要です。

食事(糖質量の調整・食物繊維の摂取)、運動、体重管理が基本となり、必要に応じてGLP-1受容体作動薬SGLT2阻害薬などの薬物治療を組み合わせます。

2. 血圧管理:130/80mmHg未満を目指す(可能な範囲で)

糖尿病性腎症では、血圧の影響が非常に大きく、

「アルブミン尿の減少=腎臓保護」

につながります。

JSH2024の推奨では、腎臓病を合併する場合の血圧目標は

130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)

が目安となります。

ACE阻害薬・ARBは腎保護効果が最も強く、第一選択となります。さらに必要に応じて、カルシウム拮抗薬利尿薬などを適切に追加します。

3. 尿たんぱく(アルブミン尿)の減少を最優先

尿中アルブミン量は、腎機能の予後と心血管リスクを最もよく反映する指標です。

特にA2・A3レベルでは、アルブミン尿の半減を治療の一つの目標とします。

SGLT2阻害薬フィネレノン(非ステロイド性MRA)などは、アルブミン尿を減少させ、腎不全への進行を抑制することが複数の大規模試験で示されています。

第6章|まとめ ― 早めの対策で腎機能を守ることができます

糖尿病性腎症は、放置すると腎機能が少しずつ低下し、最終的には人工透析が必要になることもある病気です。しかし、血糖・血圧・尿たんぱくの3つを適切に管理することで、進行を大きく遅らせることができます。

  • HbA1cの安定
  • 血圧の管理(130/80mmHg未満を目安に)
  • アルブミン尿の減少

これらはすべて「腎臓を守るための治療」であり、日々の生活と医療の両方が重要です。

健診で異常を指摘された方、最近尿にたんぱくが出た方、糖尿病の治療で不安がある方は、早めに専門的な評価を受けることで将来の腎臓を守ることができます

尾張旭市・瀬戸市で糖尿病や腎臓のことに不安がある方は、ご相談ください

【免責事項】

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個々の診断や治療方針を保証するものではありません。
実際の検査内容や受診の必要性は、年齢・症状・既往歴などによって異なります。
健診異常や体調の変化がある場合は、必ず医師の診察を受け、個別にご相談ください。