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血尿・尿潜血陽性の原因と受診の目安
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Hematuria

血尿(尿に血が混じる)とは 原因・腎臓由来と尿路由来の見分け方・受診先の選び方

尿が赤い、茶色い。あるいは健診で「尿潜血陽性」と言われた。血尿には、心配のいらない一時的なものから、早く見つけるべき病気のサインまでが含まれます。共通して言えるのは、色や量、痛みの有無だけでご自身で判断することはできない、ということです。腎臓専門医が、何を手がかりにどこへ相談すればよいかをご説明します。

目で見て赤い尿が出た方 健診で尿潜血を指摘された方 何科に行けばよいか迷っている方

Definition

血尿とは何か

血尿(けつにょう)とは、尿の中に赤血球が混じっている状態をいいます。「尿に血が混じる」「おしっこに血が出る」と表現されることもありますが、医学的にはすべて同じものを指しています。

血尿は、見た目で分かるかどうかで大きく2つに分けられます。この区別は言葉の違いにとどまらず、そのあと何をすべきかが変わってくる、実務的に重要な分かれ道です。

肉眼的血尿(にくがんてきけつにょう)

目で見て尿の色が変わっていると分かる状態です。『血尿診断ガイドライン2023』では、尿が鮮紅色から暗赤褐色を呈し、尿1L中に血液1mL以上を含むものと定義されました。裏を返せば、1Lの尿にわずか1mLの血液が混じるだけで、目に見えるほど色がつくということです。「これだけ赤いのだから大量に出血しているのでは」と不安になる方が多いのですが、色の濃さと出血量は比例しません。

顕微鏡的血尿(けんびきょうてきけつにょう)

見た目は普通の尿でも、顕微鏡で調べると赤血球が基準以上に見つかる状態です。同ガイドラインでは、尿沈渣で400倍1視野あたり赤血球5個以上(5個/HPF以上)、遠心操作をしない尿での測定では尿中赤血球20個/µL以上とされています。健診の尿検査で「尿潜血陽性」と指摘され、そこから見つかることがほとんどです。

海外では、AUA(米国泌尿器科学会)などの指針が3個/HPF以上を血尿としており、日本の基準と異なります。これは基準の甘い・厳しいの問題ではなく、尿沈渣の標本の作り方や測定方法の条件が国内外で異なることが理由として挙げられています。この点を踏まえ、2023年の改訂でも日本の定義は変更されていません。
腎臓(糸球体) 腎盂・尿管 膀胱 尿道 糸球体性血尿 腎臓のフィルターからの出血 褐色・コーラ色になりやすい たんぱく尿を伴うことが多い 赤血球円柱が出ることがある 非糸球体性血尿 尿の通り道からの出血 鮮紅色になりやすい 血の塊が混じることがある 排尿の症状を伴うことがある ※位置関係を整理するための模式図です
血尿が「どこから出ているか」によって、考えられる原因も、相談すべき診療科も変わります。腎臓のフィルターである糸球体からの出血を糸球体性血尿、腎盂から尿道までの尿の通り道からの出血を非糸球体性血尿と呼びます。なお、この図は位置関係を整理するための模式図であり、実際の臓器の形や大きさを描いたものではありません。

もうひとつ、混同されやすい点があります。健診で使われる尿試験紙の「尿潜血」は、赤血球そのものを数えているわけではありません。そのため、尿潜血が陽性でも血尿ではない場合があり、逆のこともあります。詳しくは「健診で尿潜血陽性と言われたら」でご説明します。

Gross Hematuria

目で見て赤い尿が出たら

目で見て分かる血尿は、痛みがなくても、1回で消えても、必ず検査を受けてください。このページで最もお伝えしたいのはこの一点です。

肉眼的血尿で受診が遅れる典型的なパターンが2つあります。ひとつは「痛くなかったから」、もうひとつは「1回だけで、次の日には元に戻ったから」です。どちらも、受診しない理由にはなりません。

痛みを伴わない肉眼的血尿は、尿路の悪性腫瘍で最初に現れるサインであることがあります。腫瘍からの出血は持続せず、いったん自然に止まることが珍しくありません。つまり「色が元に戻った」ことは、原因がなくなったことを意味しません。数か月後に再び出て、そのときには進行していた、という経過は実際にあります。特に年齢が高い方、喫煙されている方(過去の喫煙を含みます)では、この可能性を優先して考える必要があります。

色調は、受診先の見当をつける手がかりになります

血尿の色は、出血している場所によって傾向が異なります。これは「大丈夫かどうか」を判断するためのものではなく、どの診療科に相談するのが早いかを考えるための手がかりです。

褐色・コーラ色・ウーロン茶色

腎臓の糸球体からの出血で見られやすい色調です。赤血球が腎臓から尿路を通る間に変化するためと考えられています。かぜやのどの痛みのあとに出た場合、腎炎が背景にあることがあります。むくみ、血圧の上昇、尿の泡立ちを伴うときは特に腎臓側の評価が必要です。ただし、腎臓側の評価を優先するということは、尿路側を調べなくてよいという意味ではありません。

腎臓内科の評価を優先

鮮やかな赤色・血の塊が混じる

尿の通り道からの出血で見られやすい色調です。血の塊(凝血塊)が混じる場合は、ある程度まとまった量の出血が尿路で起きていることを示します。排尿時の痛みや頻尿を伴わず、痛みもなく赤い尿が出た場合は、泌尿器科での精査の優先度が高くなります。

泌尿器科へ

薄いピンク色・判断がつかない

色の見え方は照明や便器の水の量にも左右され、画面ごとの発色の違いもあります。判断がつかないことのほうがむしろ普通です。迷われた場合は当院で結構です。尿検査と血液検査で腎臓側の評価を行い、尿路側の精査が必要と判断すれば泌尿器科へご紹介します。

まずは当院へ
色調はあくまで傾向であり、例外もあります。「褐色だから腎臓、鮮紅色だから尿路」と確定できるものではありません。また、これは受診先を決定するものではなく、優先順位をつけるための手がかりです。腎臓の病気が疑われる場合でも、年齢や喫煙歴によっては尿路側の評価を並行して行う必要があります。色で受診先の見当をつけていただくのは構いませんが、色で「受診しなくてよい」と判断することだけは避けてください。

赤い尿が、すべて血尿とは限りません

尿が赤褐色に見え、試験紙の潜血反応も陽性になるのに、赤血球は出ていないという状態があります。筋肉の成分が尿に出るミオグロビン尿と、血管内で赤血球が壊れて起こるヘモグロビン尿です。これらは血尿とは対応が異なるため、区別する必要があります。

区別の方法のひとつが、尿を遠心して上澄みの色を見ることです。赤血球が保たれている血尿では赤血球が沈み、上澄みは淡い黄色になります。一方、ミオグロビン尿やヘモグロビン尿では上澄みの赤褐色が残ります。ただし、尿の濃さやpHによっては赤血球が壊れていることもあるため、この方法だけで確定することはできません。また、外来ですぐに遠心操作ができるとは限らないため、実際には赤い尿はいったん血尿として扱い、検査で確かめていく流れになります。このほか、一部の食品や薬の色素で尿が赤みを帯びることもあります。

次の場合は、至急受診してください

38度以上の発熱と、腰や背中の痛みを伴う血尿。尿がほとんど出ない、または全く出ない。強い痛みで動けない。血の塊で尿が出にくい。これらは腎盂腎炎や尿路の閉塞など、その日のうちに対応が必要な状態の可能性があります。診療時間内であれば当院へご連絡ください。夜間・休日であれば救急外来を受診してください。

Urine Dipstick

健診で「尿潜血陽性」と言われたら

健診の尿検査で使われるのは、試験紙を尿に浸して色の変化を見る方法です。手軽で結果も早い反面、原理上の限界があります。ここを知っておくと、次に何をすべきかが見えてきます。

試験紙が反応しているのは、赤血球そのものではなく、赤血球に含まれるヘモグロビンの働きです。したがって、赤血球がなくてもヘモグロビンやそれに似た物質があれば反応しますし、逆に反応を邪魔する物質があれば赤血球があっても出にくくなります。

起こりうること主な要因
偽陽性赤血球がないのに陽性 ミオグロビン尿・ヘモグロビン尿/月経血の混入/精液の混入/ポビドンヨードなどの消毒薬の混入/脱水/激しい運動のあと
偽陰性赤血球があるのに陰性 ビタミンC(アスコルビン酸)の多量摂取
沈渣で少なく出る試験紙は陽性なのに赤血球が少ない 尿が薄いと赤血球が壊れやすく、顕微鏡で数えられる赤血球が実際より少なくなることがあります。試験紙は壊れた赤血球にも反応するため、両者の結果が食い違うことがあります

だからこそ、尿潜血が陽性だった次のステップは尿沈渣です。顕微鏡で実際に赤血球があるか、いくつあるかを数え、本当に血尿と呼べる状態かを確かめます。ここで初めて、S1でご説明した5個/HPFという基準に当てはめることができます。

(-)
陰性です。ただし前述のとおり、ビタミンCを多く摂った直後などは出にくくなることがあります。他に気になる所見があれば、条件を変えて再検査することがあります。
(±)
判断が難しい境界の領域です。一時的なものであることも多いのですが、繰り返し指摘される場合や尿たんぱくを伴う場合は、尿沈渣で確認しておくのが確実です。
(+)以上
尿沈渣での確認が必要です。1回の結果で腎臓の病気と決まるわけではありませんが、確かめずに放置してよい結果でもありません。

尿の採り方で結果が変わります

尿検査は採り方の影響を受けます。出はじめの尿には外陰部や尿道の成分が混じりやすいため、少し出してから途中の尿を採る中間尿が基本です。女性の場合、月経中やその前後は経血が混じり、実際には血尿がなくても陽性になることがあります。健診の日程が月経と重なった場合は、可能であれば時期をずらすか、その旨を伝えて別日に再検査を受けてください。

激しい運動や性行為の直後の尿も、血尿の評価には適しません。心当たりがあるときは、その旨をお伝えください。また、採尿してから時間が経つと赤血球は壊れていきます。自宅で採った尿を長時間持ち歩くと、正しく評価できないことがあります。検査を受ける当日、医療機関で採尿するのが最も確実です。

Origin

腎臓から出ているのか、尿の通り道からか

血尿の診療で最初に見極めたいのは、出血している場所です。腎臓のフィルターである糸球体からの出血(糸球体性血尿)であれば腎臓の病気を、腎盂から尿道までの尿路からの出血(非糸球体性血尿)であれば結石・感染・腫瘍などを中心に考えます。同じ「血尿」でも、進む道が大きく分かれます。

手がかり何が分かるか
赤血球円柱 腎臓の尿細管の中で作られる円柱状の構造物に赤血球が取り込まれたものです。尿路で作られることはないため、これが見つかれば腎臓の中で出血が起きていることを強く示します。尿沈渣で確認します。
赤血球の形 糸球体を通り抜けた赤血球は形が変わることがあり、糸球体型・非糸球体型として区別されます。ただし形からの推定には限界があり、糸球体型に見えても糸球体以外からの出血であることがあります。尿が薄いときやアルカリ性のときは、典型的な形になりにくいことも知られています。単独で結論を出せる所見ではありません。
たんぱく尿の有無 血尿にたんぱく尿を伴う場合、糸球体の障害を示唆し、腎臓側の精査の優先度が上がります。ただし、1回の尿検査だけで慢性腎臓病と診断できるわけではありません。期間をおいた再検査と腎機能の評価を組み合わせて判断します。
尿の色調 褐色・コーラ色は糸球体性、鮮紅色や凝血塊は非糸球体性で見られやすい傾向があります。あくまで傾向であり、確定材料ではありません。
随伴する症状 排尿時の痛み・頻尿・残尿感は膀胱や尿道の炎症を、発熱と腰背部痛は腎盂腎炎を、突然の激しい脇腹の痛みは尿路結石を示唆します。かぜやのどの痛みに伴って、またはその後に血尿が出た場合は、腎炎を考える手がかりになります。
これらはいずれも「決め手」ではなく「手がかり」です。ひとつの所見だけで出血部位を確定することはできません。複数の情報と、必要に応じた画像検査を組み合わせて絞り込んでいきます。

Causes

血尿が出る原因

血尿の原因は幅広く、そのまま様子を見てよいものから、早急な対応が必要なものまで含まれます。代表的な原因をご説明します。どの原因が多いかは、年齢や性別、そして肉眼的血尿か顕微鏡的血尿かによって大きく変わります。

尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)

細菌が膀胱や腎臓に感染し、粘膜に炎症が起きると、粘膜がもろくなって出血します。これが血尿として現れます。血尿の原因として頻度が高く、特に女性では、尿道が短く細菌が膀胱に達しやすい構造上の理由から膀胱炎を起こしやすいことが知られています。

膀胱炎では、排尿時の痛み、頻尿、残尿感、尿の濁りといった症状を伴うことが典型的です。血尿が目立ち、真っ赤な尿になることもあります。抗菌薬による治療で炎症が治まれば、血尿も消えていくのが一般的な経過です。

腎盂腎炎は、細菌が膀胱から腎臓まで達して起こります。38度以上の発熱と、腰や背中の片側の痛みが特徴です。膀胱炎とは違い、点滴による治療や入院が必要になることもある病気ですので、この組み合わせの症状があれば、その日のうちに受診してください。

「感染が治れば血尿も終わり」とは限りません。治療の何日後に再検査すべきかについて、根拠のある一律の基準はありません。米国のガイドライン(AUA/SUFU 2025)は目安として、原因が治まってから3週間以上あけ、3か月以内に顕微鏡での尿検査を行い、血尿が消えたことを確認するよう示しています。治療後も血尿が残る場合、感染とは別の原因が隠れている可能性があります。「膀胱炎のせいだと思っていた」というまま経過してしまうことを防ぐため、当院では感染の治療後に尿検査での確認をお願いしています。

腎炎(IgA腎症など)

腎臓のフィルターである糸球体に炎症が起きる病気の総称です。日本で最も多い慢性糸球体腎炎はIgA腎症で、健診での顕微鏡的血尿をきっかけに見つかることが少なくありません。

特徴的なのは、かぜをひいたときやのどが痛いときに合わせて、目に見える血尿が出ることがある点です。「風邪をひくと決まって尿が茶色くなる」というエピソードは、腎炎を疑う重要な手がかりになります。感染が治ると尿の色も戻るため、そのたびに見過ごされてしまうことがあります。心当たりがあれば、症状がないときでも一度ご相談ください。

腎炎による血尿は、たんぱく尿を伴うことが多く、放置すると腎機能が少しずつ低下していくことがあります。早い段階で見つけて治療を始められれば、進行を抑えられる可能性が高くなります。

尿路結石

腎臓や尿管にできた結石が粘膜を傷つけ、出血します。典型的には、突然始まる激しい脇腹や背中の痛み(疝痛発作)を伴い、痛みで動けなくなるほどのこともあります。ただし、結石があっても痛みが出ないことはあり、健診の尿潜血だけで見つかる例もあります。「痛くないから結石ではない」とは言えません。

腎臓・尿路の悪性腫瘍

膀胱、腎盂、尿管、腎臓にできた腫瘍から出血することがあります。初期には痛みなどの症状が乏しく、血尿が唯一のサインであることが少なくありません。前述のとおり、腫瘍からの出血はいったん自然に止まることがあるため、「消えたから大丈夫」という判断が最も危険です。

年齢が高いこと、喫煙歴があること(過去に吸っていた方を含みます)、そして肉眼的血尿であること自体が、尿路の悪性腫瘍のリスクを高める要因として知られています。実際の診療では、年齢、性別、喫煙歴、尿中の赤血球数、肉眼的血尿の既往などを組み合わせてリスクの程度を判断します。これらに当てはまる方の痛みを伴わない肉眼的血尿は、泌尿器科での精査を優先すべき状況です。当院で確認したうえで、速やかにご紹介します。

女性に多い原因と、検査上の注意

健診で尿潜血を指摘される頻度は、男性より女性のほうが高いことが知られています。背景には、膀胱炎を起こしやすいことに加え、月経血の混入という検査上の要因があります。月経の時期に採尿すると、腎臓や尿路に問題がなくても陽性になり得ます。

ただし、ここには注意が必要です。「女性だから月経のせいだろう」と片づけてしまうと、本当の血尿を見落とします。時期をずらして再検査し、それでも陽性が続くかどうかを確かめることが、遠回りに見えて確実です。閉経後の方では月経の影響はありませんので、指摘された場合は通常どおり精査の対象となります。

一時的な原因(激しい運動・外傷など)

マラソンなどの激しい運動のあとに、一時的に血尿が出ることがあります。腰や背中を強く打った後にも起こり得ます。これらは時間の経過とともに消えることが多いのですが、「運動したからだろう」と自己判断せず、条件を変えて再検査し、消えていることを確かめてください。

糖尿病と血尿の関係

「糖尿病だから血尿が出るのでは」というご質問をよくいただきます。糖尿病によって腎臓が障害される糖尿病性腎症では、主に現れるのはたんぱく尿(アルブミン尿)であり、血尿が前面に出ることは典型的ではありません。

したがって、糖尿病のある方に目立つ血尿がある場合、糖尿病性腎症だけで説明せず、別の腎臓の病気が合併していないか、あるいは尿路側に原因がないかを検討します。糖尿病があること自体は、血尿の原因を調べなくてよい理由にはなりません。

Treatment

「血尿を止める方法」はありますか

「血尿を止めたい」「血尿を治す方法を知りたい」というご相談は少なくありません。お答えすると、血尿の治療は、血尿そのものではなく原因に応じて行うのが基本です。血尿は病気の名前ではなく、体の中で起きていることの結果として現れるサインだからです。感染症、結石、腎炎、腫瘍のいずれが原因かによって、治療法はまったく異なります。

考え方としては、発熱に近いかもしれません。解熱剤で熱を下げることはできますが、それは熱の原因を治したことにはなりません。血尿も同じで、まず必要なのは原因の特定です。原因が分かって治療が始まれば、結果として血尿は落ち着いていきます。

ただし例外があります。出血の量が多い場合や、血の塊で尿が出にくくなっている場合には、泌尿器科で膀胱にカテーテルを入れて洗浄する、血の塊を取り除く、内視鏡で止血するといった、出血そのものに対する緊急の処置が必要になることがあります。この状態は待てません。尿が出ない、出しにくいときは、その日のうちに受診してください。

血尿に対して、してはいけない対処

  • 水をたくさん飲んで薄める。色は薄くなりますが、出血そのものは変わりません。かえって発見が遅れます。
  • 市販の止血薬などで対処する。原因不明の血尿に対する適切な対処ではなく、原因の特定を遅らせます。
  • 色が元に戻ったことを確認して終わりにする。特に肉眼的血尿では、これが最も危険な判断です。
  • インターネットで調べた症状と照らし合わせて自己診断する。血尿は原因によって対応がまったく異なるため、検査でしか区別できません。

血尿があるときに最も大切なのは、自己判断で止めようとすることではなく、原因を調べることです。原因が良性のものだと分かれば、それが最も確かな安心になります。

Where To Go

何科を受診すればよいですか

血尿は、腎臓を診る内科(腎臓内科)と、尿路を診る泌尿器科の両方にまたがる症状です。そのため「何科に行けばよいか分からない」という状態になりやすく、受診そのものが先送りされてしまうことがあります。目安を整理します。

内科・腎臓内科が適している場合

  • 健診で尿潜血を指摘された(顕微鏡的血尿)
  • 尿たんぱくもあわせて指摘された
  • 褐色・コーラ色の尿が出た
  • かぜやのどの痛みのあとに尿の色が変わった
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症で通院している
  • むくみや血圧の上昇を伴う

泌尿器科が適している場合

  • 痛みを伴わない、鮮やかな赤色の尿が出た
  • 血の塊が混じる
  • 排尿時の痛み・頻尿・残尿感が主な症状
  • 突然の激しい脇腹や背中の痛みがある
  • 年齢が高い、または喫煙歴のある方の肉眼的血尿
  • 過去に尿路結石や膀胱の病気を指摘された

迷われた場合は、まず当院にご相談いただいて構いません。どちらとも判断がつかない状態で受診を先延ばしにするより、一度検査を受けていただくほうがはるかに有益です。当院で評価したうえで、泌尿器科での精査が必要と判断すれば、その場でご紹介します。

当院でできること・できないこと

受診前にご理解いただきたい点として、当院の検査体制を率直にお示しします。当院は内科・腎臓内科であり、泌尿器科の専門的な検査は行っていません。

検査当院での対応
尿検査(試験紙) 院内で実施し、結果は当日中にお伝えします。
尿沈渣・赤血球円柱 外部の検査機関に委託して実施します。赤血球が実際にあるかを確認し、赤血球円柱についても報告を受けています。ただし、円柱が見られなかったことは糸球体からの出血を否定する根拠にはなりません。搬送までの時間の影響も受けるためです。また、赤血球の形態による出血部位の推定は行っていません。前述のとおり形態からの推定には限界があるため、いずれも他の所見と組み合わせて評価します。
尿たんぱく定量・血液検査 尿蛋白/クレアチニン比、腎機能(クレアチニン・eGFR)、炎症の程度を確認し、必要に応じて腎炎に関連する免疫の検査などを行います。
腹部超音波検査 腎臓・膀胱の形、水腎症、明らかな結石や腫瘤などがないかを確認します。膀胱鏡やCT検査の代わりになる検査ではありません。予約制のため、受診当日ではなく別日にお受けいただきます。
膀胱鏡・CT検査 当院では実施していません。必要と判断した場合は、泌尿器科のある医療機関にご紹介します。
肉眼的血尿で、泌尿器科での精査を急ぐべきと判断した場合には、当院での検査を待たずにご紹介することがあります。当院で抱え込んで様子を見ることはいたしません。

受診から診断までの流れ

1

問診と尿検査

尿の色、いつからか、痛みや発熱の有無、これまでの経過、喫煙歴、内服中のお薬などをうかがいます。健診で指摘された方は、結果票をお持ちください。過去の数値と比べられると、判断の精度が大きく上がります。院内で尿検査を行い、結果は当日中にお伝えします。

2

血液検査と尿沈渣で絞り込む

尿沈渣で本当に赤血球があるかを確認し、赤血球円柱の有無を調べます。あわせて腎機能やたんぱく尿の程度、炎症の有無を評価します。院内で行う試験紙の結果は当日お伝えできますが、尿沈渣と血液検査は外部委託のため、結果は後日のご説明になります。この段階で、腎臓側の問題か尿路側の問題かの見当をつけます。

3

方針を決める

腎臓側が疑われる場合は、腹部超音波検査や追加の血液検査を進め、必要に応じて腎臓の精密検査ができる医療機関と連携します。尿路側が疑われる場合は泌尿器科にご紹介します。明らかな原因が見つからなかった場合は、年齢や血尿の程度、これまでの経過を踏まえて、その後の尿検査の要否や間隔をご相談して決めます。

FAQ

よくあるご質問

必要です。目で見て分かる血尿は、1回だけで消えても必ず検査を受けてください。尿路の腫瘍からの出血は持続せず、いったん自然に止まることが珍しくありません。つまり色が元に戻ったことは、原因がなくなったことを意味しません。数か月後に再び出て、そのときには進行していたという経過は実際にあります。1回で消えたからこそ受診が遅れやすいという意味で、むしろ注意が必要な状況です。健診で指摘された顕微鏡的血尿の場合も、1回の結果で決まるわけではありませんが、確かめずに放置してよい結果ではありません。
痛みの有無は、血尿の重大さを判断する材料になりません。むしろ、痛みを伴わない肉眼的血尿は尿路の悪性腫瘍で最初に現れるサインであることがあり、優先して調べるべき状況です。痛みを伴う血尿は、膀胱炎や尿路結石など原因がはっきりしやすい一方、痛みのない血尿は原因が分かりにくく、受診も遅れがちです。痛くないことを安心の材料にはしないでください。
抗血小板薬や抗凝固薬を服用中の方に血尿が出た場合でも、薬のせいと判断して精査を省略することはしません。これらの薬は出血しやすさを高めますが、「薬のせい」と決めつけることはできません。むしろ、背景にある病気からの出血が薬によって表に出てきている可能性があり、服用していない方と同じように原因を調べる必要があります。また、血尿が出たからといって、ご自身の判断で薬を中止しないでください。中止によって脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がることがあります。必ず処方医にご相談ください。
月経中やその前後は経血が混じり、腎臓や尿路に問題がなくても尿潜血が陽性になることがあります。可能であれば時期をずらして検査を受けてください。健診の日程が動かせない場合は、その旨をお伝えいただき、後日あらためて尿検査を受けるのが確実です。なお、月経の可能性があるからといって陽性の結果を無視するのは危険です。時期をずらした再検査で陰性になることを確認して、初めて経血の混入と判断できます。
血尿とたんぱく尿がそろっている場合は、腎臓のフィルターである糸球体に障害が起きている可能性を示唆します。血尿だけの場合と比べて腎臓側の精査の優先度が上がり、糸球体腎炎や慢性腎臓病(CKD)が背景にないかを確認する必要があります。ただし、1回の尿検査だけでCKDと診断されるわけではありません。再検査や腎機能の評価を組み合わせて判断します。健診の結果票をお持ちのうえ、内科または腎臓内科をなるべく早めに受診してください。
感染に伴う血尿は、抗菌薬で炎症が治まるとともに消えていくのが一般的な経過です。ただし、何日で消えるという根拠のある基準はなく、数週間から数か月かかることもあります。米国のガイドライン(AUA/SUFU 2025)は、感染が治まってから3週間以上あけ、3か月以内に顕微鏡での尿検査を行って血尿の消失を確認することを目安として示しています。大切なのは日数を数えることではなく、治療後に実際に消えているかを確かめることです。治療後も血尿が続く場合は、感染とは別の原因が隠れている可能性があるため、あらためて調べる必要があります。
ひととおりの精査で異常がなかった場合、その後に尿検査を行うか、その時期をどうするかは、年齢・喫煙歴・血尿の程度などを踏まえて担当医と相談して決めます。一度の精査で異常がなく、その後の尿検査でも血尿が消えていれば、それ以上の定期的な精査を必要としない場合もあります。一方で、血尿が続く場合や再び増える場合、目で見て分かる血尿が出た場合、排尿に関する新しい症状が出た場合には、あらためて評価が必要です。気になる変化があればご相談ください。

血尿を指摘されたら、原因を確かめておきませんか

血尿は、色や量、痛みの有無ではご自身で判断できません。何ごともないことがはっきりすれば、それが一番の安心になります。尿の試験紙検査は院内で行い、結果は当日中にお伝えします。必要に応じて尿沈渣などの詳しい検査も行います。泌尿器科での精査が必要な場合は速やかにご紹介します。健診の結果票をお持ちください。

Supervised By

監修・文責

加藤 彰浩 院長
加藤 彰浩
きたはらやまクリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医 日本腎臓学会 腎臓専門医 日本透析医学会 透析専門医 日本糖尿病協会 登録医 日本医師会認定産業医
大学病院・地域中核病院での長年の勤務を経て開院。腎臓専門医・透析専門医として培った知見をもとに、「透析にならないための医療」を軸に生活習慣病と腎臓病を一貫して管理します。数値の改善だけでなく、患者さんが日常生活を安心して送れることを目標に診療しています。
主な参考資料 日本腎臓学会・日本泌尿器科学会・日本小児腎臓病学会・日本医学放射線学会・日本臨床検査医学会・日本臨床衛生検査技師会『血尿診断ガイドライン2023』(ライフサイエンス出版)/日本腎臓学会『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』/日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』/KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease/Barocas DA, Lotan Y, Matulewicz RS, et al. Updates to Microhematuria: AUA/SUFU Guideline (2025). J Urol. 2025;213(5):547-557./油野友二,佐藤妃映.血尿の検査方法.臨床泌尿器科.2023;77(9):680-685./American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. 11. Chronic Kidney Disease and Risk Management: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S246-S260.

〈免責事項〉本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別診療の代替にはなりません。症状や検査値には個人差が大きく、必要な検査・治療は年齢・合併症・病期により異なります。実際の診断・治療については、必ず医師の診察を受けてご確認ください。