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急性腎障害(AKI)とは?原因・症状・治療・予防を腎臓内科専門医がわかりやすく解説
急性腎障害(AKI)とは?原因・症状・治療・予防を腎臓内科専門医が解説
急性腎障害(AKI)|腎臓内科専門医が解説

急性腎障害(AKI)とは?
原因・症状・治療・予防
腎臓内科専門医がわかりやすく解説

AKIは、以前は「急性腎不全」と呼ばれていた状態を含む、腎臓の機能が数日〜数週間という短い期間で急激に低下する病気です。多くは適切な治療で回復しますが、対応が遅れると慢性腎臓病(CKD)につながることがあるため、早期発見・早期対応が何より重要です。

以前の呼び名は「急性腎不全」 早期発見で治療の窓が開く 多くは治療で回復 再発・CKD予防の通院が大切
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「急性腎不全」から「急性腎障害(AKI)」へ——なぜ呼び方が変わったのか

AKI(Acute Kidney Injury:急性腎障害)は、何らかの原因によって腎臓の機能が数時間〜数週間という短い期間で急激に低下する状態です。以前は「急性腎不全(ARF)」と呼ばれていましたが、機能が完全に立ち行かなくなる「不全」の段階を待たず、より軽度で早期の腎機能低下からとらえられるように、国際的に「AKI」という名称・診断基準に置き換えられました。

なぜ「早期からとらえる」ことが重要なのか
腎臓の細胞がダメージを受けてから、血液検査の数値(クレアチニン)に変化が現れるまでには数時間〜数日のタイムラグがあります。数値の上昇を待ってから対応するのではなく、尿量の変化やリスクとなる状況(脱水・薬剤の使用など)に早く気づき介入することで、腎臓へのダメージを最小限にできる可能性が高まります。この「早期に手を打てる期間」を逃さないことが、AKI診療で最も大切な考え方です。だからこそ「まだ軽いから様子を見よう」ではなく、早めの受診が大切です。
比較項目 AKI(急性腎障害) CKD(慢性腎臓病)
経過 数時間〜数週間で急激に悪化 数ヶ月〜数年かけてゆっくり進行
回復の可能性 原因を取り除けば回復することが多い 基本的に元の状態には戻らない
主な自覚症状 尿量減少・むくみ・倦怠感など、無症状のことも 初期はほとんど無症状
両者の関係 AKIを起こした方はCKDに移行しやすく、CKDのある方はAKIを起こしやすい(相互にリスクを高め合う関係)
ポイント:AKIとCKDは別の病気ではなく、腎臓の機能低下という一本の線でつながっています。この関係については本記事の後半「治った後も大切なこと」で詳しく解説します。

AKIで起こる症状——気づきにくいサインもあります

AKIの症状は原因や重症度によって幅がありますが、代表的なものは以下の通りです。軽度の場合は自覚症状がほとんどなく、健診の採血で初めて指摘されることも少なくありません。

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再確認:尿がほとんど出ない・息苦しい・意識がおかしい・強いむくみ・高熱と脱水が重なる、といった場合は様子を見ずに医療機関を受診してください。

なぜ腎臓が急に動かなくなるのか——水道のトラブルに例えると

AKIの原因は、腎臓のどこにトラブルが起きているかによって大きく3つに分けられます。水道の仕組みに例えると理解しやすくなります。

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医学的には、この3つを「腎前性」「腎性」「腎後性」と呼びます。最も多い原因は、脱水や出血などによる「腎前性(供給不足タイプ)」です。

腎前性(最も多い)
脱水、熱中症、下痢・嘔吐、出血、心不全など、体全体の血流が低下することで起こります。
腎性
NSAIDs(痛み止め)、一部の抗菌薬、ヨード造影剤など薬剤性のもの、糸球体腎炎、敗血症などで腎臓の組織そのものが傷つきます。
腎後性
前立腺肥大、尿路結石、がんなどにより尿の通り道が塞がれることで起こります。
特にご高齢の方・CKDのある方に知っておいていただきたいこと:薬の飲み合わせ
痛み止め(NSAIDs)、血圧を下げる薬(ACE阻害薬・ARB)、利尿薬の3種類を同時に使うと、腎臓に流れる血流のバランスが崩れやすく、AKIのリスクが高まることが知られています。ある調査では、この3剤を併用している方は2剤までの方に比べてAKIのリスクが約1.3倍、飲み合わせを始めてから間もない時期は特にリスクが高いことが報告されています。市販の痛み止めを長期間使っている場合も注意が必要です。お薬手帳を活用し、お薬の内容を医師・薬剤師と定期的に確認しましょう。
📖 造影剤検査(CT検査など)の際の注意点や薬剤との付き合い方は、ACE阻害薬・ARB(RAS阻害薬)とCKDのページも参考にしてください。

病院ではどんな検査をするの?

AKIが疑われる場合、当院では以下のような流れで原因を調べていきます。院内でできる検査を中心に、必要に応じて専門的な検査へつなぎます。

🩸
血液検査(クレアチニン・電解質など)
腎機能の指標であるクレアチニン値の変化を確認します。カリウムなど電解質のバランスも合わせて確認します。「クレアチニンが急に高いと言われた」場合の詳しい見方は、関連ページで解説しています。
🧪
尿検査
尿の中の蛋白・血液成分などを調べ、腎臓のどの部分にダメージがあるかを推測する手がかりにします。
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超音波検査(エコー)
尿路の詰まり(腎後性の原因)がないかを確認する、負担の少ない重要な検査です。当院でも実施可能です。
🏥
CT検査など(必要時は紹介)
結石やがんなど、より詳しい原因の精査が必要な場合は、CT検査が可能な医療機関へ紹介いたします。
Q
健診でクレアチニンが急に高いと言われました。すぐ受診すべきですか?
前回の数値と比べて明らかな上昇がある場合や、むくみ・尿量減少などの症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。無症状であっても、経過を確認するための採血が必要になることが多いため、まずはご相談ください。

AKIの治療——原因を取り除くことが基本

AKIの治療は、原因に応じたアプローチが基本です。AKIには「AKIそのものを治す薬」はなく、原因を取り除くことが治療の基本になります。以下は代表的な治療法です。

脱水が原因の場合:点滴による補液
不足している水分・塩分を点滴で補い、腎臓への血流を回復させます。
薬剤性が疑われる場合:原因薬の中止
腎臓に負担をかけている可能性のある薬剤(NSAIDsなど)を一時的に中止・調整します。
閉塞が原因の場合:尿路の詰まりの解除
結石や前立腺肥大など、尿の通り道の問題を専門医と連携して解消します。
重症の場合:一時的な透析(血液浄化療法)
体内の水分・電解質・老廃物のバランスが崩れ、保存的な治療で改善が難しい場合には、一時的に透析を行うことがあります。
Q
AKIになると透析になりますか?
多くの場合、原因を取り除き点滴などで全身状態を整えることで腎機能は改善し、透析が不要なまま回復します。重症の場合や保存的な治療で改善が乏しい場合には、一時的な透析が必要になることがありますが、腎機能の回復とともに終了できることがほとんどです。

AKIを防ぐために日常生活でできること

AKIの多くは、日常のちょっとした注意で予防・早期対応が可能です。特に次のポイントを意識してみてください。

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📖 熱中症とAKIの関係については、熱中症とは?症状・予防・応急処置をわかりやすく解説のページも参考にしてください。
Q
水をたくさん飲めばAKIは防げますか?
脱水が原因となるタイプのAKIには、こまめな水分補給が有効です。ただし、心不全や高度の腎機能低下がある方では水分の摂りすぎがかえって負担になることもあるため、持病のある方はご自身に適した水分量を担当医に確認してください。

AKIは「治って終わり」ではありません——AKDという考え方

AKIの治療によって症状や数値が改善しても、それで完全に一区切り、というわけではありません。近年注目されているのが「AKD(Acute Kidney Disease:急性腎臓病)」という考え方です。

AKI
急性の腎機能低下(〜7日)
AKD
腎機能低下が続く移行期(7日〜90日)
回復 または CKD
元の腎機能に戻る、または慢性化(90日以降)

AKIから急に「治った」「治らなかった」の二択になるわけではなく、その間に腎機能がゆっくり回復していく、あるいはそのままCKDへ移行してしまう「移行期間(AKD)」があるという考え方です。一度AKIを起こした方は、見た目の症状や数値が改善した後も、将来的にCKDや心血管病のリスクが高くなることが分かっています。

当院の考え方:当院では、AKIが改善した後も腎機能が元に戻っているか、CKDへ移行していないかを確認するため、必要に応じて定期的な採血・尿検査をご提案しています。早期発見・早期介入・長期フォローという流れは、AKIにおいてもCKD予防の観点からも変わりません。
Q
AKIは完全に元に戻りますか?
原因が早期に取り除かれた場合、腎機能は数日から数週間で元の状態に戻ることが多いです。ただし一度AKIを起こした方は、その後CKDや心血管病のリスクが高くなることが分かっているため、症状が改善した後も腎機能の経過を確認する通院が大切です。

医療従事者・詳しく知りたい方向け

ここから先は、国際的なガイドライン(KDIGO)に基づいた、やや専門的な内容です。ご興味のある方は開いてご覧ください。

▶ KDIGO診断基準と重症度分類(ステージ分類)
以下のいずれか1つを満たす場合にAKIと診断します(KDIGOガイドライン)
・48時間以内に血清クレアチニン(SCr)が0.3 mg/dL以上上昇
・7日以内にSCrが基礎値の1.5倍以上に増加
・尿量が6時間にわたって0.5 mL/kg/時未満に減少
ステージ血清クレアチニン指標尿量指標
ステージ1基礎値の1.5〜1.9倍 または 0.3 mg/dL以上上昇6〜12時間で0.5 mL/kg/時未満
ステージ2基礎値の2.0〜2.9倍12時間以上で0.5 mL/kg/時未満
ステージ3基礎値の3.0倍以上 または 4.0 mg/dL以上上昇 または 腎代替療法の開始24時間以上で0.3 mL/kg/時未満 または12時間以上の無尿
重症度(ステージ)が上がるほど、生命予後にも影響することが知られています。
▶ 腎前性・腎性の鑑別ポイント(尿所見)
項目腎前性(機能は保たれている)腎性(組織が障害されている)
尿比重1.020超(濃縮能あり)1.010未満
尿浸透圧500 mOsm/L超350 mOsm/L未満
尿中Na濃度20 mEq/L未満40 mEq/L超
FENa(Na排泄分数)1%未満2%超
利尿薬使用後はNa排泄量を指標にできない点に注意が必要です。まず超音波検査で腎後性(閉塞)を除外することが第一歩となります。
▶ 造影剤腎症(CI-AKI)の予防について
💉
等張性・低浸透圧性のヨード造影剤の選択と輸液
リスクのある患者には、等張性または低浸透圧性のヨード造影剤を選択し、等張性の輸液による細胞外液量の確保を行うことが推奨されています。経口摂取のみでの予防や、予防目的の利尿薬投与は推奨されていません。

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参考文献

ガイドライン
  1. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney Int Suppl. 2012;2:1–138.
  2. 日本腎臓学会編. AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016. 東京医学社, 2016.
関連論文
  1. Chawla LS, et al. Acute kidney disease and renal recovery: consensus report of the Acute Disease Quality Initiative (ADQI) 16 Workgroup. Nat Rev Nephrol. 2017;13(4):241–257.
  2. Lapi F, et al. Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ. 2013;346:e8525.
免責事項:本ページは医学的情報の理解促進を目的とした教育的コンテンツです。個別の症状・体調に関するご判断は必ず医療機関にご相談ください。掲載情報は作成時点の知見に基づいており、最新のガイドライン等を優先してください。

監修・文責:加藤 彰浩(院長)|腎臓内科専門医・総合内科専門医|きたはらやまクリニック(尾張旭市)
最終更新:2026年7月/本ページの内容は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療方針については担当医にご相談ください。