急性腎障害(AKI)とは?
原因・症状・治療・予防を
腎臓内科専門医がわかりやすく解説
AKIは、以前は「急性腎不全」と呼ばれていた状態を含む、腎臓の機能が数日〜数週間という短い期間で急激に低下する病気です。多くは適切な治療で回復しますが、対応が遅れると慢性腎臓病(CKD)につながることがあるため、早期発見・早期対応が何より重要です。
「急性腎不全」から「急性腎障害(AKI)」へ——なぜ呼び方が変わったのか
AKI(Acute Kidney Injury:急性腎障害)は、何らかの原因によって腎臓の機能が数時間〜数週間という短い期間で急激に低下する状態です。以前は「急性腎不全(ARF)」と呼ばれていましたが、機能が完全に立ち行かなくなる「不全」の段階を待たず、より軽度で早期の腎機能低下からとらえられるように、国際的に「AKI」という名称・診断基準に置き換えられました。
| 比較項目 | AKI(急性腎障害) | CKD(慢性腎臓病) |
|---|---|---|
| 経過 | 数時間〜数週間で急激に悪化 | 数ヶ月〜数年かけてゆっくり進行 |
| 回復の可能性 | 原因を取り除けば回復することが多い | 基本的に元の状態には戻らない |
| 主な自覚症状 | 尿量減少・むくみ・倦怠感など、無症状のことも | 初期はほとんど無症状 |
| 両者の関係 | AKIを起こした方はCKDに移行しやすく、CKDのある方はAKIを起こしやすい(相互にリスクを高め合う関係) | |
AKIで起こる症状——気づきにくいサインもあります
AKIの症状は原因や重症度によって幅がありますが、代表的なものは以下の通りです。軽度の場合は自覚症状がほとんどなく、健診の採血で初めて指摘されることも少なくありません。
なぜ腎臓が急に動かなくなるのか——水道のトラブルに例えると
AKIの原因は、腎臓のどこにトラブルが起きているかによって大きく3つに分けられます。水道の仕組みに例えると理解しやすくなります。
医学的には、この3つを「腎前性」「腎性」「腎後性」と呼びます。最も多い原因は、脱水や出血などによる「腎前性(供給不足タイプ)」です。
病院ではどんな検査をするの?
AKIが疑われる場合、当院では以下のような流れで原因を調べていきます。院内でできる検査を中心に、必要に応じて専門的な検査へつなぎます。
AKIの治療——原因を取り除くことが基本
AKIの治療は、原因に応じたアプローチが基本です。AKIには「AKIそのものを治す薬」はなく、原因を取り除くことが治療の基本になります。以下は代表的な治療法です。
AKIを防ぐために日常生活でできること
AKIの多くは、日常のちょっとした注意で予防・早期対応が可能です。特に次のポイントを意識してみてください。
AKIは「治って終わり」ではありません——AKDという考え方
AKIの治療によって症状や数値が改善しても、それで完全に一区切り、というわけではありません。近年注目されているのが「AKD(Acute Kidney Disease:急性腎臓病)」という考え方です。
AKIから急に「治った」「治らなかった」の二択になるわけではなく、その間に腎機能がゆっくり回復していく、あるいはそのままCKDへ移行してしまう「移行期間(AKD)」があるという考え方です。一度AKIを起こした方は、見た目の症状や数値が改善した後も、将来的にCKDや心血管病のリスクが高くなることが分かっています。
医療従事者・詳しく知りたい方向け
ここから先は、国際的なガイドライン(KDIGO)に基づいた、やや専門的な内容です。ご興味のある方は開いてご覧ください。
▶ KDIGO診断基準と重症度分類(ステージ分類)
・7日以内にSCrが基礎値の1.5倍以上に増加
・尿量が6時間にわたって0.5 mL/kg/時未満に減少
| ステージ | 血清クレアチニン指標 | 尿量指標 |
|---|---|---|
| ステージ1 | 基礎値の1.5〜1.9倍 または 0.3 mg/dL以上上昇 | 6〜12時間で0.5 mL/kg/時未満 |
| ステージ2 | 基礎値の2.0〜2.9倍 | 12時間以上で0.5 mL/kg/時未満 |
| ステージ3 | 基礎値の3.0倍以上 または 4.0 mg/dL以上上昇 または 腎代替療法の開始 | 24時間以上で0.3 mL/kg/時未満 または12時間以上の無尿 |
▶ 腎前性・腎性の鑑別ポイント(尿所見)
| 項目 | 腎前性(機能は保たれている) | 腎性(組織が障害されている) |
|---|---|---|
| 尿比重 | 1.020超(濃縮能あり) | 1.010未満 |
| 尿浸透圧 | 500 mOsm/L超 | 350 mOsm/L未満 |
| 尿中Na濃度 | 20 mEq/L未満 | 40 mEq/L超 |
| FENa(Na排泄分数) | 1%未満 | 2%超 |
▶ 造影剤腎症(CI-AKI)の予防について
腎臓内科専門医によるご相談はこちら
- ・「健診でクレアチニンが急に高いと言われた」
- ・「以前AKIと言われたあと、腎機能が元に戻ったか確認したい」
- ・「尿量が減った・むくみが気になる」
- ・「以前AKIと言われたことがあり、腎臓が心配」
参考文献
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney Int Suppl. 2012;2:1–138.
- 日本腎臓学会編. AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016. 東京医学社, 2016.
- Chawla LS, et al. Acute kidney disease and renal recovery: consensus report of the Acute Disease Quality Initiative (ADQI) 16 Workgroup. Nat Rev Nephrol. 2017;13(4):241–257.
- Lapi F, et al. Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ. 2013;346:e8525.
監修・文責:加藤 彰浩(院長)|腎臓内科専門医・総合内科専門医|きたはらやまクリニック(尾張旭市)
最終更新:2026年7月/本ページの内容は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療方針については担当医にご相談ください。
