GLP-1受容体作動薬(リベルサス)とは?
糖尿病性腎臓病での役割を
腎臓専門医が解説
「血糖を下げる薬」から、腎臓・心臓にも目を向けた薬へ。GLP-1受容体作動薬は、血糖・体重の改善に加えて、腎臓病の進行や心血管イベントにも多面的にはたらくことが示されつつある、糖尿病性腎臓病(DKD)治療の選択肢の一つです。
🏥 当院について:きたはらやまクリニックでは、GLP-1受容体作動薬のうち主にリベルサス(経口セマグルチド・3mg/7mg/14mg)を用いて治療を行っています。内服薬のため自己注射が不要で、導入しやすいのが特長です。⚠️ はじめにお伝えしたいこと:国内でのリベルサス・オゼンピックの承認された効能・効果は「2型糖尿病」です。「腎臓病の進行抑制」や「心血管イベント予防」が独立した効能として承認されているわけではありません。このページで紹介する臓器保護の知見は、2型糖尿病の治療を行ううえで期待される付加的な効果としてご理解ください。 ※ このページでは専門的な内容も含みますが、患者さんにもわかりやすくなるよう補足説明を付けています。
アプローチできる新しいタイプの保護薬です。
※主に2型糖尿病を伴う慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病)の方が対象です。糖尿病のない腎臓病(IgA腎症・腎硬化症など)は現時点では適応外となります。
「血糖を下げる薬」から「腎臓・心臓も見据えた治療」へのパラダイムシフト
GLP-1受容体作動薬はもともと血糖・体重を管理する薬として使われてきましたが、2024年のFLOW試験によって、腎アウトカムを主要評価項目に据えた大規模試験としては初めて、その改善が示されました(主要評価項目は心血管死を含む複合エンドポイントです)。これにより、血糖を下げるだけでなく、腎臓・心臓・代謝に多面的にはたらく薬として位置づけが見直されつつあります。
FLOW試験(主要複合エンドポイント)
FLOW試験(HR 0.71)
メタ解析(8試験・60,080例)
心臓も
代謝・腎・心血管を多面的に保護
※ 図は理解しやすさを優先した模式図です。GLP-1受容体作動薬の腎保護には、体重・血糖・血圧の改善に加えて、炎症や酸化ストレスの抑制、腎臓の血流への作用など複数の経路が関与すると考えられていますが、ヒトにおける詳しい作用機序には未解明な点も残されています。
「血糖を下げるだけ」ではない——腎臓・心臓・脳への多面的な保護作用
GLP-1受容体作動薬は、小腸から分泌されるホルモン「GLP-1」の作用を模した薬です。膵臓や脳への作用に加え、炎症・酸化ストレスの抑制、血管・内皮機能や腎血行動態への作用など、複数の経路が腎保護に関与すると考えられています。ただし、ヒトにおける直接的な作用機序には未解明な点も残されています。
▶ 医療従事者向け詳細(専門用語)
ただし、ヒトの腎臓におけるGLP-1受容体の分布や直接作用の詳細については未解明の部分が残されており、体重・血糖・血圧・内皮機能の改善を介した間接的な経路の寄与も大きいと考えられています。
腎臓を守る効果はどのくらい?大規模試験で確認されたデータ
2024年に発表されたFLOW試験は、「腎アウトカムの改善」を主要評価項目として設計された初のGLP-1RA大規模試験です。それ以前のメタ解析(Sattar 2021:8試験・60,080例)でも、腎保護・心血管保護・代謝改善の3分野すべてで一貫した有益性が確認されています。
※FLOW試験は注射製剤(オゼンピック)で行われた試験です。
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
主要エンドポイント(複合):腎不全・eGFR 50%以上の持続低下・腎疾患死・心血管死
HR 0.76(95%CI 0.66–0.88), p=0.0003
腎臓関連項目のみの複合:HR 0.79(95%CI 0.66–0.94)=21%低下
eGFR低下速度改善:年間 1.16 mL/min/1.73㎡の差
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
試験はデータ安全性モニタリング委員会の勧告により予定より早く終了(有効性確認のため)
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
複合腎アウトカム(顕性アルブミン尿の新規発症等を含む):−21%
主要心血管イベント(MACE):−14%
全死亡:−12%
心不全入院:−11%
出典:Sattar N, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(10):653–662.
▶ 詳しく知りたい方へ(専門データ)
主要エンドポイント:MACE(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)
結果:MACEを14%有意に低下(標準治療への上乗せ)
重篤な有害事象の発現率はリベルサス群・プラセボ群でほぼ同程度
糖尿病性腎臓病の薬物治療を支える「4つの柱」
生活習慣の改善や血圧・脂質の管理を治療の土台として、近年では、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、フィネレノンなどの非ステロイド型MRA、GLP-1受容体作動薬を、作用の異なる「4つの柱」として捉える考え方が広がっています。米国糖尿病学会(ADA)の2026年版ガイドラインでも、2型糖尿病で慢性腎臓病(eGFR 20〜60、あるいはアルブミン尿)のある方に対し、この集団で有益性が示されたSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を、血糖管理と腎臓病の進行抑制・心血管イベントの減少の両方を目的として用いることが推奨されています。
RAS阻害薬
腎臓内の圧力を下げる
SGLT2阻害薬
血糖・体重管理も
フィネレノン(nsMRA)
アルブミン尿が続く方に
GLP-1受容体作動薬
このページの主役
腎機能が低くても使える?製剤の種類と安全性のポイント
GLP-1受容体作動薬には「腎排泄型」と「非腎排泄型」があります。腎機能が低下している方では、製剤の選択が特に重要です。
| 薬剤の種類 | eGFR ≥30 | eGFR 15〜29 | eGFR <15 / 透析 |
|---|---|---|---|
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腎排泄型(Exendin-4由来)
エキセナチド、リキシセナチド
|
✓ 使用可能 (製剤ごとの電子添文に従う) |
⚠️ 製剤ごとに 禁忌/慎重投与が異なる |
✕ 推奨されない (製剤ごとの電子添文に従う) |
|
非腎排泄型(ヒトGLP-1由来)
セマグルチド(リベルサス・オゼンピック)、デュラグルチド、リラグルチド
|
✓ 通常、腎機能による 用量調整は不要 |
⚠️ 使用されることあり 個別判断が必要 |
⚠️ 薬物動態上の影響は 受けにくいが臨床データが 限られ慎重に判断 |
なお、吐き気・嘔吐・下痢が続く場合は、脱水から急性腎障害(AKI)を起こすことがあります。我慢せず、早めに医療機関へご連絡ください。
副作用とその対処法
最も多い副作用は消化器症状です。正しい対処法を知っておくことで、多くの場合は継続できます。
・胆石・胆嚢炎:急激な体重減少に伴って起こることがあります。右上腹部の痛みや発熱にご注意ください。
・網膜症の悪化:血糖が急速に改善する過程で、もともとある糖尿病網膜症が一時的に悪化することがあります。網膜症を指摘されている方は、眼科での定期的な確認が大切です。
・妊娠を予定されている方:妊娠中は使用できません。妊娠を計画されている場合は、事前に必ずご相談ください。
・DPP-4阻害薬との併用:作用が重なるため、原則として併用しません。他院で処方されているお薬がある場合は、お薬手帳をお持ちください。
どんな方に特にGLP-1RAが向いているの?3つのタイプ
臨床試験の結果から、GLP-1受容体作動薬の恩恵を受けやすい患者さんの特徴が見えてきています。担当医師とご自身の状態を照らし合わせながら、治療方針をご相談ください。
肥満合併糖尿病性腎臓病
肥満があり体重管理が課題
血糖コントロール不十分
心筋梗塞既往・動脈硬化性疾患あり
ASCVD(動脈硬化性疾患)あり
腎機能がやや低下
RASi+SGLT2i最大量使用中
最大量使用中
アルブミン尿が依然持続
患者さんからよく聞かれること
GLP-1受容体作動薬について、外来でよく聞かれる疑問をまとめました。
・体重が増えやすく、血糖もなかなか下がらない
・心筋梗塞・脳卒中・狭心症の既往がある
・RAS阻害薬やSGLT2阻害薬を使っているがアルブミン尿が続いている
当院では腎臓専門医が個別の状態に合わせてご説明いたします。
総合内科専門医・腎臓専門医によるCKD治療薬のご相談はこちら
- ・「eGFRが低い・尿たんぱく(尿アルブミン)が続いていると言われた」
- ・「GLP-1受容体作動薬(オゼンピックなど)について相談したい」
- ・「今の薬で十分かどうか確認したい」
- ・「腎臓と心臓の両方に配慮した治療について知りたい」
参考文献
- Perkovic V, et al. Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2024;391(2):109–121. doi: 10.1056/NEJMoa2403347. FLOW
- McGuire DK, et al. Oral Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in High-Risk Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2025;392(20):2001–2012. doi:10.1056/NEJMoa2501006. SOUL
- Sattar N, et al. Cardiovascular, Mortality, and Kidney Outcomes with GLP-1 Receptor Agonists in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomised Trials. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(10):653–662. (8試験・60,080例) メタ解析
- Marso SP, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016;375(19):1834–1844. SUSTAIN-6
- Gerstein HC, et al. Dulaglutide and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes: An Exploratory Analysis of the REWIND Randomised, Placebo-controlled Trial. Lancet. 2019;394(10193):131–138. REWIND
- KDIGO 2022 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2022;102(5S):S1–S127.
- American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. 11. Chronic Kidney Disease and Risk Management: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S246–S260. doi:10.2337/dc26-S011.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024.
- 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社. 2023.
- Agarwal R, Fouque D. The foundation and the four pillars of treatment for cardiorenal protection in people with chronic kidney disease and type 2 diabetes. Nephrol Dial Transplant. 2023;38(2):253–257. doi:10.1093/ndt/gfac331. 4つの柱
- リベルサス®錠3mg・7mg・14mg 電子添文(2026年5月改訂・第6版/ノボ ノルディスク ファーマ株式会社). PMDA(医薬品医療機器総合機構). ※効能・効果は「2型糖尿病」。
- オゼンピック®皮下注 電子添文(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社). PMDA(医薬品医療機器総合機構). 2026年8月参照. ※効能・効果は「2型糖尿病」。
監修・文責:加藤 彰浩(院長)|総合内科専門医・腎臓専門医|きたはらやまクリニック(尾張旭市)
公開日:2026年8月/最終更新:2026年8月/本ページの内容は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療方針については担当医にご相談ください。掲載内容は電子添文・ガイドラインの改訂により変更されることがあります。
