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腎臓病・糖尿病の方がインフルエンザにかかったら

インフルエンザにかかったとき、慢性腎臓病(CKD)や糖尿病などの持病がある方には、持病のない方とは違う注意点があります。注意が必要なのは、インフルエンザそのものが重くなることだけではありません。発熱で汗をかき、食事や水分がとれなくなることで体の水分が不足し、もともとの持病のほうが揺さぶられることがあるからです。

このページでは、腎臓専門医の立場から、慢性腎臓病・糖尿病・免疫を抑える治療を受けている方・透析を受けている方に向けて、体の中で何が起こりやすいのか、どの薬に注意が必要か、いつ相談すればよいか、そして夜間や休日にかかりつけ以外の医療機関を受診するときに何を伝えればよいかを説明します。

持病のある方が「インフルエンザかもしれない」と思ったら

  1. まず、普段の病気を診てもらっている医療機関へ連絡してください。慢性腎臓病や糖尿病の方はかかりつけ医、免疫を抑える治療を受けている方はその治療を行っている医療機関、臓器移植を受けた方は移植後の管理をしている医療機関、透析中の方は透析施設が基本です。症状が強くなるまで待たないでください。
  2. いつもの薬を続けるか休むかを、自己判断で決めないでください。対応は、薬の種類、腎臓の働き、食事や水分のとれ具合によって異なります。市販の薬を自己判断で足すことも避けてください。水分制限の指示を受けている方は、水分の量も自己判断で増やさないでください。
  3. かかりつけ以外を受診するときは、自分から持病を伝えてください。夜間・休日診療所や救急外来、旅行先などでは、お薬手帳があれば持参し、最近の検査結果も手元にあれば一緒にお持ちください。そのうえで「腎臓の働きが低下している」「糖尿病がある」「透析を受けている」とご自分から伝えてください(詳しくは第6章)。
  4. 次のような場合は、かかりつけからの返事を待たず、救急受診を検討してください。息が苦しい、意識がはっきりしない、水分がほとんどとれない、尿がほとんど出ない、立てないほどぐったりしている(詳しくは第9章)。

1. インフルエンザの症状と、持病があると注意が必要な理由

インフルエンザの主な症状

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる感染症です。38℃以上の発熱、頭痛、関節や筋肉の痛み、強いだるさなどが比較的急に現れ、のどの痛み、鼻水、せきを伴うこともあります。

ただし、症状の出方は人によって異なります。高齢の方では、せきなどの症状が目立たず、発熱やだるさ、意識がぼんやりするといった症状だけのこともあります。免疫を抑える治療を受けている方では、症状が目立ちにくいことがあります。また、症状だけでインフルエンザと新型コロナなどを区別することはできません。

持病がある方は、検査を受けるのに適した時間まで自己判断で待つのではなく、まず普段の病気を診てもらっている医療機関へ連絡してください。検査のタイミングについては、インフルエンザの検査を受けるタイミングと受診の目安で説明しています。

インフルエンザそのものが重くなることがあります

インフルエンザでは、慢性の呼吸器疾患や心疾患、腎疾患、糖尿病などの代謝性疾患がある方、免疫機能が低下している方で、重症化や合併症に注意が必要です。

  • 慢性の呼吸器疾患(ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患など)
  • 慢性の循環器疾患(心臓の病気など)
  • 慢性の腎臓の病気
  • 糖尿病などの代謝疾患
  • 免疫機能が低下している状態

国立健康危機管理研究機構(JIHS)は、腎疾患や糖尿病、心疾患、肺疾患、免疫機能が低下している方などでは、インフルエンザに伴う合併症によって重症化し、入院を要するリスクが高いとしています。また、5歳未満のお子さんや高齢の方、妊娠中の方なども、重症化しやすい対象として挙げられています。

腎臓の慢性的な病気が、公的な資料でも重症化しやすい状態として挙げられている点は、慢性腎臓病の方にぜひ知っておいていただきたいところです。

持病そのものが悪化することがあります

もう一つ、見落とされやすいのがこちらです。インフルエンザにかかると、体には次のような変化が起こります。

  • 熱が出て、汗や呼吸から失われる水分が増える
  • のどの痛みや倦怠感、吐き気で食事の量が減る
  • 水分をとる量も減る
  • 嘔吐や下痢があれば、さらに水分が失われる

この結果として起こるのが脱水です。脱水は、腎臓への血流、血糖の値、血圧のいずれにも影響します。つまり、インフルエンザの症状そのものは「かぜのような症状」の範囲であっても、その裏側で持病のほうが不安定になっていることがあります。持病がある方に早めの相談をおすすめするのは、このためです。

心臓病や呼吸器の病気がある方も注意が必要です

心不全や狭心症などの心臓の病気、ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器の病気がある方も、インフルエンザをきっかけに症状が悪化することがあります。息切れが強くなった、むくみが増えた、いつもより咳や息苦しさが強いといった変化があれば、普段診てもらっている医療機関へご相談ください。

このページでは、慢性腎臓病(CKD)や糖尿病のある方を中心に、免疫を抑える治療を受けている方や透析中の方にも関係する注意点について説明します。

2. 慢性腎臓病(CKD)の方 ― 脱水と急性腎障害

発熱と食欲の低下は、腎臓にとって水分が足りない状態をつくります

熱が出ると、汗や呼吸から失われる水分が増えます。同時に、食事も水分もとりにくくなります。嘔吐や下痢があれば、さらに失われます。その結果、体の中を流れる血液の量が減り、腎臓へ流れ込む血液も減ります。

腎臓は、流れ込んできた血液をろ過して尿をつくる臓器です。ですから、腎臓へ届く血液が減ると、その働きは短い期間でも低下します。

脱水から急性腎障害に至る流れ 発熱や汗、食欲の低下、嘔吐や下痢によって体の水分が減ると、腎臓に届く血液が減り、腎臓の働きが急に落ちる急性腎障害(AKI)につながることを示す模式図。 発熱・汗 食欲の低下 嘔吐・下痢 体の水分が減る(脱水) 腎臓に届く血液が減る 腎臓の働きが急に落ちる 急性腎障害(AKI)
発熱などで体の水分が減ると、腎臓に届く血液も減り、腎臓の働きが急に落ちることがあります。慢性腎臓病の方は、もともと腎臓の働きに余裕が少ないため、この影響を受けやすくなります。

急性腎障害(AKI)とは

急性腎障害(AKI)とは、数時間から数日という短い間に、腎臓の働きが急に低下する状態です。「腎臓の働きが急に落ちること」と考えていただくと分かりやすいと思います。原因が取り除かれれば回復することもありますが、回復しきらず、腎臓の働きが以前より落ちたままになることもあります。

もともとの低下に、急な低下が重なります

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きの低下や尿の異常が続いている状態です。もともと腎臓の働きに余裕が少ないところへ、脱水による急な低下が重なると、影響が大きくなります。感染症をきっかけに腎臓の働きが落ちるということは、腎臓の専門外来では珍しいことではありません。

慢性腎臓病そのものについては、慢性腎臓病(CKD)とはで詳しく説明しています。

気をつけたい変化

  • 尿の量が減った、トイレに行く回数が明らかに減った
  • 水分も食事もほとんどとれない状態が続いている
  • 強いだるさがあり、ぐったりしている
  • 嘔吐や下痢が続いている
  • 短い期間で体重が減った(体の水分が抜けている可能性があります)
  • 立ち上がったときにふらつく

これらがあるときは、様子を見て我慢するのではなく、普段診てもらっている医療機関へご相談ください。

「水分をたくさんとってください」と一律にはお伝えできません

脱水を避けることは、多くの方にとって重要です。ただし、慢性腎臓病の方に対して「とにかく水をたくさん飲んでください」と一律にお伝えすることはできません。次のような方では、水分を一律に増やすことが適切でない場合があるためです。

  • 透析を受けている方
  • 腎臓の働きの低下が進んでいる方
  • 心不全がある方
  • 主治医から水分量について指示を受けている方

これらに当てはまる方は、普段の主治医や透析施設からの指示を優先してください。適切な水分量は、腎臓の働き、尿の量、心臓の状態、むくみの有無、普段受けている指示の内容によって変わります。だからこそ、一律の数字ではお伝えできません。

水分制限の指示を受けていない方であれば、こまめに少量ずつ水分をとることが基本になります。ご自分がどちらに当てはまるか分からない場合は、普段の指示に従いながら、早めに相談することをおすすめします。

3. 糖尿病の方 ― 感染したときの血糖と脱水

食事がとれていなくても、血糖が上がることがあります

感染して熱が出ると、体はストレスに対応するためのホルモンを出します。これらのホルモンには血糖を上げる働きがあり、またインスリンの効きを悪くします。そのため、食事の量が減っているのに血糖が高くなることがあります。「食べていないのだから血糖は下がっているはずだ」という前提で判断すると、実際の値とずれることがあります。

反対に、低血糖が起こることもあります

一方で、食事がほとんどとれない状態が続けば、低血糖が起こることもあります。特に、血糖を下げる働きの強いお薬を使っている方では注意が必要です。冷や汗、動悸、手のふるえ、強い空腹感、ぼんやりするといった症状は、低血糖のサインのことがあります。

つまり、感染したときの血糖は上にも下にも動きやすい状態です。普段血糖を測っている方は、いつもより測る回数を増やして経過を記録しておくと、相談するときにも役立ちます。

高血糖は脱水を進めます

血糖が高い状態が続くと、体は余分な糖を尿として出そうとするため、尿の量が増えます。発熱による水分の喪失に、この尿の量の増加が重なると、脱水が進みやすくなります。脱水が進めば腎臓への血流も減るため、糖尿病と慢性腎臓病の両方がある方では、特に注意が必要です。

早めに相談したい状況

  • 嘔吐が続き、食事も水分もとれない
  • いつもより明らかに血糖が高い、下がらない
  • 低血糖を繰り返している
  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い
  • 強いだるさと口の渇きが続いている

糖尿病そのものについては、糖尿病についてで説明しています。飲んでいる糖尿病のお薬をどうするかについては、第8章で触れます。

4. 免疫を抑える治療を受けている方 ― 腎炎・ネフローゼ症候群・移植後など

次のような方は、感染したときの対応が一人ひとり異なります。

  • 腎炎(IgA腎症など)やネフローゼ症候群に対して、ステロイドや免疫抑制薬を使っている方
  • 自己免疫疾患に対して、免疫を抑える治療を受けている方
  • 臓器移植を受けた方
  • そのほかの病気で、ステロイドや免疫抑制薬を使っている方

まず連絡する先が、普段と違う場合があります

強い免疫抑制治療を受けている方では、感染症への対応がもとの病気の治療計画にも影響します。そのため、まずは普段その治療を受けている専門医・医療機関へ連絡していただくほうがよい場合があります。近くの医療機関を受診する場合も、どのような治療を受けているかを必ず伝えてください。

自己判断で免疫抑制薬やステロイドを中止しないでください

「感染したのだから、免疫を抑える薬はやめたほうがよい」と考える方がいらっしゃいますが、一律にそうとは言えません。特にステロイドは、急に中止することで体調を大きく崩すことがあります。

感染したときに薬をどうするかは、もとの病気、薬の種類、投与量、治療の期間、感染の重さによって変わります。だからこそ、すべての方に当てはまる一律の指示は存在しません。中止・減量・継続の判断は、処方している医師に確認してください。

症状の出方が普段と違うことがあります

免疫を抑える治療を受けていると、熱が高く出にくかったり、症状が目立ちにくかったりすることがあります。「思ったより症状が軽いから大丈夫」とは判断せず、いつもと違うと感じた時点でご相談ください。

5. 透析を受けている方

まず、通っている透析施設へ連絡してください

発熱やインフルエンザを疑う症状があるときは、最初に普段通院している透析施設へ連絡してください。これが基本の流れです。

透析施設では、ほかの患者さんへの感染を防ぐため、来院の時間帯、入り口、待機する場所、透析を行う場所などをあらかじめ決めていることがほとんどです。連絡せずにいつもどおり来院すると、その手順に乗ることができません。透析の予定日をどうするかについても、自己判断せず施設の指示を受けてください。

水分は自己判断で増やさないでください

発熱時に「脱水が心配だから」と水分を大きく増やすと、次の透析までの体重の増え方が大きくなり、心臓や血圧に負担がかかることがあります。反対に食事や水分がとれない場合も含めて、どうするかは施設の指示に従ってください。

ほかの医療機関を受診するときは、必ず透析中であることを伝えてください

お薬の量や投与方法は、腎臓の働きや透析の条件によって変わることがあります。夜間・休日診療所や救急外来を受診するときは、透析を受けていること、どの施設で受けているか、週に何回受けているかを伝えてください。

6. 抗インフルエンザ薬と腎機能 ― かかりつけ以外を受診するとき

腎臓の働きに応じて、量や投与方法を調整する薬があります

抗インフルエンザ薬には、飲み薬、吸入薬、点滴薬があります。このうち、オセルタミビルやペラミビルのように、腎臓の働きに応じて投与量や投与方法を調整する必要がある薬があります。いずれも腎臓から排泄される薬で、腎臓の働きが低下していると体内に薬が残りやすくなるためです。一方で、腎臓の働きへの対応は薬によって異なります。

腎臓の働きに応じて量を調整する必要があることと、その薬が「腎臓を傷める薬」であることは、同じ意味ではありません。調整は、薬が体にたまりすぎないように、量や投与方法を合わせるための手順です。また、「腎臓が悪いから抗インフルエンザ薬は使えない」ということでもありません。

具体的な用量や調整の方法は、診察した医師が判断します。ここで大切なのは、診察する医師が、あなたの腎臓の働きを知っていることです。かかりつけであれば分かりますが、初めて受診する医療機関では分かりません。

かかりつけ以外を受診するときは、ご自分から伝えてください

夜間・休日診療所、救急外来、旅行先の医療機関など、普段のカルテがない場所を受診することがあります。このとき、次のことをご自分から伝えてください。聞かれるのを待たないでください。

  • 「慢性腎臓病があります」
  • 「腎臓の働きが低下していると言われています」
  • 「透析を受けています」
  • 「糖尿病があります」
  • 「免疫を抑える治療を受けています」

診察室だけでなく、受付や問診票の段階で伝えておくと、より確実です。

持っていくと診療の助けになるもの

  • お薬手帳(普段飲んでいる薬がすべて分かるもの)
  • 最近の血液検査の結果(クレアチニン(Cr)や推算糸球体濾過量(eGFR)が載っているもの。手元にあれば)
  • 透析を受けている方は、施設名と透析の条件が分かるもの

検査結果の紙が手元になくても、たとえば「最近のeGFRは30台だと言われています」と伝えられれば、薬を選ぶ際の参考になります。慢性腎臓病の方は、普段からご自分のクレアチニンとeGFRの値をおおよそ把握しておくことをおすすめします。

発症から48時間を過ぎたら、受診しても意味がないのでしょうか

いいえ。「48時間を過ぎたから、もう受診しても意味がない」と自己判断する必要はありません。

抗インフルエンザ薬は、一般に発症から48時間以内に開始したほうが十分な効果を期待しやすく、できるだけ早く治療を始めることが大切です。一方、重症化リスクが高い方や症状が重い方では、病状や経過を踏まえて、48時間を過ぎていても医師が抗インフルエンザ薬の投与を検討することがあります。

また、持病がある方の受診の目的は、抗インフルエンザ薬を処方することだけではありません。発熱や食欲低下による脱水、腎臓の働きの悪化、血糖の変化、肺炎などの合併症が起きていないかを確認することも重要です。

「もう48時間を過ぎたから」と受診を控えず、持病がある方で症状が強い、悪化している、水分がとれないなどの場合は、医療機関へご相談ください。

なお、検査を受けるタイミングや、検査が陰性だった場合の考え方については、インフルエンザの検査を受けるタイミングと受診の目安で説明しています。

7. 熱や痛みの薬(解熱鎮痛薬)をどう選ぶか

腎臓病がある方では、解熱鎮痛薬の種類にも注意します

インフルエンザでは高い熱が出て、頭痛や関節の痛みを伴います。つらいときに解熱鎮痛薬を使うこと自体は問題ありません。ただし、腎臓の働きが低下している方や、発熱・嘔吐・下痢で体の水分が減っている方では、薬の種類によって腎臓への影響が変わります。

アセトアミノフェンを基本に考える理由

腎臓の働きが低下している方や、脱水が起こりやすい状況にある方では、アセトアミノフェンを基本に考えることが多くなります。腎臓の血流に対する影響が、後で説明する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と比べて小さいためです。

ただし、「腎臓病ならアセトアミノフェンは絶対に安全」「いくら飲んでも大丈夫」ということではありません。適切な量は、年齢、体重、肝臓の働き、ほかに飲んでいる薬によって変わります。特に、市販のかぜ薬にもアセトアミノフェンが含まれていることがあり、処方された薬と重ねて飲むと量が多くなりすぎることがあります。

NSAIDsが脱水のときに問題になる理由

ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナクなどは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれます。熱を下げ、痛みを抑える働きが強い薬です。

腎臓には、全身の血圧が下がったり体の水分が減ったりしたときでも、腎臓へ入る血流をできるだけ保とうとする仕組みがあります。NSAIDsは、この仕組みに関わる物質のはたらきを抑えます。特に発熱や嘔吐、下痢などで体の水分が減っている状況では、腎臓へ入る血流が低下しやすくなり、腎臓の働きが急に低下する急性腎障害の一因になることがあります。

脱水にNSAIDsが重なったときの腎臓への影響 発熱や食欲の低下、嘔吐や下痢で腎臓への血流が減ると、腎臓は血管を広げて血流を保とうとする。NSAIDsはこの血流を保つしくみを抑えるため、両方が重なると急性腎障害(AKI)のリスクが高くなることを示す模式図。 発熱・食欲の低下・嘔吐や下痢 腎臓への血流が減る 腎臓は血管を広げて 血流を保とうとする NSAIDs ロキソプロフェンなど 血流を保つしくみを 抑えてしまう 急性腎障害(AKI)の リスクが高くなる
体の水分が減って腎臓への血流が落ちているところにNSAIDsが加わると、腎臓が血流を保てなくなり、急性腎障害のリスクが高くなります。必ず起こるという意味ではなく、条件が重なるほどリスクが上がる、ということです。

もともと腎臓の働きが低下している方では、こうした影響を受けやすくなります。また、ACE阻害薬やARB、利尿薬を飲んでいる方では、NSAIDsが加わることで腎臓の働きが低下するリスクがさらに高まることがあります。一方で、「腎臓病がある方はNSAIDsを絶対に使えない」という意味ではありません。使用できるかどうかは個々の状態によって異なるため、自己判断で飲み始めず、医師や薬剤師に確認してください。

ぜんそくがある方すべてにNSAIDsが使えないわけではありません。ただし、過去に痛み止めや解熱薬でぜんそく発作や強い息苦しさを起こしたことがある方(アスピリンぜんそく/NSAIDs過敏ぜんそく)は、NSAIDsを使用しないでください。アセトアミノフェンを含め、使用できる薬と量は自己判断せず、医師・薬剤師に確認してください。

市販薬にも注意してください

市販の総合かぜ薬や解熱鎮痛薬にも、NSAIDsが含まれていることがあります。「病院の薬ではないから」と考えて家にある薬を飲んでしまうことは、少なくありません。市販薬を使うときは、商品名ではなく成分名を確認してください。判断に迷うときは、購入する前に薬剤師へ「腎臓の働きが低下していると言われています」と伝えて相談してください。

お子さんの解熱薬について

お子さんには、大人用の解熱鎮痛薬や自宅に残っている薬を自己判断で使わないでください。インフルエンザのときの解熱薬は、アセトアミノフェンが基本です。詳しくは、インフルエンザの検査を受けるタイミングと受診の目安をご確認ください。

8. 食事や水分がとれないとき、いつもの薬をどうするか

発熱や食欲の低下、嘔吐などで水分や食事が十分にとれない場合、一部の糖尿病のお薬や降圧薬、利尿薬などでは対応が必要になることがあります。すべてのお薬を一律に中止するわけではありません。対応は、お薬の種類、持病の内容、水分がどれくらいとれているか、脱水の程度、腎臓の働きなどによって変わります。

インスリンを使っている方は、食事がとれない場合でも、自己判断でインスリンを完全に中断しないでください。量の調整が必要になることはありますが、どう調整するかは主治医の指示に従ってください。

一方、糖尿病の飲み薬は種類によって対応が異なります。発熱、嘔吐、下痢などで食事や水分が十分にとれないときは、SGLT2阻害薬やメトホルミンなどを一時的に休薬する場合があります。

SGLT2阻害薬は、糖尿病だけでなく、慢性腎臓病や心不全の治療で使われている場合もあります。体調不良時の対応は、使用目的だけでなく、水分や食事がとれているか、脱水や心不全の状態などによって異なります。自己判断せず、早めに処方元へ確認してください。

主治医からあらかじめ体調不良時(シックデイ)の対応を指示されている場合は、その指示に従ってください。指示がない場合や判断に迷う場合は、早めに処方を受けている医療機関や薬局へ連絡してください。シックデイの対応は、体調のよいときにかかりつけ医から説明を受けておくと安心です。

9. 早めに相談したほうがよいとき/すぐに受診したほうがよいサイン

持病がある方が「早めに」相談したい状況

次のような場合は、症状が強くなるのを待たずにご相談ください。

  • 急な発熱、関節や筋肉の痛み、強いだるさなど、インフルエンザが疑われる症状が出た
  • 食事や水分の量が明らかに減っている
  • 普段より血糖が大きく乱れている
  • 尿の量が減った
  • 透析を受けている
  • 強い免疫抑制治療を受けている

この段階での相談が早すぎるということはありません。

すぐに受診・救急相談を考えるサイン(大人)

  • 息が苦しい、呼吸が速い
  • 意識がはっきりしない、受け答えがおかしい
  • 水分がほとんどとれない状態が続いている
  • 立てないほどぐったりしている
  • 口の中や唇が乾き、尿がほとんど出ていない
  • いったん下がった熱が再び上がり、症状が悪くなった

息が苦しい、意識がはっきりしないなど、命に関わると感じたときは、ためらわず119番へ通報してください。

受診したほうがよいか迷うときは、お住まいの地域によっては救急相談の窓口(#7119)を利用できます。実施していない地域もあり、愛知県では名古屋市内が対象です。

尾張旭市・瀬戸市など、愛知県内のそのほかの地域では、夜間・休日に受診できる医療機関を探すときに愛知県救急医療情報センターを利用できます。365日24時間対応で、市外局番0561の地域からは0561-82-1133です。

お子さんの場合

お子さんの救急受診の目安や、インフルエンザにかかったときの異常行動への注意については、インフルエンザの検査を受けるタイミングと受診の目安をご確認ください。

10. 予防接種の位置づけ

持病がある方にとって、インフルエンザワクチンは重要な予防手段の一つです。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、発病を抑える効果に加えて、重症化を防ぐ効果が期待されています。

今回インフルエンザにかかった方は、まず治療と回復を優先してください。今後の接種をどうするかは、体調が回復してから主治医とご相談ください。接種の時期については、治療の内容や持病の状態によって考え方が変わることがあります。

接種の方法、費用、予約、副反応について詳しくは、インフルエンザ予防接種のご案内で説明しています。

よくあるご質問

Q. 腎臓が悪いと言われていますが、インフルエンザは重症化しやすいですか。

腎臓の病気は、インフルエンザで重症化や合併症に注意が必要な基礎疾患の一つです。ただし、注意すべきなのはインフルエンザそのものの重症化だけではありません。発熱や食事量の低下による脱水で、腎臓の働きが急に低下することがあります。症状が出た段階で早めにご相談ください。

Q. インフルエンザの薬は腎臓に悪いのですか。

腎臓の働きに応じた用量調整が必要であることと、「腎臓を傷める薬」であることは同じ意味ではありません。オセルタミビルやペラミビルなどは腎臓から排泄されるため、腎臓の働きに合わせて量や投与方法を調整します。この調整には、医師があなたの腎臓の働きを知っていることが必要です。ただし、どの薬にも副作用はあり得るため、医師の指示どおり使用してください。

Q. 熱が高いとき、家にあるロキソプロフェンを飲んでもよいですか。

自己判断で飲む前にご相談ください。ロキソプロフェンはNSAIDsに分類され、特に脱水しているときには腎臓に負担がかかることがあります。腎臓病がある方ではアセトアミノフェンが選ばれることが多いですが、どの薬が適切かは体調や持病によって異なります。

Q. 透析中に熱が出たら、どこに連絡すればよいですか。

まず、普段通院している透析施設へ連絡してください。多くの施設では、発熱があるときの受け入れ方法や透析の進め方をあらかじめ決めています。夜間などで施設に連絡がつかず、ほかの医療機関を受診する場合も、透析を受けていることを必ず伝えてください。

Q. かかりつけが休みのとき、何を持って受診すればよいですか。

お薬手帳があれば持参し、慢性腎臓病や糖尿病などの持病があることをご自分から伝えてください。最近の検査結果が手元にあれば、一緒に持参すると診療の参考になります。透析を受けている方は、施設名が分かるものもあると役立ちます。

当院を受診される方へ

発熱などの症状がある方は、来院されましたら、院内に入る前に、0561-54-1700までお電話ください。予約方法や来院のしかたは、インフルエンザの検査を受けるタイミングと受診の目安でご案内しています。来院の際は、お薬手帳と、手元にあれば最近の検査結果をお持ちください。