熱中症を正しく知る・防ぐ・対処する
熱中症ガイドライン2024年版に基づき、症状の見分け方から応急処置・水分補給の正しい知識まで解説します
体の「冷却システム」が限界を超えた状態
私たちの体は、運動や気温上昇で体温が上がると、汗をかいたり、皮膚から熱を逃がしたりして体温を一定に保っています。
しかし、高温多湿の環境や激しい運動で水分・塩分(ナトリウム)が大量に失われると、この体温調節機能が破綻します。その結果、体温が急上昇し、放置すれば複数の臓器が同時に機能しなくなり、命に関わることがある重篤な全身疾患です。
こんな環境・こんな方は要注意
熱中症は「環境」「からだの状態」「行動」の3つが重なるときに発症リスクが急上昇します。特に梅雨明け直後は体が暑さに慣れておらず、リスクが最大化します。
今日からできる熱中症予防
熱中症は適切な対策で防げる病気です。特別なことは必要ありません。4つのポイントを日常に取り入れましょう。
熱中症の重症度は4段階(2024年版)
2024年の改訂により、最重症例を「IV度」として独立させました。意識の状態が最重要な判断ポイントです。[文献1]
意識は正常
自力で水分が取れない場合も
点滴での補液
高度の意識障害
深部体温40℃以上+重い意識障害
積極的な冷却(Active Cooling)開始
※救急待機中:全身に冷水をかけ、首・脇・鼠径部に氷嚢を当てる
まず何をすべきか
判断の最重要ポイントは「意識があるかどうか」です。
意識を確認する
ためらわずすぐ救急車(119番)を呼んでください。II〜IV度の可能性があります。
涼しい場所に移動・体を冷やす
エアコンの効いた室内や日陰へ。衣服を緩めて、首・脇・足の付け根を冷やします(受動的冷却/Passive Cooling)。
自力で飲めるなら水分・塩分を補給
経口補水液(ORS)が最適です。飲めない・意識が怪しい場合は無理に飲ませないでください(誤嚥の危険)。
自力で水分を取れない=II度以上の可能性が高い。医療機関での点滴補液が必要です。
安静にして症状の変化を見る
引き続き安静にして、翌日以降も無理な活動は避けましょう。
速やかに医療機関を受診してください。
経口補水液(ORS)の正しい使い方
経口補水液は「飲む点滴」とも呼ばれ、水分と電解質(ナトリウム)を最速で吸収できるよう設計されています。熱中症が疑われる時には非常に有効ですが、普段から水代わりに飲み続けるものではありません。正しい場面で使うことが大切です。
✓ こんな時に使う
- 激しい発汗を伴う運動・作業後
- こむら返り・めまいが出た時
- 食欲低下で食事が摂れず脱水気味の時
✕ こんな使い方はNG
- 毎日の「予防」として飲み続ける
- 通常の食事をしながら水代わりに飲む
- 高血圧・腎臓病の方が無断で常用する
暑さ指数(WBGT)を参考に行動を
気温だけでなく湿度が圧倒的に重要です。湿度が高いと汗が蒸発できず、体に熱がこもります。WBGTは「湿度7:輻射熱2:気温1」で計算されます。[文献2,5]
外出を避け、涼しい室内へ。高齢者は安静時でも危険。運動は原則中止。
炎天下の外出を避ける。激しい運動は中止。室内の温度上昇にも注意。
定期的な休息と水分補給を。中等度以上の活動でリスクあり。
一般的には危険性は低いが、激しい運動・重労働時には注意。
腎臓病・高血圧の方へ
腎臓内科専門医として、特に当院に通院中の患者様にお伝えしたい注意点があります。
腎臓内科専門医からの注意事項
きたはらやまクリニック 院長
⚠️ 高血圧の方:経口補水液の塩分に注意
経口補水液1本(500ml)には約1.5gの塩分が含まれます。日常的に飲み続けると血圧コントロールが乱れる可能性があります。自己判断での常用はせず、ご相談ください。
腎臓病と高血圧の関係について詳しく⚠️ 利尿薬を服用中の方
利尿薬はもともと体内の水分・ナトリウムを排出する薬です。夏場は脱水リスクが高まりますので、暑い日の服薬継続については事前にご相談ください。
降圧薬(ACE阻害薬・ARB)について詳しく💡 CKD・糖尿病の方はハイリスク群
腎機能が低下していると体温調節能も落ちやすく、熱中症になりやすい傾向があります。WBGT「警戒」以上の日は屋外活動を控え、エアコンを積極的に使用してください。
腎臓病のステージと進行について詳しく💡 高齢の方:のどの渇きを感じにくい
加齢とともに口渇感が低下するため、「のどが渇いてから飲む」では遅い場合があります。時間を決めて、こまめに水分補給する習慣をつけましょう。
今夏、覚えておきたい3つのポイント
熱中症についてよくあるご質問
軽症であれば内科・かかりつけ医で対応できます。頭痛・嘔吐・意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、点滴補液が必要なことが多いため、内科を受診してください。意識がない・呼びかけに反応しない場合は迷わず救急車(119番)を呼んでください。当院(きたはらやまクリニック)でも熱中症に伴う脱水や腎機能の変化についてご相談いただけます。
当院の内科診療について最大の違いは塩分(ナトリウム)濃度です。経口補水液は500mlあたり約1.5gの塩分が含まれ、腸管での水分・塩分の吸収を最速にするよう設計されています。一方、スポーツドリンクは500mlあたり約0.5〜0.6g程度と塩分が少なく糖分が多いため、吸収速度は劣ります。脱水・熱中症の初期対応には経口補水液が適していますが、塩分が多い分、日常的な水分補給や高血圧の方には向きません。
I度(軽症)で安静・水分補給後に完全に回復した場合は、必ずしも受診は必須ではありません。ただし、高齢の方・腎臓病・糖尿病・高血圧の持病がある方は、熱中症後に腎機能の一時的な悪化(急性腎障害)が起こることがあります。「翌日は元気だけど心配」という場合はお気軽にご相談ください。
避けてください。アルコールには利尿作用があり、体内の水分をさらに失わせます。熱中症後はすでに脱水状態にあるため、飲酒によって症状が悪化したり、翌日に回復が遅れたりすることがあります。症状が完全に回復し、十分な水分補給ができてから再開するようにしましょう。
本ページの作成にあたり参照した資料
- 日本救急医学会 熱中症および低体温症に関する委員会.熱中症診療ガイドライン2024.日本救急医学会;2024. [重症度分類・IV度新設・Active Cooling の根拠]
- 環境省.熱中症予防情報サイト.2024年版. [WBGT算出方法・予防行動の根拠]
- 総務省消防庁.令和5年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況.2023. [住宅内発症約4割・高齢者では半数超のデータの根拠]
- 日本高血圧学会.夏季の熱中症と高血圧・降圧薬に関する声明.2023. [ORS常用の注意・高血圧患者における水分・塩分摂取の注意点]
- 日本スポーツ協会.熱中症予防運動指針. [WBGT区分(危険・厳重警戒・警戒・注意)・運動中止基準・暑熱順化の根拠]
※ 経口補水液の塩分含有量(500mlあたり約1.5g)は大塚製薬工場 OS-1製品規格に基づきます。
監修・文責:院長|腎臓内科専門医・総合内科専門医|きたはらやまクリニック(尾張旭市)
最終更新:2026年6月/本ページは熱中症診療ガイドライン2024年版をもとに作成しています。医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療方針については担当医にご相談ください。
きたはらやまクリニック|愛知県尾張旭市
