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腎臓を守るために、今できること
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Kidney Protection / Lifestyle

腎臓を守るために、今できること 食事・減塩・運動・血圧の整えかた

腎臓は、傷んでいる間もほとんど声を上げません。だからこそ「何をすればいいのか」を先に知っておくことに意味があります。腎臓専門医が、今日から実行できることと、数値の目標を具体的にお伝えします。

健診でeGFR低下・尿たんぱく陽性を指摘された方 糖尿病・高血圧を長く治療中の方 腎臓病と言われたが何をすればいいかわからない方

Why Kidneys Matter

腎臓が「静かに壊れる」理由

腎臓は一度機能が失われると、基本的に元には戻りません。しかも、腎機能が半分以下に低下しても自覚症状がほとんど現れないことが多く、「気づいたときには透析が必要な段階だった」というケースが後を絶ちません。

腎臓の働きは、老廃物のろ過・水分バランスの調整・血圧の調整・骨を守るビタミンDの活性化など、全身に影響するものばかりです。腎機能が低下すると、心臓病・脳卒中・骨折・貧血のリスクも同時に高まります。慢性腎臓病(CKD)そのものの定義・症状・原因については、慢性腎臓病(CKD)とは?腎臓専門医が詳しく解説をご覧ください。このページでは、その先の「では、どうするか」に絞ってお話しします。

⚠️
日本では現在、成人の約5人に1人(約2,000万人)が慢性腎臓病(CKD)と推定されています。その多くは自覚症状がなく、健診を受けてはじめて気づきます。(日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』)

Early Detection

「早く気づく」ことに、なぜ意味があるのか

慢性腎臓病の重症度は、腎機能の指標であるeGFRによるG分類(G1〜G5)と、尿たんぱく・尿アルブミンによるA分類(A1〜A3)を組み合わせて判定します。ただし、ここで大切なのは分類そのものを覚えることではありません。ご自身が「まだ手を打てる段階」にいるのかどうか——この一点です。

G1・G2
eGFR 60以上
腎機能の数値そのものは保たれていますが、尿たんぱくなどの異常が3か月以上続けばCKDと診断されます。自覚症状はほとんどなく、健診でしか見つかりません。生活習慣病を管理することで、進行を大きく遅らせられる可能性がもっとも高い段階です。
G3a・G3b
eGFR 30〜59
腎機能の低下が数値としてはっきりし、心筋梗塞・脳卒中のリスクも高まります。当院がもっとも力を入れる段階で、生活習慣の見直しに加えて、腎保護効果が示されている薬剤の適応をお一人ずつ検討していきます。
G4・G5
eGFR 30未満
貧血・骨代謝・電解質などの合併症管理が必要になり、腎代替療法(透析・腎移植)を見据えた準備の段階に入ります。当院では、透析・移植に対応できる提携病院へ適切なタイミングでご紹介し、その後も連携して診てまいります。
💡
健診で「eGFR低下」「尿たんぱく陽性」を指摘されたら
一度の検査だけで判断するのではなく、3か月以上持続するかどうかを確認することが診断の基本です。「1回だけ異常だったから大丈夫」とは言えません。再検査・精密検査を受けることが重要です。

Risk Factors

腎臓を傷める主な原因

透析が必要になる原因として多いのは、糖尿病性腎症・腎硬化症(高血圧による)・慢性糸球体腎炎の3つです。上位2つはいずれも生活習慣病が背景にあり、日々の血糖・血圧の管理が、そのまま腎臓を守る治療になります。

透析導入原因 第1位

糖尿病性腎症

高血糖が腎臓の細い血管を傷め、尿アルブミンの増加やeGFRの低下として現れます。血糖管理に加えて、腎保護作用をもつ薬剤の併用を検討します。

透析導入原因 第2位

腎硬化症(高血圧)

高い血圧が続くことで腎臓の血管が硬くなり、ろ過機能が少しずつ失われていきます。降圧薬の選択と、家庭血圧の把握が管理の中心になります。

透析導入原因 第3位

慢性糸球体腎炎

IgA腎症などが代表で、血尿・たんぱく尿が手がかりになります。生活習慣病とは治療方針が異なり、専門的な精査が前提となります。

このほか、脂質異常症高尿酸血症、加齢、鎮痛薬などによる薬剤性腎障害、多発性嚢胞腎といった原因もあります。それぞれの病態や症状の詳しい解説は慢性腎臓病(CKD)とは?をご覧ください。

生活習慣病から透析へ至る流れ、そして断ち切るために
原因
高血圧
糖尿病
脂質異常症
長年の血管ダメージ
進行
慢性腎臓病
(CKD)
自覚症状なし
末期腎不全
腎代替療法
(透析・腎移植)
生活への影響が大きい
早期介入で、この流れを断ち切る
目指すこと
生活習慣病の管理+早期発見で
腎機能の低下を遅らせる
透析が必要な時期を、できる限り先へ

What You Can Do Today

腎臓を守るために、今日からできること

腎臓病の進行を遅らせるには、医療機関での治療と並行して、日々の生活習慣の改善が欠かせません。「完璧にやらなければ」ではなく、できることから一つずつ始めることが大切です。

🧂

減塩を習慣にする

  • 味噌汁は1日1杯まで、薄味を心がける
  • 醤油・ソース・ドレッシングは「かける」より「つける」
  • 加工食品・インスタント食品の頻度を減らす
  • 外食時は汁を残す習慣をつける
目標:1日6g未満/高齢の方・食事量が少ない方は、無理のない目標から始めます
→ おいしく減塩!1日6g未満で血圧と腎臓を守る実践ガイド
🥗

食事内容を見直す

  • 野菜・海藻・きのこ類を毎食取り入れる
  • 精製糖質(白米・白パン・甘い飲料)の量を意識する
  • たんぱく質の摂りすぎに注意(腎機能低下がある場合は特に重要)
  • ご高齢の方は、筋力を保つために制限しすぎないことも大切
たんぱく質制限が必要かどうかは、ステージと年齢によって異なります
→ 食事療法・運動療法の基本|続けられる治療のために
🚶

適度な運動を続ける

  • ウォーキングなど有酸素運動を週150分以上
  • 激しい運動より「毎日続けられる強度」を優先
  • 腎機能が高度に低下している場合は運動強度の相談を
  • 血圧・血糖の改善にも有効
目標:1日30分・週5日の有酸素運動
💧

水分を適切に摂る

  • 腎機能が低下している方・むくみや心不全のある方は、自己判断で水分量を増やさない
  • 特別な制限がなければ、水・お茶をこまめに摂る
  • 清涼飲料水・スポーツドリンクは糖分が多く注意が必要
  • 尿路結石・高尿酸血症の予防には水分が有効
適量は腎機能や心臓の状態によって異なります。受診時にご確認ください
🩺

定期検査を欠かさない

  • 年1回以上の健診で血液・尿検査を受ける
  • eGFR・クレアチニン・尿たんぱくを毎回確認する
  • 異常を指摘されたら「様子を見ない」で受診する
  • 治療中の方は処方された薬を自己中断しない
症状がなくても定期的な数値の確認が最大の早期発見策
→ 健診で腎機能・尿の異常を指摘されたら
🚭

生活習慣を整える

  • 禁煙:喫煙はCKDの進行を加速させる独立したリスク因子
  • 節酒:アルコールは血圧上昇・痛風発作にも影響
  • 睡眠:7時間前後を目標に。睡眠時無呼吸症候群の合併にも注意
  • ストレス管理:血圧上昇・血糖悪化につながる
禁煙は腎臓にとって最も効果的な生活改善の一つ
生活習慣の改善だけでは十分でない場合、腎臓を守る目的で処方する薬があります。血圧や血糖の数値とは別に、SGLT2阻害薬ACE阻害薬/ARBフィネレノンといった薬剤が腎機能の低下を抑えることが示されています。これらは「血糖や血圧が良くなったから不要」という性質の薬ではありません。自己判断で中止せず、必ずご相談ください。

Treatment Targets

腎臓を守るための管理目標値

生活習慣病の治療において、「どこまで数値を下げるか」は腎機能の状態や年齢によって変わります。以下は目安であり、すべての方に同じ数値が当てはまるわけではありません。合併している病気やステージによって、適用される項目は変わります。個別の目標値は受診時に医師とご確認ください。

管理項目 目標の目安と適用条件 ポイント
血圧 診察室 130/80 mmHg 未満
家庭血圧 125/75 mmHg 未満
尿たんぱくの有無や糖尿病の合併によらず同じ目標です。低血圧症状・腎機能の変化・血清カリウムを見ながら、忍容性を確認して段階的に下げていきます。
HbA1c(血糖) 糖尿病を合併している場合
7.0% 未満
※合併症予防のための目安
低血糖リスクとのバランスが必要です。ご高齢の方や腎機能が低下している方では目標を緩めることがあり、使用中の薬剤の種類によっても調整します。
LDLコレステロール 120 mg/dL 未満
※冠動脈疾患の既往がある場合は100未満
CKDは動脈硬化性疾患の「高リスク」に区分されます。腎機能そのものより、心筋梗塞・脳梗塞を防ぐことが主な目的です。
尿酸 痛風・尿路結石がある場合
6.0 mg/dL 以下
※CKD全般の目標値ではありません
症状のない高尿酸血症に対して尿酸を下げる薬を使い、腎機能の低下を抑えられるかは、現時点で確立していません。薬を使うかどうかは個別に判断します。
たんぱく質 G3a:0.8〜1.0 g/kg/日
G3b以降:0.6〜0.8 g/kg/日
※標準体重あたり
制限が必要になるのはステージが進んでからです。ご高齢の方では、フレイル・サルコペニア(筋力低下)を避けることが優先される場合があり、一律には制限しません。
食塩 6g 未満/日 降圧薬の効きを高め、たんぱく尿を減らす効果も期待できます。ただし高齢の方や食事量が少ない方では、厳しすぎる制限がかえって低栄養を招くため、無理のない目標を設定します。
体重・禁煙 BMI 25 未満/完全禁煙 肥満は腎臓の負担を増やします。喫煙はCKDの進行を早める独立した危険因子で、禁煙は最も効果の大きい介入の一つです。
当院では複数のリスク因子を同時に評価・管理します。「高血圧も糖尿病もある」という方こそ、腎臓専門医のいる当院での一元管理が効果的です。

When To See Us

こんな症状・数値があれば受診を

腎臓は症状が出にくい臓器です。「体調は悪くないから」と検査値の異常を放置してしまうことが、進行のいちばんの原因になります。次のいずれかに当てはまる場合は、一度ご相談ください。

検査値でのサイン

  • eGFRが60未満と指摘された
  • 尿たんぱくが「±」以上、または尿潜血が陽性
  • 血清クレアチニンが以前より上がっている
  • 1年でeGFRが5以上下がっている
  • 健診で「要精密検査」「要再検査」と書かれた

体からのサイン

  • 尿の泡立ちがなかなか消えない日が続く
  • 夜中にトイレへ起きる回数が増えた
  • 足のすね・まぶたがむくむ
  • 疲れやすい、階段で息が切れる(貧血)
  • 尿の色が赤い・茶色い

早めの受診をおすすめする状態

尿の量が急に減った、体重が数日で急に増えむくみが強くなった、横になると息苦しい——こうした変化は、腎機能の急な悪化や心不全の可能性があります。次の定期受診を待たず、早めに医療機関へご連絡ください。

Our Process

当院での受診から管理までの流れ

はじめての受診では、健診結果やお薬手帳をお持ちいただくと話が早く進みます。以下は一般的な流れで、状態によって前後することがあります。

1

問診と現状の確認

これまでの健診結果、服用中のお薬、既往歴、ご家族の腎臓病歴などをうかがいます。市販の鎮痛薬やサプリメントの使用状況も、腎臓には重要な情報です。

2

血液・尿検査による評価

eGFR・クレアチニンに加え、尿たんぱく・尿アルブミン、尿潜血を確認します。必要に応じて腹部エコーで腎臓の形や大きさも評価します。

3

原因の特定と治療方針のご説明

高血圧・糖尿病・脂質異常症といった背景を整理し、現在の状態と目標を図やグラフでお示しします。生活面で優先して取り組むことと、薬で補うことを分けてご提案します。

4

定期受診による長期管理

定期的に検査を行い、腎機能の変化を追いながら治療内容を調整します。数値が改善している場合も、維持・継続が大切です。

5

必要に応じて提携病院へ紹介・連携

腎機能の進行が著しい場合や、透析の準備が必要と判断した場合は、適切なタイミングで提携病院へご紹介します。その後も当院での生活習慣病管理は継続します。

FAQ

よくあるご質問

eGFR50台はCKDのG3aに相当し、腎臓のろ過する力が軽度から中等度に低下している状態です。この段階は、適切な管理によって進行を大きく遅らせられる重要な時期にあたります。決して手遅れではありませんが、「症状がないから放置してよい」という段階でもありません。まずは原因(高血圧・糖尿病など)を評価し、治療方針を立てましょう。
慢性的に低下した腎機能を元の状態に戻すことは、現時点では基本的に困難です。しかし、適切な管理によって「低下のスピードを緩やかにする」ことは十分に可能です。透析が必要になる時期を、できる限り先へ延ばせる可能性があります。進行の速さや治療への反応には個人差が大きいため、「完全な回復」ではなく「現状の維持・緩やかな進行」を目標に、一緒に取り組みましょう。
腎臓への影響が大きく、かつ実行しやすいのは「減塩」です。1日6g未満を目標に、味噌汁・醤油・加工食品・外食の頻度を意識するだけでも効果が期待できます。たんぱく質制限はCKDの進行度や年齢によって必要かどうかが変わりますので、自己判断で始めず、まず医師にご相談ください。
血糖コントロールは非常に重要ですが、それだけでは十分ではありません。血圧管理・脂質管理・減塩・禁煙を組み合わせることで、はじめて腎保護効果が最大化されます。また近年は、SGLT2阻害薬が血糖コントロールとは独立した腎保護効果をもつことが示され、尿アルブミンが続く糖尿病関連腎臓病ではフィネレノンという選択肢も加わり、腎臓を守る治療の幅が広がっています。
ロキソプロフェン・イブプロフェンなどのNSAIDs系鎮痛剤は腎血流を低下させる作用があり、腎機能が低下している方には注意が必要です。短期的な使用であれば大きな問題になりにくいですが、頭痛・腰痛・関節痛で頻繁に服用している場合は主治医にご相談ください。アセトアミノフェン(カロナールなど)は比較的腎臓への影響が少なく、代替となる場合があります。
「水をたくさん飲めば腎臓が洗われる」という考え方は誤りです。腎機能が低下している方や、むくみ・心不全のある方が水分を増やすと、かえって心臓や腎臓に負担がかかります。一方で、脱水も腎機能を悪化させます。適量は腎機能や心臓の状態によって大きく異なりますので、自己判断で増減させず、受診時にご確認ください。

腎臓のことが気になったら、まずご相談ください

「健診の数値が気になっている」「透析にだけはなりたくない」「長年の生活習慣病が腎臓に影響していないか心配」——そんな不安を一人で抱えないでください。腎臓専門医が、現状を丁寧に評価し、今できることを一緒に考えます。

Supervised By

監修・文責

加藤 彰浩 院長
加藤 彰浩(かとう あきひろ)
きたはらやまクリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医 日本腎臓学会 腎臓専門医 日本透析医学会 透析専門医 日本糖尿病協会 登録医 日本医師会認定産業医
大学病院・地域中核病院での長年の勤務を経て開院。腎臓専門医・透析専門医として培った知見をもとに、「透析にならないための医療」を軸に生活習慣病と腎臓病を一貫して管理します。数値の改善だけでなく、患者さんが日常生活を安心して送れることを目標に診療しています。
主な参考資料 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』/日本腎臓学会「慢性腎臓病(CKD)患者の血圧管理に関するステートメント」(2026年6月25日)/日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』/日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』/日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン』/KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of CKD

〈免責事項〉本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別診療の代替にはなりません。症状や検査値には個人差が大きく、必要な検査・治療は年齢・合併症・病期により異なります。実際の診断・治療については、必ず医師の診察を受けてご確認ください。