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メトホルミン(メトグルコ)とは?

メトホルミン(メトグルコ)とは?
効果・副作用と腎臓との関係

60年以上使われてきた、2型糖尿病治療の基本となる飲み薬。効果・副作用に加えて、「腎機能が悪いとなぜ使い方が変わるのか」「造影CTや体調不良のときはどうするのか」まで、総合内科専門医・腎臓専門医がわかりやすく解説します。

ビグアナイド薬 腎機能との関係 造影検査・シックデイの休薬 保険診療での使い方
メトホルミンは、2型糖尿病の飲み薬のなかでも最も長く使われてきた薬のひとつです。効果や副作用の情報は数多くありますが、「腎臓とのかかわり」だけは、どのページでも十分に説明されていないと感じています。メトホルミンは腎臓から出ていく薬であり、腎機能の状態によって使い方が変わります。造影剤を使う検査の前後や、体調を崩した日の対応も、その延長線上にあります。このページでは、腎臓専門医の立場から、そこを中心に整理しました。 🏥 このページの位置づけ:本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。使用の可否・用量・休薬の判断は、一人ひとりの状態をみて医師が個別に行います。自己判断での中止・再開はなさらないでください。

60年以上使われてきた「ビグアナイド薬」

メトホルミンは「ビグアナイド薬」というグループに分類される、2型糖尿病の飲み薬です。1960年代から世界中で使われ続けてきた、長い使用実績をもつ薬のひとつです。

名前の整理:メトグルコ、グリコラン、メトホルミン塩酸塩錠

「メトホルミン」は成分の名前(一般名)です。処方箋やお薬手帳には、次のようにさまざまな名前で書かれていることがあります。同じ成分でも、製品によって使い方や適応の記載が少しずつ異なる場合があるため、お薬手帳に書かれている正式な名称をそのまま医師・薬剤師にお伝えいただくのが確実です。

お薬手帳での表記位置づけ補足
メトグルコ錠一般名:メトホルミン塩酸塩 先発医薬品 現在、国内でよく使われている製剤のひとつです。
グリコラン錠一般名:メトホルミン塩酸塩 先発医薬品 より古くからある製剤です。
メトホルミン塩酸塩錠「MT」「SN」「GL」などの記号+製造会社名が付きます ジェネリック医薬品 記号によって、もとになっている先発品が異なります。1日に使える量や飲むタイミングの決まりも変わるため、記号まで含めてお伝えください。メデット錠・ネルビス錠など、別の名称の製品もあります。
配合錠メタクト、エクメット、イニシンク など 他剤との配合薬 メトホルミンが含まれていることに気づきにくいため、特に注意が必要です。
見落としやすいのが配合錠です。2種類の薬を1錠にまとめた配合錠のなかには、メトホルミンを含むものがあります。「メトホルミンは飲んでいない」と思っていても実際には含まれていることがあり、造影検査や体調不良時の対応に関わります。お薬手帳は必ずお持ちください。

どうやって血糖を下げるのか(3つのはたらき)

メトホルミンは、膵臓を刺激してインスリンを無理に出させる薬ではありません。もともと出ているインスリンが効きやすい状態をつくり、肝臓からの糖の供給をおさえる——という働き方をします。

メトホルミンが血糖を下げる3つのはたらき メトホルミンは、主なはたらきとして肝臓で糖がつくられ血液へ送り出されるのを抑え、補助的に筋肉や脂肪でインスリンの効きを高めて血液から糖が取り込まれるようにし、小腸での糖の吸収をおだやかにする。いずれも血液中の糖を減らす方向に働き、とくに空腹時の血糖に作用することを示した図。 血糖を下げる3つのはたらき メトホルミン 主なはたらき ① 肝臓 ふだんのはたらき 糖をつくって血液へ送り出す メトホルミンは この産生をおさえる → 血液に入る糖が減る 補助的なはたらき ② 筋肉・脂肪など ふだんのはたらき インスリンの力で糖を取り込む メトホルミンは インスリンの効きを高める → 血液から糖が取り込まれる 補助的なはたらき ③ 小腸 ふだんのはたらき 食べた糖を吸収する メトホルミンは 吸収をおだやかにする → 血液に入る糖がゆるやかに 血液中の糖(血糖)が下がる とくに空腹時の血糖に働きかけます

※ 中心となるのは肝臓へのはたらきで、筋肉・脂肪や小腸へのはたらきはこれを補うものです。いずれも膵臓を刺激してインスリンを無理に出させるものではないため、単独では低血糖が起こりにくいという特徴につながります。

① 肝臓の「糖新生」を抑える
肝臓は、食事をしていないときも糖をつくり出して血液に送り出しています。この産生を抑えることで、とくに空腹時の血糖を下げます。中心となる作用です。
② インスリンの効きを改善
筋肉などでインスリンが効きにくくなっている状態(インスリン抵抗性)を改善し、糖が細胞に取り込まれやすくします。
③ 腸でのはたらき
小腸からの糖の吸収を抑える作用や、腸管からのホルモン分泌への影響も関与すると考えられています。

日本での位置づけ——「一律の第一選択」ではありません

インターネット上には「メトホルミンは糖尿病の第一選択薬」と書かれた情報が多くあります。かつて欧米では、メトホルミンを原則的な第一選択薬とする考え方が中心でした。現在も標準的な選択肢のひとつであることに変わりはありませんが、近年は心血管病・心不全・腎臓病(CKD)・肥満などがある場合に、臓器を守る効果が示された薬を優先または併用するという考え方が重視されるようになっています。そして日本の考え方は、もともと少し異なります。

日本人の2型糖尿病は、肥満の方と非肥満の方がおおよそ半々で、インスリンの「出にくさ」と「効きにくさ」の比重が人によって大きく異なります。そのため日本糖尿病学会の治療アルゴリズムでは、すべての人に共通する第一選択薬を定めず、まず一人ひとりの病態(体質)に応じて薬を選ぶという考え方が採られています。そのうえで安全性への配慮、合併症、生活背景を順に考慮していきます。

この枠組みのなかでメトホルミンは、肥満やインスリン抵抗性が病態の中心にある方にとって、有力な候補のひとつとして位置づけられます。一方で同じアルゴリズムには、腎機能障害を合併している方や心不全のある方ではビグアナイド薬を避ける、という注意も明記されています。「良い薬か・悪い薬か」ではなく、「その方の状態に合うかどうか」で決まる薬だとお考えください。

🔗 薬の種類全体と使い分けの考え方は 糖尿病治療薬まるわかりガイド で解説しています。

期待できること、期待しすぎないこと

メトホルミンには、長く使われてきただけの理由があります。ただし「万能薬」ではありません。ここでは、確からしいことと、そうとは言いきれないことを分けて整理します。

1
血糖を下げる
肝臓からの糖の供給を抑えるため、とくに空腹時の血糖に働きかけます。
2
単独では低血糖が起こりにくい
インスリン分泌を無理に促す薬ではないため。
3
体重が増えにくい
薬によっては体重が増えるものもあるなかで、この点は利点とされます。
4
長期の使用実績
60年以上の使用経験と、多くの臨床研究が蓄積されています。

また、長く使われてきた薬であるため薬価が比較的低く、治療を長く続けるうえでの負担が軽い点も、実際の診療では小さくない利点です。

心臓・血管に関する報告について

肥満を伴う2型糖尿病の方を長期間追跡した英国の大規模研究(UKPDS)などから、メトホルミンによる治療が心筋梗塞などの心血管イベントの減少と関連したことが報告されています。これは、この薬が長く使われ続けてきた背景のひとつです。

ただし、これらは特定の集団を対象とした研究結果であり、飲んでいれば心臓の病気を防げる、という意味ではありません。研究が行われた時代と現在では使える薬も大きく変わっており、心臓・腎臓の保護という観点では、現在はより直接的な効果が示されている薬(後述)が選択肢に加わっています。

「痩せ薬」ではありません

メトホルミンは、インターネット上で減量目的の薬として紹介されていることがあります。しかし保険診療において、メトホルミンは2型糖尿病の治療薬です。体重が増えにくい薬ではありますが、減量そのものを目的として使う薬ではなく、当院でも2型糖尿病の治療という医学的な目的のもとで用います。

医学的な評価を経ない入手はお勧めできません。メトホルミンは、腎臓・肝臓・心肺の状態によっては使えない場合がある薬です。安全に使うには、開始前の確認と、続けている間の定期的な検査が欠かせません。こうした確認がないまま使用することは、後述する乳酸アシドーシスのリスクにつながります。

メトホルミンと腎臓——専門医が最も気にすること

数ある糖尿病の薬のなかでも、メトホルミンは腎機能とのかかわりが特に重要な薬です。ここが理解できると、造影検査の休薬も、体調不良時の対応も、すべて同じ理屈でつながって見えてきます。

腎臓から出ていく薬だから、腎機能が要になる

メトホルミンは、体のなかで分解されることがほとんどなく、そのままの形で腎臓から尿へと排泄されます。つまり、薬を体の外へ出す仕事のほぼすべてを腎臓が担っています。

腎臓の働きが低下すると、この「出す力」が弱まり、薬が体内に留まって血液中の濃度が上がりやすくなります。これが、腎機能によって使い方を変える必要がある理由です。

メトホルミンと腎機能の関係 メトホルミンは分解されずにそのまま腎臓から尿へ排泄されるため、腎機能が保たれていれば体内に溜まらないが、腎機能が低下すると排泄が遅れて血中濃度が上がり、まれな重い副作用である乳酸アシドーシスのリスクが高まることを示した図。 なぜ「腎機能」が大切なのか メトホルミンを内服 腎機能が保たれている場合 腎臓が薬を尿へしっかり出す 体内に溜まりにくい 腎機能が低下している場合 薬を出す力が弱まる 血液中の濃度が上がりやすい → 乳酸アシドーシスのリスク要因に 脱水・過度の飲酒・造影剤を用いた検査なども、同じ経路でリスクを高めます。

乳酸アシドーシス——まれですが、知っておきたい副作用

メトホルミンで最も注意すべき副作用が「乳酸アシドーシス」です。体のなかに乳酸という物質が溜まり、血液が酸性に傾いてしまう状態で、発症頻度は極めてまれですが、起きた場合には重篤になりうるため、予防が何より重要とされています。

ここで大切なのは、過度に怖がる必要はない、ということです。日本国内で報告された症例を検討したところ、その多くが、もともと添付文書上で「使ってはいけない」「慎重に使う」とされている状況での使用例だったと報告されています。言い換えれば、使う前に条件を確認し、体調が変わったときに正しく対応できれば、リスクは十分に管理できるということです。

ただし、報告された症例には、服用量が少なかった方や、飲み始めて間もない方も含まれていました。「量が少ないから」「もう何年も問題なく飲んでいるから」と油断せず、次に挙げる症状と、後述する休薬が必要な場面を知っておいていただくことが大切です。

▼ 次のような症状が続くときは、服用を中止して早めに医療機関へ

吐き気・嘔吐 下痢・腹痛 強いだるさ 筋肉の痛み 息が深く速くなる

おなかの症状は軽い副作用としてもよく起こるため、これだけで乳酸アシドーシスと決まるわけではありません。ただし「いつもと違う」「症状が強い・長引く」「だるさや筋肉痛を伴う」ときは、様子を見ずにご連絡ください。

腎機能の程度によって、使い方が変わります

メトホルミンは、かつては軽度の腎機能低下でも使えない薬とされていました。その後、海外での再評価を受けて国内でも2019年に添付文書が改訂され、現在は禁忌の範囲が重度の腎機能障害に限定されています。具体的には、電子添文においてeGFRが30 mL/分/1.73m²未満の重度腎機能障害の方および透析中の方には使用できないと定められています。

それより軽い腎機能の低下であれば、使えないわけではありません。ただし有益性と危険性を勘案したうえで慎重に判断すること、開始する場合も少量からとすることが求められます。整理すると、「30を下回ると使用できない。それより軽い低下では、一人ひとり個別に判断する」とご理解ください。

これらの数値は、あくまで安全に使うための枠組みです。実際には、eGFRの値だけで機械的に決まるものではありません。年齢、脱水の起こしやすさ、飲酒習慣、心臓や肝臓の状態、併用しているお薬、そして腎機能が今後どう変化しそうかまで含めて、医師が総合的に判断します。ご自身の数値を見て自己判断で中止・継続することは、どちらも避けてください。

また、腎機能は一度確認して終わりではありません。腎臓の働きは年齢や体調によって少しずつ変化します。だからこそ、メトホルミンを続けるうえでは、定期的にeGFRを確認し続けること自体が安全対策になります。健診で腎機能や尿たんぱくを指摘されたことがある方は、その結果を必ず担当医にお伝えください。

eGFR・腎機能の数値の見方をもう少し知りたい方へ
eGFR(推算糸球体濾過量)は、血液中のクレアチニン値と年齢・性別から計算される、腎臓の「ろ過能力」の目安です。健康な方でおおよそ90以上です。60を下回る状態が3か月以上続く場合、あるいは尿たんぱくなど腎臓の障害を示す所見が続く場合に、慢性腎臓病(CKD)と診断されます。健診結果に記載されていることも多い数値です。
なお、日本糖尿病学会の「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」(2020年3月18日改訂)では、eGFRが30〜45の範囲を慎重投与と位置づけています。ただしこれは医療者が判断するための枠組みであり、患者さんご自身が数値だけで服薬の可否を決めるためのものではありません。

誤解しやすい点:メトホルミンは「腎保護を主目的に選ぶ薬」ではありません

ここは、患者さんとお話ししていて誤解が生まれやすいところです。メトホルミンは腎臓との関わりが深い薬ですが、それは「腎臓に配慮しながら使う薬」という意味であって、「腎保護そのものを目的に選ぶ薬」という意味ではありません。もちろんメトホルミンにも、血糖を安定させることを通じて合併症を防ぐという重要な役割があります。ただし、SGLT2阻害薬などのように腎臓を守る効果そのものを主な目的として選ばれる薬とは、位置づけが異なります。

近年、糖尿病の薬のなかには、血糖を下げる働きとは別に、腎臓そのものの進行を抑える効果が臨床試験で示されているものが登場しています。糖尿病による腎臓病の治療では、こうした作用の異なる薬を、病状や検査結果に応じて組み合わせるという考え方が重視されています。下の4つがその代表です。メトホルミンは、この役割を担う薬には含まれません。

🛡️
RAS阻害薬
ACE阻害薬・ARB
血圧を下げながら腎臓を守る
💊
SGLT2阻害薬
尿から糖を出し腎臓・心臓を守る
🔬
GLP-1受容体
作動薬
体重・血糖を整え心臓・腎臓を守る
⭐
フィネレノン
nsMRA
炎症をしずめて腎臓を守る
これらは、糖尿病のある腎臓病の方すべてに一律で4剤すべてを使う、という意味ではありません。それぞれに適応となる条件があり(たとえばフィネレノンは2型糖尿病を合併する慢性腎臓病、RAS阻害薬は高血圧や尿たんぱく・アルブミン尿がある場合など)、実際には尿アルブミン、eGFR、血圧、心臓の状態などをもとに、どれを使うかを一人ひとり選んでいきます。

これは「メトホルミンが劣った薬」という意味ではまったくありません。目的が違うのです。血糖を安定させることは糖尿病治療の土台であり、そこにメトホルミンが適している方も多くいらっしゃいます。一方で、すでに腎臓に影響が出ている方では、血糖を下げる薬とは別に「腎臓を守る薬」の併用を検討することがあります。この2つを混同しないことが、将来の透析を遠ざけるうえでとても大切です。

▼ 「腎臓を守る薬」について詳しく

SGLT2阻害薬とは?尿から糖を出す薬。腎臓と心臓を守る効果を専門医が解説 GLP-1受容体作動薬(リベルサス)とは?血糖・体重・臓器保護への多面的なはたらき フィネレノン(ケレンディア)とは?糖尿病による腎臓病を進みにくくする新しい治療薬 ACE阻害薬・ARB(RAS阻害薬)とCKD腎保護の第一選択薬を解説

一時的に中止が必要な場面——造影検査・シックデイ・脱水

メトホルミンには、「ふだんは飲んでいても、この場面では一時的に止める」という状況があります。いずれも共通しているのは、腎臓の働きが一時的に落ちたり、脱水になったりする場面だという点です。前のセクションの理屈がそのまま当てはまります。

🩻
造影剤を使う検査
検査の前後で一時休薬
🌡️
シックデイ
発熱・下痢・嘔吐・食欲不振
💧
脱水・過度の飲酒
夏の発汗や熱中症にも注意
🏥
手術・重い感染症
他科の受診時も必ず申告を

① 造影剤を使う検査の前後

造影CT、心臓カテーテル検査、血管造影などで使われるヨード造影剤は、腎臓の働きに一時的な影響を与えることがあります。するとメトホルミンが排泄されにくくなるため、検査の前後で一時的に休薬する対応がとられます。電子添文でも、検査前に投与を一時中止し、造影剤の投与後48時間は再開しない、という趣旨の注意が記載されています。

ただし、実際にどこまで休薬するかは腎機能の程度や検査の緊急性によって変わります。覚えていただきたいのは1点だけです——「造影剤を使う検査が決まったら、その時点で必ず相談する」。あとは指示に従っていただければ大丈夫です。

造影剤を使う検査のときのメトホルミンの流れ 検査が決まった時点で検査先と主治医の両方に伝えたうえで、検査前は一時的に中止し、検査当日に造影剤を使用し、検査後48時間は再開しないという流れを示した図。再開の時期を含め実際の対応は腎機能や検査内容によって異なり、医師の指示に従う必要がある。 造影剤を使う検査のときの流れ まず、検査が決まった時点で検査先と主治医の両方にお伝えください 検査前 一時的に中止します (緊急の検査を除く) 検査当日 造影剤を使う検査 検査後 48時間 は再開しません 再開の時期を含め、実際の対応は腎機能や検査内容によって異なります。医師の指示に従ってください。

※ 「48時間」は電子添文に示された再開に関する注意です。検査前にいつから中止するかは腎機能や検査内容によって異なるため、一律の日数は定められていません。なお単純CT・レントゲン・超音波など造影剤を使わない検査では、原則として休薬は不要です。

検査が決まったら、その時点で伝える
検査を受ける医療機関と、メトホルミンを処方している医師の両方にお伝えください。お薬手帳を持参すると確実です。配合錠に含まれている場合もあるためご注意ください。
休薬するかどうか・いつからかは、指示を受ける
腎機能や検査内容によって対応が変わります。「ネットに2日前からと書いてあった」という自己判断ではなく、指示に従ってください。
検査後、いつから再開するかも確認する
再開の時期は、検査後の状態や腎機能の確認結果をふまえて医師が判断します。検査後に自己判断で再開しないことが大切です。
検査先と主治医が別の場合は、結果を共有する
検査を受けた施設と、ふだん通院している医療機関が異なる場合は特に、情報が途切れやすくなります。
造影剤を使わない検査(単純CT、レントゲン、超音波など)では、原則として休薬は必要ありません。ただし検査の種類は判断が紛らわしいことがあるため、「造影剤を使うかどうか」を確認してご相談いただくのが確実です。

② シックデイ(発熱・下痢・嘔吐・食事がとれない日)

「シックデイ」とは、糖尿病の治療中に発熱・下痢・嘔吐などで体調を崩したり、食欲がなく食事がとれなくなったりした日のことをいいます。こうした日は脱水になりやすく、腎臓の働きも一時的に落ちやすいため、メトホルミンは中止を検討する場面にあたります。

大切なのは、体調を崩してから調べるのでは遅いということです。「どういうときに止めるか」「止めたあと、いつ受診すればよいか」を、元気なうちに担当医と決めておいてください。当院でも、メトホルミンを開始する際には必ずお伝えしています。

シックデイの基本的な考え方
  • まず水分をこまめにとることを最優先にします
  • 食事がまったくとれない、嘔吐や下痢が続くときは、メトホルミンはいったん中止して差し支えないことが多く、そのうえで受診の判断をします
  • ただし、飲んでいる薬の組み合わせによって対応が異なります。特にインスリンを使用している方は自己判断で中止してはいけない薬があります
  • 症状が長引く、水分もとれない、意識がぼんやりする——このようなときは早めに受診してください
シックデイの対応は薬の組み合わせごとに異なるため、必ずご自身の場合の指示を担当医から受けておいてください。

③ 脱水とアルコール

夏場の発汗、屋外での作業やスポーツ、熱中症、極端な食事制限による水分不足など、脱水を招く状況は日常のなかにあります。メトホルミンを服用中は、ふだんからこまめな水分補給を意識してください。

また、過度の飲酒も注意が必要です。アルコールは肝臓での乳酸の処理に影響し、さらに脱水も招きやすいため、重い副作用のリスク要因とされています。適量がどの程度かは肝臓の状態などによって異なり、肝疾患のある方では禁酒が必要な場合もあります。ふだんの飲酒量は、正直にお伝えいただくほうが安全に続けられます。

④ 手術・重い感染症のとき

手術の前後(飲食が制限されない小手術を除く)や、重い感染症にかかっているとき、酸素が不足しやすい重い心臓・肺の病気があるときも、メトホルミンは使用できないとされています。他科や他院を受診されるとき、歯科での処置を受けるときにも、メトホルミンを飲んでいることを必ずお伝えください。

一方で、自己判断で長く中断してしまうことにも注意が必要です。休薬が必要な場面は「一時的に止める」ことが目的であり、そのまま飲まなくなってしまうと血糖が悪化します。止めたあとは、いつ再開するかを必ず確認してください。判断に迷ったときは、止めるか続けるかをご自身で決めず、まずご連絡いただくのが最も安全です。

副作用と、上手な付き合い方

副作用というと不安になりますが、メトホルミンの場合は「よくあるけれど対処しやすいもの」と「まれだが重要なもの」がはっきり分かれています。分けて理解しておくと、必要以上に心配せずに済みます。

副作用頻度の目安基本的な考え方
消化器症状下痢・吐き気・腹痛・食欲不振・おなかの張り 最も多い 多くは軽度で一過性。少量から始めることや飲み方の工夫で軽減できることが多い。
ビタミンB12の低下長期服用の場合 長期でみられることがある 貧血やしびれの原因になりうる。定期採血で確認し、必要なら補充を検討。
低血糖冷や汗・動悸・手のふるえ・強い空腹感 単独では少ない 他の薬との併用時や、食事を抜いたとき・激しい運動時には起こりうる。
乳酸アシドーシス強い倦怠感・筋肉痛・過呼吸 など きわめてまれ/重要 予防が第一。腎機能の確認と、脱水・造影検査・体調不良時の対応で管理する。

いちばん多いのは「おなかの症状」

飲み始めや増量したときに、下痢・吐き気・腹痛・食欲不振・おなかの張りが起こることがあります。メトホルミンで最もよくみられる副作用ですが、多くは軽く、飲み続けるうちに徐々に落ち着いていきます。

そのうえで、我慢していただく必要はありません。ごく少量から始めて時間をかけて増やしていくのが基本で、これだけで症状を大きく減らせることが少なくありません。ほかにも、飲むタイミングを調整する、1日の回数を分ける、といった工夫があります。つらいときは早めにご相談ください。

ただし、嘔吐や下痢が強いとき、あるいは長く続くときは別です。脱水につながり、前述の乳酸アシドーシスのリスク要因になります。この場合はいったん中止して、受診をご検討ください。「よくある副作用だから」と我慢して飲み続けることのないようにしてください。

長く飲む方は、ビタミンB12にも目を向けます

あまり知られていませんが、メトホルミンを長期間飲み続けると、ビタミンB12が低下することがあると報告されています。ビタミンB12は赤血球をつくることと、神経のはたらきに関わるビタミンです。

そのため、貧血や手足のしびれが出たときに、その原因がビタミンB12の低下である可能性を考える必要があります。糖尿病では神経障害そのものでもしびれが起こるため、「糖尿病の神経障害だろう」と片づけずに調べてみることに意味があります。不足が確認された場合は、ビタミンB12を補うことで改善が期待できます。とくに長期間服用している方や、貧血・手足のしびれがある方では、必要に応じて血液中のビタミンB12を確認します。

低血糖は起こしにくいものの、油断はしない

メトホルミンは、インスリンの分泌を無理に促す薬ではないため、単独で使っている限り低血糖は起こりにくい薬です。これは大きな利点です。

ただし、SU薬やインスリンなど他の薬と併用しているとき、食事を抜いたとき、激しい運動をしたとき、飲酒後などには低血糖が起こりうることを覚えておいてください。冷や汗、動悸、手のふるえ、強い空腹感、力が入らない感じなどが典型的な症状です。ブドウ糖や砂糖を含む食品を携帯しておくと安心です。

定期的な血液検査が、安全に続ける条件です

メトホルミンを長く安全に使ううえで、定期的な検査は「念のため」ではなく治療の一部です。腎機能(eGFR)、肝機能、貧血の有無などを定期的に確認することで、使い方を調整すべきタイミングを早めにとらえることができます。

とくに、腎臓の働きは自覚症状がないまま少しずつ変化します。「調子がいいから受診を空けても大丈夫」とはいかないのが、この薬の特徴だとお考えください。当院では、腎機能の推移をグラフで確認しながら、薬の内容と受診の間隔を一緒に考えていきます。

🔗 背景をもっと知りたい方へ:糖尿病性腎症とは / 慢性腎臓病(CKD)とは

メトホルミンについて、よく聞かれること

外来でよくいただく質問をまとめました。

必ずしもそうではありません。食事・運動の改善や減量によって血糖が安定すれば、量を減らしたり中止を検討できる場合もあります。一方で、腎機能の低下や体調の変化によって、こちらから中止をお勧めすることもあります。いずれも自己判断ではなく、血液検査の結果をみながら担当医と相談して決めていく性質のものです。
腎機能の程度によって判断が変わりますので、まず担当医にお伝えください。メトホルミンは腎臓から尿へ排泄される薬のため、腎機能が低下すると体内に留まりやすくなります。電子添文では重度の腎機能障害(eGFR 30未満)や透析中の方には使用できないと定められており、それより軽い低下でも慎重な判断が必要とされています。ただし数値だけで機械的に決まるものではなく、年齢・脱水のリスク・他のお薬なども含めて医師が総合的に判断します。自己判断での中止・継続はどちらも避けてください。
必ず事前に、検査を受ける医療機関と処方している医師の両方にお伝えください。ヨード造影剤は一時的に腎臓の働きに影響することがあり、メトホルミンの電子添文では検査前に一時中止し、造影剤投与後48時間は再開しないこととされています。実際の休薬期間や再開の時期は、腎機能や検査の緊急性によって異なりますので、医師の指示に従ってください。造影剤を使わない検査では原則として休薬は不要ですが、これも自己判断はせずご確認ください。
下痢・吐き気・腹痛・食欲不振は、メトホルミンで最も多い副作用です。多くは飲み続けるうちに軽くなりますが、我慢する必要はありません。少ない量から始めて時間をかけて増やす、飲むタイミングを調整する、1日の回数を分ける、といった工夫で改善することがあります。また、嘔吐や下痢が強いときや続くときは脱水につながるため、いったん中止して受診の必要があります。まずはご相談ください。
当院を含む保険診療では、メトホルミンは2型糖尿病の治療薬として用います。体重が増えにくい薬ではありますが、減量そのものを目的とした薬ではありません。また、メトホルミンは腎臓・肝臓・心肺の状態によって使えない場合がある薬で、安全に使うには事前の検査と定期的な確認が欠かせません。個人輸入や医学的な評価のない入手は、こうした確認を欠いたまま使うことになるためお勧めできません。
過度の飲酒は避けてください。アルコールは肝臓での乳酸の処理に影響し、脱水も招きやすいため、まれな重い副作用である乳酸アシドーシスのリスク要因とされています。適量がどの程度かは肝臓の状態などによって異なり、肝疾患のある方では禁酒が必要な場合もあります。ふだんの飲酒量を担当医に正直にお伝えいただくことが、安全に続けるうえで役立ちます。

メトホルミンは、正しい条件のもとで使えば長く付き合っていける薬です。そのために欠かせないのが、腎臓の状態を定期的に確かめること。当院は腎臓専門医として、そこを見ながら治療を組み立てます。

メトホルミンについて、専門医に相談したい方へ

  • ・「腎機能が下がってきたと言われ、今の薬が心配」
  • ・「造影CTの予定があり、薬をどうすればよいか知りたい」
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参考文献

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  2. 日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会. 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版). 糖尿病. 2023;66(10):715–733.
  3. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024(5章 血糖降下薬による治療〈インスリンを除く〉/Q5-6 ビグアナイド薬の特徴は何か?). 南江堂. 2024.
  4. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂. 2024.
  5. 日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会 共同編集. 腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018. 東京医学社. 2018.
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  7. メトグルコ錠250mg・同500mg 電子添文(住友ファーマ株式会社)/各社メトホルミン塩酸塩錠 電子添文. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報検索. 2026年8月参照.
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免責事項:本ページは医学的情報の理解促進を目的とした一般的・教育的コンテンツであり、特定の薬剤の使用を推奨したり、他剤との優劣づけをするものではありません。記載した数値・基準はいずれも一般的な枠組みを示したもので、個々の患者さんへの使用の可否・用量・休薬の判断は担当医師が個別に行います。薬の開始・変更・中止は、必ず担当医師とご相談ください。掲載情報は作成時点のエビデンス・ガイドライン・電子添文に基づいており、最新の情報を必ずご参照ください。

監修・文責:加藤 彰浩(院長)|総合内科専門医・腎臓専門医|きたはらやまクリニック(尾張旭市)
公開日:2026年9月/最終更新:2026年9月/本ページの内容は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療方針については担当医にご相談ください。掲載内容は電子添文・ガイドラインの改訂により変更されることがあります。