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GLP-1受容体作動薬(リベルサス)
糖尿病性腎臓病・CKD | 総合内科専門医・腎臓専門医が解説

GLP-1受容体作動薬(リベルサス)とは?
糖尿病性腎臓病での役割
腎臓専門医が解説

「血糖を下げる薬」から、腎臓・心臓にも目を向けた薬へ。GLP-1受容体作動薬は、血糖・体重の改善に加えて、腎臓病の進行や心血管イベントにも多面的にはたらくことが示されつつある、糖尿病性腎臓病(DKD)治療の選択肢の一つです。

FLOW試験:腎悪化・心血管死を含む複合リスク 24%低下 SOUL試験:リベルサス自身でMACE 14%低下 腎臓・心臓・体重に多面的にアプローチ 腎機能低下時も使用できる製剤あり
GLP-1受容体作動薬(代表薬:セマグルチド〔経口薬:リベルサス/注射薬:オゼンピック〕など)は、もともと血糖と体重を管理する薬として使われてきました。しかし近年、大規模臨床試験(FLOW試験)によって糖尿病性腎臓病(DKD)の進行を抑える効果が示され、腎臓・心臓・代謝を多面的に支える薬として位置づけが変わってきています。ただし、どの製剤でどこまで証明されているかは異なります(FLOW試験は注射製剤での結果です)。
🏥 当院について:きたはらやまクリニックでは、GLP-1受容体作動薬のうち主にリベルサス(経口セマグルチド・3mg/7mg/14mg)を用いて治療を行っています。内服薬のため自己注射が不要で、導入しやすいのが特長です。⚠️ はじめにお伝えしたいこと:国内でのリベルサス・オゼンピックの承認された効能・効果は「2型糖尿病」です。「腎臓病の進行抑制」や「心血管イベント予防」が独立した効能として承認されているわけではありません。このページで紹介する臓器保護の知見は、2型糖尿病の治療を行ううえで期待される付加的な効果としてご理解ください。 ※ このページでは専門的な内容も含みますが、患者さんにもわかりやすくなるよう補足説明を付けています。
GLP-1受容体作動薬を一言でいうと
腎臓・心臓・体重の「3つ同時」に
アプローチできる新しいタイプの保護薬です。
✔️
腎不全・eGFRの大幅な低下などを含む複合リスクを下げる
✔️
心筋梗塞・脳卒中・心血管死のリスクを下げる
✔️
体重・血糖・血圧を総合的に改善する
※GLP-1受容体作動薬というグループ全体としての知見です。FLOW試験(注射製剤・N=3,533)、SOUL試験(経口セマグルチド・N=9,650)、メタ解析(Sattar 2021:8試験・60,080例)に基づきます。製剤ごとに得られているエビデンスの内容は異なります。
💡 糖尿病を伴う慢性腎臓病(DKD)の方で、次のような特徴がある場合に対象になる可能性があります
(当てはまる方は担当医にご相談ください)
※主に2型糖尿病を伴う慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病)の方が対象です。糖尿病のない腎臓病(IgA腎症・腎硬化症など)は現時点では適応外となります。
2型糖尿病がある
肥満がある・体重が増えやすい
血糖のコントロールが不十分
心筋梗塞・脳卒中の既往がある
腎機能(eGFR)が低下している
尿アルブミン・尿たんぱくが続いている

「血糖を下げる薬」から「腎臓・心臓も見据えた治療」へのパラダイムシフト

GLP-1受容体作動薬はもともと血糖・体重を管理する薬として使われてきましたが、2024年のFLOW試験によって、腎アウトカムを主要評価項目に据えた大規模試験としては初めて、その改善が示されました(主要評価項目は心血管死を含む複合エンドポイントです)。これにより、血糖を下げるだけでなく、腎臓・心臓・代謝に多面的にはたらく薬として位置づけが見直されつつあります。

24%
主要複合リスク低下
FLOW試験(主要複合エンドポイント)
29%
心血管死リスク低下
FLOW試験(HR 0.71)
21%
複合腎アウトカム低下
メタ解析(8試験・60,080例)
腎臓も
心臓も
体重も同時に改善
代謝・腎・心血管を多面的に保護
図解でわかる
GLP-1受容体作動薬は、腎臓への負担をどこで減らすのか
🍔 肥満・高血糖など 腎臓に負担がかかりはじめる出発点 🔥 炎症・酸化ストレス 血圧や腎臓の血流の乱れも重なります 腎糸球体(ろ過装置)への負担 少しずつ傷んでいきます 📉 腎機能の低下 eGFRの低下・アルブミン尿の増加 💊 GLP-1受容体作動薬 体重・血糖を改善 炎症・酸化ストレス を抑える 腎臓の血流を調整 複数の段階にはたらいて この流れをゆるやかに 上から下へ、時間の経過とともに進んでいきます 💊 GLP-1受容体作動薬 🍔 肥満・高血糖など 腎臓に負担がかかりはじめる出発点 🔥 炎症・酸化ストレス 血圧や腎臓の血流の乱れも重なります 腎糸球体への負担 ろ過装置が少しずつ傷んでいきます 📉 腎機能の低下 eGFRの低下・アルブミン尿の増加 💊 体重・血糖を改善 💊 炎症・酸化ストレスを抑える 💊 腎臓の血流を調整 複数の段階にはたらいて この流れをゆるやかにします 上から下へ、時間の経過とともに進んでいきます

※ 図は理解しやすさを優先した模式図です。GLP-1受容体作動薬の腎保護には、体重・血糖・血圧の改善に加えて、炎症や酸化ストレスの抑制、腎臓の血流への作用など複数の経路が関与すると考えられていますが、ヒトにおける詳しい作用機序には未解明な点も残されています。

「血糖を下げるだけ」ではない——腎臓・心臓・脳への多面的な保護作用

GLP-1受容体作動薬は、小腸から分泌されるホルモン「GLP-1」の作用を模した薬です。膵臓や脳への作用に加え、炎症・酸化ストレスの抑制、血管・内皮機能や腎血行動態への作用など、複数の経路が腎保護に関与すると考えられています。ただし、ヒトにおける直接的な作用機序には未解明な点も残されています。

GLP-1RAの全身への3つの作用
🧠
中枢神経:食欲を抑える
脳の視床下部にあるGLP-1受容体に作用し、満腹感を高めて食欲を抑えます。過食による体重増加・血糖上昇を根本から改善します。
💊
膵臓・胃:血糖を整える
血糖値が高い時だけインスリン分泌を促進し(低血糖を起こしにくい)、胃の排出を遅らせることで食後の血糖急上昇を抑えます。
❤️
心臓・腎臓:炎症・酸化ストレスの抑制
血糖や体重の改善に加えて、炎症や酸化ストレスを抑えるはたらき、腎臓の血流(腎血行動態)への作用などが関与すると考えられています。血糖降下だけでは説明しきれない臓器保護の経路が想定されています。
考えられている腎保護のしくみ
1
血糖・体重・血圧の改善(最も確実な経路
2
腎臓・血管の炎症や酸化ストレスの抑制
3
腎臓の血流(腎血行動態)への作用
4
これらが重なって腎臓の負担が減ると考えられています
▶ 医療従事者向け詳細(専門用語)
想定される経路:細胞内cAMP上昇を介したシグナル伝達、NAD(P)H oxidase活性低下によるスーパーオキシド(O₂⁻)産生抑制、抗炎症・抗線維化作用など。
ただし、ヒトの腎臓におけるGLP-1受容体の分布や直接作用の詳細については未解明の部分が残されており、体重・血糖・血圧・内皮機能の改善を介した間接的な経路の寄与も大きいと考えられています。
フィネレノン・SGLT2阻害薬との違い:GLP-1RAは体重・血糖・代謝の「上流」から改善し、SGLT2阻害薬は血行動態、フィネレノンは炎症スイッチ(MR受容体)にはたらきます。作用の入り口が異なるため、補完的な関係にあると考えられています。

腎臓を守る効果はどのくらい?大規模試験で確認されたデータ

2024年に発表されたFLOW試験は、「腎アウトカムの改善」を主要評価項目として設計された初のGLP-1RA大規模試験です。それ以前のメタ解析(Sattar 2021:8試験・60,080例)でも、腎保護・心血管保護・代謝改善の3分野すべてで一貫した有益性が確認されています。

FLOW試験(主要複合エンドポイント)
24% 腎臓の悪化と心血管死を含む複合リスクが低下
2型糖尿病合併CKD患者3,533例で、注射製剤セマグルチド1.0mgがプラセボ比で腎不全・eGFR 50%以上の持続低下・腎疾患死・心血管死を合わせた複合リスクを24%低下させました(HR 0.76)。※この24%には心血管死が含まれます(主要評価項目イベントの約38%を占めました)。心血管死を除いた腎臓関連項目のみの解析では21%低下(HR 0.79)でした。
※FLOW試験は注射製剤(オゼンピック)で行われた試験です。
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
対象:eGFR 25〜75・UACR 100〜5000の範囲で一定の組入基準を満たす、RAS阻害薬使用中の患者・N=3,533
主要エンドポイント(複合):腎不全・eGFR 50%以上の持続低下・腎疾患死・心血管死
HR 0.76(95%CI 0.66–0.88), p=0.0003
腎臓関連項目のみの複合:HR 0.79(95%CI 0.66–0.94)=21%低下
eGFR低下速度改善:年間 1.16 mL/min/1.73㎡の差
FLOW試験(心血管エンドポイント)
29% 心血管死リスクが低下
同試験で心血管死リスクが29%低下(HR 0.71)。腎臓と心臓の両方に対する有益性が同じ試験のなかで示され、血糖降下にとどまらない重要な治療選択肢であることが示されました。
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
心血管死:HR 0.71
試験はデータ安全性モニタリング委員会の勧告により予定より早く終了(有効性確認のため)
メタ解析(8試験・60,080例 / Sattar 2021)
3つ 腎・心血管・死亡リスクで有益性
複合腎アウトカム(顕性アルブミン尿の新規発症などを含む)−21%、MACE(主要心血管イベント)−14%・全死亡−12%・心不全入院−11%。GLP-1受容体作動薬というグループ全体として、多面的な効果があることを示しました。
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
対象:8つのプラセボ対照RCT・60,080例(T2DM)
複合腎アウトカム(顕性アルブミン尿の新規発症等を含む):−21%
主要心血管イベント(MACE):−14%
全死亡:−12%
心不全入院:−11%
出典:Sattar N, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(10):653–662.
SOUL試験(リベルサス自身のCVアウトカム試験)
14% 主要心血管イベント(MACE)が低下
CVDまたはCKDを合併する2型糖尿病患者9,650例を対象に、経口セマグルチド(リベルサス)そのものを検証した試験です。プラセボ比でMACE(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)を14%有意に低下させました。※上のFLOW試験(腎保護・心血管死29%低下)は注射製剤での結果です。当院で主に用いるリベルサスについては、この心血管保護のエビデンスが直接あります。腎保護効果については、同一の有効成分(セマグルチド)の注射製剤を用いたFLOW試験の知見に基づき期待されるという位置づけです。
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
対象:ASCVDまたはCKDを合併する2型糖尿病患者・N=9,650
主要エンドポイント:MACE(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)
結果:MACEを14%有意に低下(標準治療への上乗せ)
重篤な有害事象の発現率はリベルサス群・プラセボ群でほぼ同程度
SGLT2阻害薬との相乗効果
GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬は作用のしくみが異なるため、組み合わせによる追加の効果が期待されています。ただし、併用そのものの腎保護効果を単独療法と直接比べたランダム化試験のデータはまだ限られています。FLOW試験にはSGLT2阻害薬を併用していた方が550例含まれており、この集団では効果を打ち消す方向の交互作用は認められなかったものの、人数が少なく結論を出すには至っていません(併用群 HR 1.07、95%CI 0.69–1.67/非併用群 HR 0.73、95%CI 0.63–0.85、交互作用 p=0.109)。実際の併用は、血糖・腎機能・心血管リスクなどを踏まえて個別に判断します。

糖尿病性腎臓病の薬物治療を支える「4つの柱」

生活習慣の改善や血圧・脂質の管理を治療の土台として、近年では、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、フィネレノンなどの非ステロイド型MRA、GLP-1受容体作動薬を、作用の異なる「4つの柱」として捉える考え方が広がっています。米国糖尿病学会(ADA)の2026年版ガイドラインでも、2型糖尿病で慢性腎臓病(eGFR 20〜60、あるいはアルブミン尿)のある方に対し、この集団で有益性が示されたSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を、血糖管理と腎臓病の進行抑制・心血管イベントの減少の両方を目的として用いることが推奨されています

🛡️
血圧を下げる薬
RAS阻害薬
ACE阻害薬・ARBなど
腎臓内の圧力を下げる
💊
尿から糖を出す薬
SGLT2阻害薬
腎臓・心臓を保護
血糖・体重管理も
炎症・線維化を抑える薬
フィネレノン(nsMRA)
残存する炎症リスクに対処
アルブミン尿が続く方に
🔬
体重・血糖を整える薬
GLP-1受容体作動薬
体重・血糖・心血管保護
このページの主役
「4つの柱」について知っておいていただきたいこと:この言い方は、現在の糖尿病性腎臓病の治療の全体像を示す臨床的な整理として広まっているもので、ガイドラインが正式に定義した用語ではありません。また、すべての方に4剤を一律に使うという意味でもありません。実際には、尿アルブミン・eGFR・血圧・血糖・肥満・心血管病の有無などを踏まえて、必要な治療を選択・組み合わせていきます。
GLP-1RAを優先して検討するタイミング
① 肥満・血糖管理が不十分な場合
BMI高め・HbA1cが目標に届いていない方では、GLP-1RAが体重と血糖の両面からCKDの根本原因(上流)を改善します。
② 動脈硬化リスクが高い場合
心筋梗塞・脳卒中の既往や動脈硬化性疾患がある方では、心血管ベネフィットが確認されたGLP-1受容体作動薬が有力な選択肢になります。

腎機能が低くても使える?製剤の種類と安全性のポイント

GLP-1受容体作動薬には「腎排泄型」と「非腎排泄型」があります。腎機能が低下している方では、製剤の選択が特に重要です。

薬剤の種類 eGFR ≥30 eGFR 15〜29 eGFR <15 / 透析
腎排泄型(Exendin-4由来)
エキセナチド、リキシセナチド
使用可能
(製剤ごとの電子添文に従う)
⚠️
製剤ごとに
禁忌/慎重投与が異なる
推奨されない
(製剤ごとの電子添文に従う)
非腎排泄型(ヒトGLP-1由来)
セマグルチド(リベルサス・オゼンピック)、デュラグルチド、リラグルチド
通常、腎機能による
用量調整は不要
⚠️
使用されることあり
個別判断が必要
⚠️
薬物動態上の影響は
受けにくいが臨床データが
限られ慎重に判断
注意:この表は大まかな整理です。実際の可否・用量は製剤ごとに異なりますので、必ず各製品の電子添文と担当医の判断に従ってください。また「使用可能」と「積極的に推奨される」は別のことです。非腎排泄型は透析中の方でも使用されることがありますが、有効性・安全性のエビデンスは限られています。
なお、吐き気・嘔吐・下痢が続く場合は、脱水から急性腎障害(AKI)を起こすことがあります。我慢せず、早めに医療機関へご連絡ください。

副作用とその対処法

最も多い副作用は消化器症状です。正しい対処法を知っておくことで、多くの場合は継続できます。

吐き気・嘔吐(最もよくある副作用)
飲み始めや増量した直後に起こりやすく、多くの方は続けるうちに軽くなっていきます。少量から始めてゆっくり増量すること、食事を少量ずつゆっくり食べることで和らげられます。
脱水リスク(Sick Day Rules)
発熱・下痢・嘔吐などで食事や水分が十分に取れない日は、速やかに服薬を中止して主治医に連絡してください(Sick Day Rules)。脱水が腎機能の急激な悪化(AKI:急性腎障害)につながることがあります。
低血糖リスク(他の薬との組み合わせに注意)
GLP-1RA単独では低血糖はほとんど起きません。ただし、スルホニル尿素(SU)薬やインスリンと一緒に使う場合はリスクが高まるため、医師と事前に確認しておきましょう。
サルコペニア(筋肉量の低下)への配慮
特に高齢の方では、体重減少に伴って筋肉量が落ちるサルコペニアに注意が必要です。適切なたんぱく質の量はCKDの病期や栄養状態によって異なり、高齢の方やサルコペニアのある方では過度なたんぱく質制限を避けることが大切です。自己判断で減らさず、医師・管理栄養士と個別に調整しながら、軽い運動を組み合わせましょう。
頻度は低いものの、知っておいていただきたいこと
・持続する激しい腹痛:まれに急性膵炎が起こることがあります。背中に抜けるような強い腹痛が続く場合は、服薬を中止して速やかに受診してください。
・胆石・胆嚢炎:急激な体重減少に伴って起こることがあります。右上腹部の痛みや発熱にご注意ください。
・網膜症の悪化:血糖が急速に改善する過程で、もともとある糖尿病網膜症が一時的に悪化することがあります。網膜症を指摘されている方は、眼科での定期的な確認が大切です。
・妊娠を予定されている方:妊娠中は使用できません。妊娠を計画されている場合は、事前に必ずご相談ください。
・DPP-4阻害薬との併用:作用が重なるため、原則として併用しません。他院で処方されているお薬がある場合は、お薬手帳をお持ちください。

どんな方に特にGLP-1RAが向いているの?3つのタイプ

臨床試験の結果から、GLP-1受容体作動薬の恩恵を受けやすい患者さんの特徴が見えてきています。担当医師とご自身の状態を照らし合わせながら、治療方針をご相談ください。

タイプA:肥満・血糖管理が鍵のCKD
肥満合併糖尿病性腎臓病
30+
BMI(体格指数)
肥満があり体重管理が課題
8.5%
HbA1c
血糖コントロール不十分
状態:糖尿病があり、肥満・血糖管理不十分。腎機能はまだ比較的保たれている。
GLP-1RAを優先する理由:体重と血糖の「上流」から根本的に改善し、腎臓・心臓ダメージの原因を断ち切る。
タイプB:動脈硬化リスクが高いCKD
心筋梗塞既往・動脈硬化性疾患あり
Post-MI
心筋梗塞の既往
ASCVD(動脈硬化性疾患)あり
45
eGFR
腎機能がやや低下
状態:心筋梗塞後で動脈硬化リスクが高く、腎機能も低下傾向にある。
GLP-1RAを優先する理由:心血管リスク低下のエビデンスを持つセマグルチドが有力な選択肢になります。経口セマグルチド(リベルサス)ではSOUL試験によりMACE(主要心血管イベント)の抑制が、注射製剤ではFLOW試験により腎・心血管アウトカムの改善が示されています。
タイプC:既存薬でも残るリスクへの追加治療
RASi+SGLT2i最大量使用中
Max
RASi+SGLT2i
最大量使用中
400
UACR(尿アルブミン)
アルブミン尿が依然持続
状態:RAS阻害薬・SGLT2阻害薬を最大量使用中だが、アルブミン尿が続いている「残余リスク」がある。
GLP-1RAまたはフィネレノンを追加する理由:体重・代謝の改善が必要ならGLP-1RA、炎症・線維化へのアプローチならフィネレノン(nsMRA)を追加治療として検討します。

患者さんからよく聞かれること

GLP-1受容体作動薬について、外来でよく聞かれる疑問をまとめました。

2型糖尿病による慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病)がある方、特に肥満・血糖管理が不十分な方心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高い方に使われることがあります。注射製剤セマグルチドを用いたFLOW試験では、腎臓の悪化と心血管死を合わせた複合リスクを24%低下させることが示され、「血糖を下げるだけの薬」から、腎臓や心臓にも目を向けた薬として位置づけが変わってきています。
セマグルチド・デュラグルチド・リラグルチドなどのヒトGLP-1由来の製剤は、腎臓での排泄に依存しないため、腎機能が大きく低下した方でも使用されることがあります。ただし透析中の方への有効性・安全性のエビデンスは限られており、適応については個別の判断が必要です。一方、エキセナチド・リキシセナチドなど腎排泄型の製剤は、腎機能が低下した方では禁忌または慎重投与となりますが、その基準は製剤ごとに異なります。いずれの薬も各製品の電子添文に従って判断しますので、担当医にご確認ください。
吐き気・嘔吐は飲み始めや増量した直後に起こりやすく、多くの方は続けるうちに軽くなっていきます(症状の程度や続く期間には個人差があります)。用量を少しずつ増やすこと(漸増)、食事を少量ずつゆっくり食べることで症状を和らげられます。ただし、症状が強く食事・水分が摂れない日は薬を中止して主治医に連絡してください(Sick Day Rules)。
併用できる場合があります。GLP-1RA・SGLT2阻害薬・フィネレノン(nsMRA)・RAS阻害薬はそれぞれ作用のしくみが異なるため、組み合わせによる追加の効果が期待されています。ただし、併用の腎保護効果を単独療法と直接比較したランダム化試験のデータはまだ限られています。また、これらをすべての方に一律に使うわけではなく、尿アルブミン・eGFR・血糖・血圧・心血管リスクなどを踏まえて個別に判断します。なお、SU薬やインスリンと併用する場合は低血糖のリスクが高まるため注意が必要です。
リベルサス(セマグルチド)は、国内では2型糖尿病の治療薬として承認されている薬です。血糖や体重の改善に加えて、SOUL試験では心血管リスクの高い2型糖尿病の方で心血管イベントを抑える効果が示されています。腎臓を守る効果については、注射製剤セマグルチドを用いたFLOW試験の結果などから期待されていますが、リベルサスそのものによる腎アウトカムの直接的なエビデンスとは区別して考える必要があります。体重が減ることはありますが、それは治療の主目的ではありません。当院では2型糖尿病の治療という医学的目的のもとで処方しており、美容・痩身目的での処方は行っていません。
現時点では、GLP-1受容体作動薬(リベルサスを含む)の腎保護に関するエビデンスは2型糖尿病を伴う慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病)の方を対象としたものです。IgA腎症・腎硬化症・多発性嚢胞腎など、糖尿病のない腎臓病への使用は現時点では適応外となります。「尿たんぱくがある」「腎機能が低い」だけでは対象にならない場合がありますので、まず担当医にご相談ください。
糖尿病があり、肥満・血糖コントロール不十分・動脈硬化性疾患のいずれかに当てはまる方は対象になる可能性があります。特に次のような方はご相談ください:

・体重が増えやすく、血糖もなかなか下がらない
・心筋梗塞・脳卒中・狭心症の既往がある
・RAS阻害薬やSGLT2阻害薬を使っているがアルブミン尿が続いている

当院では腎臓専門医が個別の状態に合わせてご説明いたします。

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参考文献

主要臨床試験
  1. Perkovic V, et al. Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2024;391(2):109–121. doi: 10.1056/NEJMoa2403347. FLOW
  2. McGuire DK, et al. Oral Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in High-Risk Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2025;392(20):2001–2012. doi:10.1056/NEJMoa2501006. SOUL
  3. Sattar N, et al. Cardiovascular, Mortality, and Kidney Outcomes with GLP-1 Receptor Agonists in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomised Trials. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(10):653–662. (8試験・60,080例) メタ解析
  4. Marso SP, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016;375(19):1834–1844. SUSTAIN-6
  5. Gerstein HC, et al. Dulaglutide and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes: An Exploratory Analysis of the REWIND Randomised, Placebo-controlled Trial. Lancet. 2019;394(10193):131–138. REWIND
ガイドライン・総説
  1. KDIGO 2022 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2022;102(5S):S1–S127.
  2. American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. 11. Chronic Kidney Disease and Risk Management: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S246–S260. doi:10.2337/dc26-S011.
  3. 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024.
  4. 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社. 2023.
  5. Agarwal R, Fouque D. The foundation and the four pillars of treatment for cardiorenal protection in people with chronic kidney disease and type 2 diabetes. Nephrol Dial Transplant. 2023;38(2):253–257. doi:10.1093/ndt/gfac331. 4つの柱
添付文書・医薬品情報
  1. リベルサス®錠3mg・7mg・14mg 電子添文(2026年5月改訂・第6版/ノボ ノルディスク ファーマ株式会社). PMDA(医薬品医療機器総合機構). ※効能・効果は「2型糖尿病」。
  2. オゼンピック®皮下注 電子添文(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社). PMDA(医薬品医療機器総合機構). 2026年8月参照. ※効能・効果は「2型糖尿病」。
免責事項:本ページは医学的情報の理解促進を目的とした教育的コンテンツです。個別の診療・投薬判断は必ず担当医師とご相談ください。掲載情報は作成時点のエビデンスに基づいており、最新の添付文書およびガイドラインを必ずご参照ください。また、本ページ掲載の臨床試験データの解釈については各原著論文をご確認ください。

監修・文責:加藤 彰浩(院長)|総合内科専門医・腎臓専門医|きたはらやまクリニック(尾張旭市)
公開日:2026年8月/最終更新:2026年8月/本ページの内容は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療方針については担当医にご相談ください。掲載内容は電子添文・ガイドラインの改訂により変更されることがあります。